「キッチンカーは儲かる」を信じて始めた人が、1年でやめる理由 ― よくある失敗10パターン
「キッチンカーは儲かる」
「年収1,000万円も可能」
そんな言葉を、ネット広告やSNSで見たことがある方は多いと思います。
たしかに、キッチンカーで成功している人はいます。自分の城を持ち、自分のペースで働き、しっかり利益を出している人もいます。
でも、その一方で ―― 開業して1年も経たないうちに、キッチンカーをやめていく人も、決して少なくありません。
私はこれまで、自分自身でキッチンカーを営みながら、多くの方の開業を間近で見てきました。うまくいく人と、そうでない人。その差は、運や才能ではありません。つまずく人には、はっきりとした共通のパターンがあります。
この記事では、開業1年目につまずきやすい「失敗パターン」を10個、正直にお伝えします。これから始めようとしている方、始めたばかりの方にとって、ひとつでも回避のヒントになればと思います。
少し厳しい話も含みます。でも、それは脅かすためではありません。知っていれば避けられることを、知らずに通り過ぎてほしくないだけです。
なお、キッチンカー業界全体の現状については、キッチンカーは飽和した?2026年に始めるなら知っておくべき5つの現実もあわせてご覧ください。
失敗パターン1:「儲かる」の広告を鵜呑みにして、思いつきで始める
最も多く、そして最も根が深いのが、これです。
「キッチンカーは儲かるらしい」「年収1,000万円も夢じゃない」――そういう広告を見て、「自分にもできそう」と思いつきで始めてしまうパターンです。
正直に言います。こうした入り口から始めた方は、かなりの確率で長続きしません。
理由は単純で、キッチンカーを「儲かりそうな手段」としか見ていないからです。商売は、儲かりそうだから始めて儲かるほど甘くありません。とくに、
- これまで商売の経験がまったくない
- 自分は現場に立たず、雇ったスタッフにやらせるつもり
- 働いた経験そのものが少ない
こうした状態で「儲かるらしい」だけを頼りに飛び込むと、現実とのギャップに耐えられなくなります。
キッチンカーは、立派な「商売」です。思いつきで始められるほど軽いものではない ―― まずここを正直に受け止めることが、すべてのスタートラインです。
失敗パターン2:開業セミナー経由で、高額なキッチンカーを買ってしまう
パターン1と地続きの話です。
「儲かる」の広告から入り、開業セミナーを受講し、そのままセミナーと結びついた製作会社で車を作る ―― この一連の流れに乗ってしまうケースです。
ここで、開業セミナーについて知っておいてほしいことがあります。
世の中にある開業セミナーの多くは、キッチンカーの製作会社や、開業支援の会社が主催しています。 そして、その多くは「無料」で実施されています。
無料と聞くと、つい「お得だ」と感じてしまいます。でも、世の中で「無料」とうたわれているものには、常に注意が必要だと、頭の片隅に置いておいてください。
無料には、無料である意味があります。無料でセミナーを開けるのは、その裏で、コストと料金がどこか別のところに上乗せされているからです。この場合の「別のところ」とは ―― キッチンカーを買ってもらうこと、です。
情報を集める目的でセミナーを受けること自体は、悪いことではありません。ただ、正直に言えば、内容そのものは、大したものではないことがほとんどです。そして、そこをきっかけに、結果的に高額なキッチンカーを買わされてしまう可能性がある ―― そういう心づもりで臨んでください。
セミナー自体がすべて悪いとは言いません。学べることもあります。
ただ、注意してほしいのは、セミナーから製作会社へとスムーズに案内される流れの中で、冷静な判断をしないまま高額なキッチンカーを契約してしまうことです。
気持ちが盛り上がっているときほど、人は財布のひもがゆるみます。「これも必要ですよ」「やるなら、ちゃんとした車を」と言われ、気づけば予算を大きく超えた契約をしている。
熱意があるのは良いことです。でも、車の契約は、いったん家に持ち帰って、冷静になってから判断する。それだけで防げる失敗がたくさんあります。
失敗パターン3:製作会社選びを間違える(これが一番、致命的)
ここは強くお伝えします。製作会社選びの失敗は、キッチンカー開業で最も致命的な失敗です。
なぜなら、車はキッチンカー商売の土台そのものだからです。土台が崩れていたら、その上で何をやっても立て直せません。
ノウハウのない、いいかげんな製作会社に当たってしまうと、たとえばこんなことが起こります。
- 調理スペースが使いにくく、毎日の営業がストレスになる
- 走行中に不安を感じる、安全性に問題がある
- 最初から雨漏りするような車で納車される
- そもそも違法な改造がされている
- 打ち合わせが適当で、頼んだものと全然違う車が来る
- 納車後、不具合だらけ
- そして最悪のケースでは、いつまでも納車されない
どれも、あとから「直す」では済まない問題です。
「ホームページがある」「昔からやっている」は、安心の保証にならない
ここで、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。
キッチンカーの製作会社については、「立派なホームページがあるから安心」「昔からやっているから安心」「Googleマップの口コミが良いから安心」――こうした判断は、一切あてになりません。
契約前、お金を振り込む前までは、どの会社も良いことを言います。ところが入金した途端に態度がガラッと変わる ―― そういう話を、私はずっと聞き続けています。
もちろん、信頼できる誠実な製作会社もたくさんあります。多くは、まじめに良い車を作っています。
だからこそ、表面的な情報ではなく、実際にその会社で車を作った人の生の声を聞くこと。これが何より大切です。可能なら複数のオーナーに話を聞き、納車後のアフター対応まで確認してください。
そして、1社だけで決めないこと。必ず複数の製作会社で見積もりを取り、それぞれの話を直接聞いてください。比べることで、価格の妥当性も、担当者の誠実さも、見えてきます。1社だけの話を聞いて契約するのは、もっとも避けたい進め方です。
製作会社選びの参考に、キッチンカー製作会社一覧もご活用ください。
ここに掲載されている会社が全て私個人のおすすめの製作会社というわけではありません。
私が知りうる限りの全国のキッチンカー製作会社を掲載していますが、私自身が感じる誠実だと思う会社も、不誠実な会社や評判の悪い会社もあえて全て掲載しています。自分の目で見て、自分の頭で考えて判断してください。本当に困ったら私に連絡してください。
失敗パターン4:広告の「かわいさ」「雰囲気」に飛びついてしまう
パターン3に関連します。
「なんだか良さそう」「車がかわいい」「広告の雰囲気が素敵」――そういう印象だけで製作会社を選んでしまうのも、危険なパターンです。
見た目の良い広告を出している会社が、必ずしも良い車を作るとは限りません。なかには、実態が伴わない会社もあります。納車されない、製作が一向に進まない、納車されたと思ったら不具合だらけ ―― 広告のイメージと現実がまったく違った、というケースは後を絶ちません。
広告は「会社が見せたい姿」であって、「実際の仕事の質」ではありません。雰囲気で選ばず、中身で選んでください。
失敗パターン5:自己資金が少なすぎる状態で始めてしまう
お金の話です。これも、開業後の1年を大きく左右します。
準備資金・自己資金がほとんどない状態で「とにかく始めよう」と決意してしまうと、こうなります。
- 資金が足りず、高い金利でローンを組まざるを得ない
- キッチンカーづくりは、たいてい予算をオーバーする。オープン前に資金が底をつく
- 開業直後から、お金がカツカツの状態でのスタートになる
そして、ここが本当に大事なのですが ―― キッチンカーは、最初は本当に売れません。
1年目は、貯金がどんどん減っていく時期です。これは多くの人が通る道です。そのとき、手元に余裕がまったくないと、売上の不安に加えて生活の不安まで重なり、精神的に追い詰められてしまいます。
商売の判断が「冷静な計算」ではなく「今月をしのぐための焦り」になった時点で、うまくいくものもいかなくなります。
最初の1年は売上が伸びないことを前提に、それでも生活と事業が回る資金を準備しておく。 これは「できれば」ではなく「必須」だと考えてください。
失敗パターン6:無駄な設備をつけすぎる
パターン5と裏表の関係にあるのが、これです。
開業前、夢が膨らんでいる時期に、ついやってしまうのが「あれもこれも」と設備を盛り込むことです。
「いつか使うかもしれない」と思って買った設備、最初から揃えた高機能な機材 ―― そのほとんどは、実際にはしばらく使いません。
キッチンカーは、最低限の装備でスモールスタートするのが正解です。営業を始めて、「これは本当に必要だ」と現場で実感したものから、順番に買い足していく。この順番を守るだけで、初期費用は大きく変わります。
最初にお金をかけすぎないこと。これも、1年目を生き延びるための大切な考え方です。
そして残念ながら、こうした「お金の使い方」を、開業前にきちんと教えてくれる開業支援は、ほとんど存在しません。 だからこそ、自分で意識しておく必要があります。
失敗パターン7:商品選びを「自分の好み」で決めてしまう
ここからは、商品とオペレーションの話です。
商品選びでよくある失敗が、2つあります。
ひとつは、あまりにも知られていないメニューを売ろうとすること。 珍しさで勝負したい気持ちは分かりますが、お客様が「それが何か分からない」商品は、そもそも買ってもらえません。
もうひとつは、「自分がいいと思うもの」を選んでしまうこと。
これは本当に多いです。自分の好きなもの、自分のこだわりを商品にしたい ―― その気持ちは大切です。でも、商売である以上、選ぶ基準は「自分が good と思うか」ではありません。
基準は、お客様が喜ぶかどうか。 ここを取り違えると、どんなにこだわった商品でも売れません。
失敗パターン8:価格を安くしすぎる
価格設定の失敗は、ほぼ「安くしすぎ」の方向で起こります。
不思議なことに、「高くしすぎて失敗した」という話はあまり聞きません。多くの人が、自信のなさや「売れないのが怖い」という気持ちから、価格を下げすぎてしまいます。
しかし、安くすればするほど、1個あたりの利益は薄くなります。薄い利益を、限られた営業時間の中で積み上げるのは、想像以上に大変です。
価格は、安さで勝負するものではありません。商品の価値に見合った、きちんと利益の残る価格をつける。 安売りは、自分の首を絞めます。
失敗パターン9:オペレーションが遅すぎる
これは、見落とされがちですが、本当に重要なポイントです。
開業したてのキッチンカーは、とにかく提供が遅いことが多いです。1組のお客様に商品を出すまで、5分、10分とかかってしまうお店をときどき見かけます。
考えてみてください。1組10分かかるお店に、2組、3組と並んだらどうなるか。3組目のお客様は、20分も30分も待たされることになります。
そうなると、何が起こるか。
- 「あの店は遅い」という評判が立つ
- 行列を見たお客様が、待つのを嫌って離れていく
- 結果として、売上そのものが伸びない
キッチンカーの売上は、とてもシンプルな式で決まります。
客単価 × 客数 = 売上
当たり前のことですが、これが本質です。提供が遅いと、限られた営業時間でさばける「客数」が決定的に減ります。どんなに良い商品でも、出すのが遅ければ売上は上がりません。
だからこそ、2組・3組と並んでも、10分以内で提供できる。それくらいまで商品の手数を減らし、オペレーションを単純化してから、オープンするべきです。
「とりあえず始めてから慣れればいい」では遅いのです。遅いオペレーションのままオープンすると、最初の悪い評判がついてしまいます。
失敗パターン10:会社の事業として始める
最後は、少し特殊なパターンですが、はっきりお伝えしておきたいことです。
「会社の新規事業として、キッチンカーを始めたい」という相談を受けることがあります。しかし、私の経験では、会社が事業としてキッチンカーを始めるケースは、うまくいかないことがほとんどです。
理由は2つあります。
ひとつは、そもそもキッチンカーは、会社の事業として大きく儲かるものではないということ(専業のキッチンカー事業者や、催事事業者は別です)。
もうひとつ、これが本質的な理由ですが ―― 雇われたスタッフのモチベーションが続かないことです。
キッチンカーの現場は、楽ではありません。暑い日も寒い日もあります。仕込みも、運転も、設営も、接客も、後片付けもあります。それだけ大変な仕事なのに、雇われたスタッフの立場では、どれだけ頑張っても、その頑張りが自分の給与に反映されにくい。
これでは、モチベーションが続かなくて当然です。
逆に、個人事業として自分で始めた方が、軌道に乗って法人化する――この順番なら、うまくいっている方を何人も知っています。違いは「自分の事業として、自分が現場に立っているかどうか」です。
キッチンカーは、オーナー自身が現場に入ってやる。これが基本だと、私は考えています。
私が、開業相談で「お断り」をする理由
ここまで10個の失敗パターンをお伝えしてきました。最後に、私自身の姿勢について、正直にお話しさせてください。
私は、キッチンカーの開業相談を受ける中で、明確にお断りするケースがあります。
具体的には、
- 会社の新事業として始めようとしているケース(会社もスタッフも、うまくいかない可能性が高い)
- 自己資金が極端に少ないケース(ほぼ確実に、ただ苦しくなるだけになる)
この2つに当てはまる方には、加盟をお断りしています。
冷たいと感じる方もいるかもしれません。でも、これには理由があります。
私がこの事業をやっているのは、お金のためだけではありません。お金が目的なら、ほかのことをやっています。私がやりたいのは、私と一緒に始めた人が、それを通じて自分の人生がよくなった、楽しくなった、始めてよかった ―― そう思ってもらうことです。
だとすれば、私から見て「この始め方では、その人が望むものにつながらない」と分かっているのに、それを勧めるのは、不誠実です。
自己資金が極端に少ない方は、そもそも融資も受けにくい。それ以前に、「お金を貯める」という習慣そのものが、まだ身についていないことが多い。商売は「売上 − 経費 = 収益」で、このプラスを生み出していく営みです。その土台がない状態では、どうしてもうまくいきません。
会社での開業も、先ほどお伝えしたとおりです。
だから私は、その段階で正直にお断りします。お断りすることは、相手の貴重な時間を守ることでもあり、私自身の時間という資源を、本当に力になれる方のために使うことでもあります。
そして実際に、この2つを最初にお断りするようにしてから、続けられる方の割合は、はっきりと上がりました。
当たり前のことかもしれません。でも、その当たり前を最初に伝えるかどうかで、結果は大きく変わるのです。
では、失敗を避けるために、何をすればいいのか
最後に、10個の失敗パターンを踏まえて、これから始める方へお伝えしたいことをまとめます。
1. しっかり準備をする
思いつきで始めない。商売として、必要な準備に時間をかける。
2. 体力をつけておく
キッチンカーは体力勝負の側面があります。仕込み、運転、設営、長時間の立ち仕事。始めてから「こんなに大変だとは」とならないよう、心身の準備をしておく。
3. お金の知識(マネーリテラシー)を身につける
資金計画、利益の考え方、価格設定。お金のことを「なんとなく」で進めない。最初の1年は売れないという前提で、資金を準備する。
4. 信頼できる仲間、教えてくれる人を見つける
ひとりで抱え込まない。先に経験した人の声を聞く。そして何より、信頼できる、ちゃんとした製作会社に出会うこと。 これが土台になります。出店場所を探す際は、出店募集一覧もご活用ください。地方を中心に、キッチンカーを呼びたいイベント・場所の情報を掲載しています。
5. 自分自身と、よくよく向き合う
自分のやりたいことは何か。自分はキッチンカーを始めて、本当にやっていけるのか。生活習慣は。家族はどう考えているか。これらを、始める前にとことん考える。
キッチンカーは、夢のある仕事です。自分の手で商売をつくり、お客様の喜ぶ顔を直接見られる。青空の下で働ける。間違いなく、魅力のある働き方です。
でも、その魅力は「儲かるらしい」という広告の言葉とは、まったく別のところにあります。
これから始める方には、ぜひ「知っていれば避けられた失敗」でつまずいてほしくありません。この記事が、その一助になればうれしく思います。
そして、もし準備の段階で迷うことがあれば ―― ひとりで抱え込まず、先に歩いた人を頼ってください。それも、失敗を避けるための、大切な一歩です。