4ナンバーの維持費は本当に安いのか?業界20年の経営者が、サニーズ7店の実データで徹底検証
ある日、私はSNS(スレッズ)を見ていて、こんな投稿に目が止まりました。
「キッチンカーの先輩方、教えてください。
8ナンバーか4ナンバーか、どちらが良いでしょうか?
8ナンバー取得というお話だったのですが、4ナンバーになりそうなんです。
軽トラキッチンカーなのですが」
和歌山県で、桃のジュースを販売するキッチンカーを始めようとされている方の投稿でした。
最初は「8ナンバーで作る」話で進んでいたそうです。ところが、依頼した製作会社が「いろいろ難しいので」と、結果的に4ナンバーを勧めてきた。
「大丈夫ですか? 4ナンバーで…」
不安な気持ちが、文面から伝わってきました。
この相談、業界では珍しい話ではない
実は、こういう相談は業界では珍しくありません。
製作会社の中には:
- 8ナンバーの構造変更が面倒だから、4ナンバーを勧める
- 「維持費が安いですよ」と4ナンバーをセールスポイントにする
- 車検時に箱を降ろせばいい、と簡単に説明する
そんな案内をする会社が存在します。そして、不慣れな方は「製作会社のプロが言うんだから大丈夫だろう」と信じて、4ナンバーで作ってしまう。
その結果、後から困るケースが、業界に数えきれないほどあります。
「4ナンバーは維持費が安い」は本当か?
そこで今回の記事です。
「4ナンバーのキッチンカーは、本当に維持費が安いのか?」
業界の通説では「4ナンバーが圧倒的に安い」と言われています。実際、私がSNSを見ていても、この通説を疑う人はほとんどいません。
でも、実際の数字を見たことがある人はどれくらいいるでしょうか?
私は今回、サニーズクレープのフランチャイズオーナー7店舗から、実際の維持費データを集めました。自動車税、重量税、自賠責保険、任意保険、車検費用、そして高速料金まで。
その結果見えてきたのは、業界の通説とは少し違うリアルな数字でした。
この記事で書くこと、書かないこと
この記事では、まず維持費の正確な事実をお伝えします。
サニーズオーナー7店の実データに基づいた、嘘のない数字です。これからキッチンカーを始める方、すでに4ナンバーで悩んでいる方、8ナンバーで「自分は損をしているのでは?」と感じている方、すべての方に、まず事実だけを知ってほしい。
そして、記事の後半で、ナンバーの選び方について私の20年の経験からお話しします。
ただし、この記事では4ナンバーの「もっと深い問題」については、深入りしません。違法改造の問題、保険が下りないリスク、最大積載量の問題、業界の信頼の話――これらは、次回の記事で改めて、5年前に私がYouTubeに投稿した動画(「キッチンカー業界の違法改造問題」)とあわせて、徹底的に書きます。
今回は、純粋に「維持費の事実」だけ。だからこそ、これからキッチンカーを始める方、検討している方には冷静に読んでいただきたい内容です。
比較対象を整理する
まず、比較する2つの車両タイプを、はっきり整理しておきます。
比較するのはこの2タイプ
| A:軽4ナンバー軽トラ(脱着シェル式) | B:8ナンバー加工車(軽トラベース、構造変更済み) | |
|---|---|---|
| ベース車両 | 軽トラック(改造なしの素の状態を維持) | 軽トラック(キッチンBOXを構造変更で固定) |
| シェルの扱い | 脱着式(車検時に降ろす) | 構造変更で固定(降ろさない) |
| ナンバープレート | 黄色地に黒文字(軽自動車ナンバー) | 白地に緑文字(普通自動車ナンバー) |
| 車検証「自動車の種別」 | 軽自動車 | 普通 |
| 車検証「車体の形状」 | トラック | 加工車 |
| 車検証「用途」 | 貨物 | 特種 |
| 車両のサイズ | 軽自動車規格内(全高2m以内など) | 軽自動車規格を超える(全高2.5mなど) |
| 高速道路の料金区分 | 軽自動車等 | 中型車 |
この比較で大事なポイント
ここで、ちょっと専門的な話を整理しておきます。
「軽トラベースのキッチンカー」と言っても、ベース車両は同じ軽トラックなのに、改造の仕方とナンバーの取り方で、まったく違う車両として扱われます。
軽4ナンバー軽トラ(A)は、車検証上は普通の軽トラックです。
8ナンバー加工車(B)は、構造変更で「普通自動車」になっています。
つまり、車両のベースは同じ軽トラックなのに、AとBは制度上、まったく別の車両として課税・規制されるということです。
ここを理解しておかないと、後の話がややこしくなります。
なぜ脱着シェル式の4ナンバーが存在するのか
「シェルを降ろしたら、ただの軽トラック?なんでわざわざ?」と思う方もいるかもしれません。
これには理由があります。
軽自動車の規格は、全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下、排気量660cc以下です。この規格を超えると、軽自動車として認められず、構造変更が必要(=8ナンバー化)になります。
キッチンカーとして十分な設備を載せようとすると、多くの場合、全高2mを超えます。そうすると、軽自動車として登録できなくなる。
そこで、製作会社は2つの選択肢を提示します。
選択肢1:8ナンバーで構造変更する(費用と手間がかかる)
選択肢2:脱着式シェルにする(車検時に降ろせば軽自動車のまま)
選択肢2を選ぶ理由は、「軽自動車のメリット(維持費の安さ)を維持したい」というケースが多いです。
これが、業界で言う「4ナンバーキッチンカーは維持費が安い」の根拠になっています。
でも、本当にそれだけ安いのか?
ここからが本題です。
「4ナンバーは安い」と言うけれど、実際にいくら安いのか?
サニーズクレープのフランチャイズオーナー7店舗から集めた8ナンバー加工車の実データと、4ナンバー軽トラ(脱着シェル式)の標準的な数字を比較していきます。
業界で誰も書いていない、実データに基づくリアルな比較です。
税金の比較(自動車税・重量税・自賠責保険)
まず、毎年・車検ごとにかかる「法定費用」から比較します。
自動車税(年額)
| 区分 | 軽4ナンバー軽トラ | 8ナンバー加工車 |
|---|---|---|
| 自動車税 | 5,000円 | 8,000円〜30,400円 |
軽4ナンバー軽トラは、全国一律で5,000円(軽自動車税)です。
問題は8ナンバー加工車のほうです。サニーズ7店のデータを見ると、自動車税の金額が店舗ごとに全然違うことが分かりました。
| 店舗 | 都道府県 | 自動車税 |
|---|---|---|
| 店舗A | 長野県 | 8,000円 |
| 店舗B | 滋賀県 | 8,000円 |
| 店舗C | 愛知県 | 18,400円 |
| 店舗D | 栃木県 | 25,500円 |
| 店舗E | 栃木県 | 25,500円 |
| 店舗F | 茨城県 | 25,500円 |
| 店舗G | 京都府(登録) | 30,400円 |
同じ型式(スズキ・キャリィ DA16T)、同じ軽トラベース、同じ加工車なのに、最安8,000円〜最高30,400円(約3.8倍差)。
これは「製作会社が違う」「装備が違う」からではありません。ベース車両も、改造仕様も、ほぼ同じです。
違うのは、登録する都道府県だけ。
なぜ都道府県でこんなに違うのか?
調べた結果、「加工車の自動車税を、自治体がどの税率で計算するか」で大きく違うことが分かりました。
| 都道府県 | 適用税率 | 自動車税 |
|---|---|---|
| 長野県・滋賀県 | トラック税率(1L以下) | 8,000円 |
| 愛知県 | 中間的な税率 | 18,400円 |
| 栃木県・茨城県 | 乗用車税率(自家用) | 25,500円 |
| 京都府 | 乗用車税率+独自加算? | 30,400円 |
これは業界で誰も書いていない事実だと思います。
私自身、サニーズオーナーから「この車の自動車税は8,000円です」と聞いて、最初は「何かの間違いだろう」と思いました。普通自動車登録なのに、8,000円?と。
でも、複数の長野県・滋賀県のオーナーから同じ金額が出てきて、ようやく「自治体ごとにルールが違う」と気づきました。
ちなみに、私は長野県でキッチンカーを運営しています。長野県は、ありがたいことに8ナンバー加工車に対して、トラック税率を適用する自治体でした。
逆に、京都府で同じキッチンカーを登録すると、年間30,400円。長野県との差は年間22,400円、10年で22万4,000円。これはなかなか衝撃的な数字です。
自動車重量税(2年に1回、車検時に支払う)
次に自動車重量税です。これは国税なので、全国一律です。都道府県で差はありません。
| 区分 | 軽4ナンバー軽トラ | 8ナンバー加工車 |
|---|---|---|
| 重量税(2年分) | 6,600円 | 8,200円〜16,400円 |
8ナンバー加工車の重量税は、車両総重量で決まります。
- 車両総重量1t以下:8,200円(2年)
- 車両総重量2t以下:16,400円(2年)
サニーズ7店の車両総重量を見ると、990kgで1t以下区分の店舗は重量税8,200円、1,030〜1,070kgで2t以下区分の店舗は重量税16,400円でした。
わずか60kgの差(990kg vs 1,050kg)で、重量税が倍になります。
これは、製作する際に装備の総重量に気を配ると、重量税を半額にできるということです。10年で41,000円の差。決して小さくありません。
自賠責保険(2年に1回、車検時に支払う)
| 区分 | 軽4ナンバー軽トラ | 8ナンバー加工車 |
|---|---|---|
| 自賠責(24ヶ月) | 17,540円 | 19,980円 |
自賠責保険は、全国一律(国の制度)です。
8ナンバー加工車は、普通自動車・特種用途の扱いで、軽自動車より2,440円高いだけです。年換算すると1,220円の差。これは大きな差ではありません。
車検費用と任意保険の実態
車検費用(2年に1回)
サニーズ7店の車検費用は、おおむね80,000円前後でした(法定費用込み)。
これは、8ナンバー加工車を一般の整備工場で車検を受けた場合の金額です。
軽4ナンバー軽トラ(脱着シェル式)の場合、シェルを降ろして素の軽トラとして車検を受けます。費用は一般的な軽トラの車検費用と同じで、整備工場により40,000円〜60,000円程度が相場です。
ただし、4ナンバー軽トラには別の問題があります。
4ナンバー軽トラの車検は、誰でも受けられるわけではない
「車検費用は安い」と言われる4ナンバー軽トラですが、実は車検時に大きな手間とコストがかかります。
問題1:シェルを降ろさないと車検が通らない
車検を受ける前に、キッチンBOX(シェル)を降ろす作業が必要です。
シェルの中には:
- 冷蔵庫(数十kg)
- 調理機器(コンロ、シンク、水タンク)
- 換気扇、電気設備
- 食材在庫、消耗品
- 配膳台、収納
など、かなりの重量物が積まれています。自分で持ち上げるのは現実的に不可能です。
問題2:シェル脱着には専用の機材が必要
シェルを降ろすには、パイプラックのような専用の支持台が必要です。これは:
- 重いシェルを支えられる強度が必要
- 設置場所(自宅の庭、駐車場)が必要
- 一人で扱うには危険が伴う
販売会社の中には、「最初に支持台もセットで納車する」ところもあります。「車検のときに、お客様自身でセットしてシェルを降ろしてください」という方式です。
問題3:結局、製作会社に持ち込む人が多い
実際には、自分でシェルを降ろせないオーナーが多いため、車検のたびに製作会社へ持ち込むことになります。
そして、私が業界で聞いた話では、製作会社で車検を受けると上乗せ料金がかかるケースがあります。具体的な金額は会社によって違いますが、「車検費用に+10万円程度」という話を聞いたことがあります。
つまり:
- 一般の軽トラ車検費用:約40,000〜60,000円
- 4ナンバーキッチンカーを製作会社で車検:+10万円(シェル脱着・整備込み)
- 実質的な車検費用:約140,000〜160,000円(2年で)
これだと、8ナンバー加工車の車検費用(80,000円前後)とほぼ変わらない、もしくは高くなるケースすらあります。
「車検をどこでも受けられない」という見えないコスト
8ナンバー加工車であれば、全国の一般の整備工場で車検を受けられます。
ところが、4ナンバーの脱着式シェルは、慣れていない整備工場では受けてくれないことが多いです。理由は:
- シェルが付いた状態では受検不可
- でも、整備工場側にシェルを降ろす設備がない
- お客様自身で降ろしてから持ってきてください、と言われる
- → 結局、製作会社頼みになる
これは、引っ越しや出張で地方に行ったときに困るケースが出ます。「慣れた製作会社が遠い」「地元で車検が受けられない」というオーナーの嘆きを、業界でよく聞きます。
中古市場でも、4ナンバーは敬遠されつつある
ここまで読んでいただくと、「4ナンバーの問題点」が見えてきたと思います。
実は、これは中古市場にも影響しています。
私は縁の下のサービスの一つとして、中古キッチンカーの売買サポート(「縁結び」)を行っています。
そこで実感しているのは、4ナンバーのキッチンカーは中古で売れづらいということです。
理由は単純です。
- 「車検のときに製作会社に持ち込まないといけない」
- 「製作会社が遠方だと困る」
- 「シェルを降ろす機材が必要」
- 「結局、車検費用が高くついてしまう」
こうした事実が、ここ数年で業界に知れ渡ってきました。
その結果、買い手側が「4ナンバーは避けたい」と判断するケースが増えています。
逆に、8ナンバー加工車の中古は、比較的売りやすいです。
全国の整備工場で車検を受けられるため、買い手にとっての制約が少ないからです。
これからキッチンカーを購入する方は、「将来手放すときのこと」も視野に入れて、ナンバーを選ぶ必要があります。
任意保険(年額)
サニーズオーナー7店+その他関係者から集めた任意保険のデータです:
| 補償レベル | 年間保険料 | 該当オーナー |
|---|---|---|
| 最低限(対人対物のみ) | 約20,000円 | オーナーA |
| 標準(対人対物+人身傷害) | 約33,000〜40,000円 | オーナーB、C、D |
| 中(+車両保険・簡易) | 約45,000〜51,000円 | オーナーE、F |
| 高(車両保険フル) | 約77,000円 | オーナーG |
ナンバーの違いより、補償内容の差のほうが圧倒的に大きいことが分かります。
軽4ナンバー軽トラの場合も、補償内容によって約30,000〜40,000円が相場です。8ナンバー加工車との差は、年間1,000〜5,000円程度に過ぎません。
任意保険について、滝澤の意見
ここで、20年やってきた私の意見を書きます。
車両保険は、私は付けません。
理由は2つ:
理由1:車両保険を使うと、翌年から保険料が大幅に上がる
自動車保険には「等級制度」があります。通常の単独事故で車両保険を使うと、翌年の等級が3等級ダウンし、保険料が約1.5倍に上がります。しかも、この影響は翌年1年だけではなく、3年間続きます。
具体的な数字で見てみましょう。
例:現在の保険料が年7万円(20等級)、3等級ダウン事故を起こした場合
| 年 | 等級 | 保険料 | 無事故との差額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 17等級(事故あり) | 約10.5万円 | +3.5万円 |
| 2年目 | 18等級(事故あり) | 約9.7万円 | +2.7万円 |
| 3年目 | 19等級(事故あり) | 約9万円 | +2万円 |
| 合計 | +8.2万円 |
つまり、10万円程度の修理であれば、車両保険を使わずに自費で修理したほうが、結果的に得ということになります。
しかも、車両保険を付けていなければ、そもそも年間50,000〜60,000円の保険料を払わなくて済みます。
理由2:車両保険は高い
データを見ても、車両保険を付けると年間77,000円まで上がります。これは、補償最低限の約4倍。
つまり、車両保険なしと比べて、年間57,000円高い。これが10年で57万円。
私の結論はこうです。
「年間5万円以上の保険料を払い続けて、いざ事故した時にまた1.5倍に上がるなら、最初から車両保険なしで、自分で修理費用をプールしておくほうが合理的」
でも、修理費用のプールは絶対に必要
ただし、車両保険なしで運営する場合、「事故・修理費用を別途プールしておく」ことが絶対に必要です。
なぜなら、キッチンカーは:
- 車高が高くて重心も高いため、単独事故を起こしやすい
- 横転、転倒の事例が業界で実際に起きている
- 事故すれば、修理費用がかかる(数十万円〜)
- そして何より、事故で営業ができなくなる(収入源が絶たれる)
つまり、「事故=ダブルパンチ(修理費+収入減)」になります。
私が推奨するのは:
「車両保険には入らない、その代わり、修理費用と当面の生活費を半年分プールしておく」
これが、キッチンカー経営者のリスクコントロールの基本です。
保険会社にお金を払うより、自分で備えるほうが、長期的には合理的です。
高速料金の比較
ここまでは、「車両を保有しているだけでかかる費用」を見てきました。
次は、「車両を使ったときにかかる費用」、高速料金です。
軽自動車と中型車、料金は1.4倍違う
| 区分 | 高速料金区分 |
|---|---|
| 軽4ナンバー軽トラ | 軽自動車等(料金区分:軽) |
| 8ナンバー加工車 | 中型車(料金区分:中型) |
8ナンバー加工車は、車検証の「車体の形状=加工車」が貨物自動車タイプに分類されるため、高速料金は中型車料金になります。
これは料金所でETCにも反映されており、休日割引も適用されません。
諏訪IC〜松本IC間の高速料金(片道36km)
| 料金区分 | 通常料金 | 休日割引 |
|---|---|---|
| 軽自動車等 | 940円 | 660円 |
| 中型車 | 1,330円 | 適用なし(1,330円) |
| 差額 | +390円 | +670円 |
休日(土日祝)の差が、片道670円。往復で1,340円の差になります。
月4回往復した場合の年間差額
| 利用パターン | 軽4ナンバー | 8ナンバー加工車 | 年間差額 |
|---|---|---|---|
| 月4回往復(平日) | 45,120円 | 63,840円 | +18,720円 |
| 月4回往復(土日) | 31,680円 | 63,840円 | +32,160円 |
休日中心の出店だと、年間32,000円の差になります。
でも、キッチンカーで高速に乗る人は意外と少ない
これは私の経験談ですが、キッチンカーで高速に乗ることは、意外と少ないです。
理由:
- キッチンカーは車高が高くて重心も高いため、横風で車体が大きく揺れる
- 荷台が重いため、加速が悪く、スピードが出ない(80km/h程度が限界)
- 長時間の高速走行は、運転手も車両も疲れる
- 結果として、高速を避けて一般道で移動する人が多い
私自身、長野県で運営していますが、普通に距離を走れるので、高速代をあまり気にしたことはありません。
逆に、遠方のイベントに出店する人は、高速を使うしかないケースが多いです。その場合、ほぼ100%、土日祝の利用になるため、休日割引なしの中型料金がきついと感じる方は多いです。
高速代より、ガソリン代がきつい
それと、もう一つ重要なポイント。
高速代より、ガソリン代のほうが圧倒的にきついです。
キッチンカーは:
- 車重が重い
- 車高が高い=空気抵抗が大きい
- 燃費が悪い(リッター8〜12km程度が一般的)
結果として、1ヶ月のガソリン代は、軽乗用車の2〜3倍になります。
これは「4ナンバー vs 8ナンバー」の比較というより、「キッチンカー全般に共通する経費」です。ベース車両が同じ軽トラなので、4ナンバーと8ナンバーでガソリン代の差はほぼありません。
完全比較表 ―― 年間総額のリアル
ここまでの調査をすべて反映した、完全比較表です。
比較しやすくするため、8ナンバー加工車は中間的な税率の愛知県登録車両をモデルにして比較します。
(都道府県別の自動車税の格差については、後ほど触れます)
比較条件
- A:軽4ナンバー軽トラ(脱着シェル式)
- B:8ナンバー加工車(軽トラベース、構造変更済み、愛知県登録)
- 任意保険:対人対物+人身傷害(標準補償、車両保険なし)
- 高速代:月4回平日往復・諏訪IC↔松本IC想定
- 車両:新車から10年以内、13年経過の重課なし
年間維持費の総合計
| 項目 | A:軽4ナンバー軽トラ | B:8ナンバー加工車(愛知県登録) |
|---|---|---|
| 自動車税 | 5,000円 | 18,400円 |
| 自動車重量税(年換算) | 3,300円 | 8,200円 |
| 自賠責保険(年換算) | 8,770円 | 9,990円 |
| 任意保険(標準補償) | 約35,000円 | 約36,000円 |
| 車検整備費(年換算) | 27,500円 | 40,000円 |
| 小計(高速代抜き) | 約79,570円 | 約112,590円 |
| 高速代(月4回平日往復) | 45,120円 | 63,840円 |
| 年間総合計 | 約124,690円 | 約176,430円 |
年間差額
| 比較項目 | 差額 |
|---|---|
| 年間差額 | 約+51,740円 |
| 月換算 | 約+4,300円 |
| 10年差額 | 約+52万円 |
ポイント1:差は「思っていたより小さい」
「年間約5万円の差」――これが、業界の通説「4ナンバーは圧倒的に安い」の正体です。
業界では「8ナンバーは維持費がめちゃくちゃ高い」というイメージがありますが、実際の数字を見ると、月4,300円程度の差しかありません。
ポイント2:自治体によって、もっと安くも高くもなる
実は、8ナンバー加工車の自動車税は、登録する都道府県によって大きく異なります。
これは、私が今回サニーズオーナー7店のデータを集めて、初めて気づいた事実です。
| 都道府県 | 自動車税 | 課税方法 |
|---|---|---|
| 長野県・滋賀県 | 8,000円 | トラック税率を適用 |
| 愛知県 | 18,400円 | 中間的な税率 |
| 栃木県・茨城県 | 25,500円 | 乗用車税率を適用 |
| 京都府 | 30,400円 | 乗用車税率+独自加算 |
同じ車両でも、長野県と京都府では年間2万円以上違います。
これは「同じ加工車をどう分類するか」を、自治体が独自に判断しているためです。住民税が地域によって違うのと同じで、これも自治体の判断ということになります。
知っている業界人は少数派ですが、これからキッチンカーを始める方は、ぜひ自分の管轄の自治体に問い合わせて確認することをおすすめします。
ポイント3:車検頻度は両者とも2年
「4ナンバーは1年車検」というのも、業界でよく聞く誤解です。
これは普通車(小型貨物車)のハイエースなどの話で、軽トラの4ナンバーは2年車検です。8ナンバー加工車も2年車検なので、車検頻度に差はありません。
4ナンバーで困っている人の実例
ここまで「数字の比較」をしてきました。
でも、4ナンバーの問題は数字に出てこない部分にもあります。実際に4ナンバーで作って、後から困っているケースを業界で見てきた話を共有します。
ケース1:車検時の費用と手間で疲弊している
ある知人のキッチンカーオーナーから聞いた話です。
その方は、4ナンバー軽トラ(脱着式)でクレープ屋さんを始めました。
「維持費が安いから」と製作会社に勧められて、4ナンバーで決定。価格も、8ナンバーで作るより数十万円安かったそうです。
最初は順調でした。
ところが、2年後の車検で問題が発覚します。
- 製作会社の場所が、片道3時間離れている
- 自分でシェルを降ろす機材も技術もない
- 地元の整備工場に持ち込んだら、「このままじゃ車検は無理」と断られる
- 結局、製作会社まで車両を運んで、シェルを降ろして、車検を受けて、シェルを再装着して持ち帰る
- かかった費用:車検代+シェル脱着費用で約15万円
「最初に8ナンバーで作っていれば、地元の整備工場で8万円で済んだのに」とぼやいていました。
しかも、これは2年に1回、ずっと続きます。10年で車検費用だけで75万円。
「維持費が安い」と思って4ナンバーを選んだのに、実質的には8ナンバーより高くついているケースです。
ケース2:車検が受けられず、営業休止
別の方の話です。
この方は、転勤で地方都市に引っ越したところ、車検の時期がきました。
問題が発生したのは:
- 引っ越し先の整備工場では、4ナンバーキッチンカーの車検を受けてくれない
- 「箱を降ろしてから来てください」と言われる
- でも、降ろす機材がない、人手もない
- 元の製作会社に持ち込もうにも、片道500km以上
結局、車検切れの状態で、3週間営業を休止することになりました。
その間の売上ロス、約60万円。
「4ナンバーが安い」と言われた金額(年間4〜5万円)を、たった3週間で吹き飛ばしてしまいました。
ケース3:売却時に買い手がつかない
これは私が「縁結び」で実際に経験した話です。
ある方が、4ナンバーキッチンカーを手放したいと相談に来られました。
購入価格は当時400万円。3年使って、まだ綺麗な状態でした。
ところが、買い手がなかなか見つかりません。
理由を聞いてみると、買い手候補から次々と:
「4ナンバーは車検が面倒だから」
「製作会社に持ち込まないといけないんでしょ?」
「自分の地元じゃ整備できないと困る」
という反応。結局、8ナンバーの同等車両より、約50万円安い価格でないと売れない状況になりました。
「買うときは数十万円安かったけど、売るときも数十万円安くなった。結局トータルで損したかもしれない」
その方は、苦笑いしながらそう言っていました。
結論 ―― 「年間4〜5万円安い、でも…」
ここまでの調査を、結論としてまとめます。
維持費だけ見れば、4ナンバーが安い
これは事実です。
サニーズオーナー7店のデータから明らかになった通り、年間4〜6万円(都道府県により異なる)の差で、4ナンバーのほうが安く済みます。
10年で40〜60万円。これは決して小さくない金額です。
でも、「維持費だけ」で判断していいのか?
ここで、皆さんに問いかけたいのは、
「維持費だけ」で、ナンバーを選んでいいのでしょうか?
私の答えは「No」です。
理由は、この記事で見てきた通り:
- 車検時の見えないコスト(シェル脱着、製作会社への持ち込み)
- 車検場所の制約(地元で受けられない)
- 将来の引っ越し・転勤への対応
- 中古売却時の不利
これらすべてを考慮すると、実は4ナンバーは、トータルで見ると割高になるケースが少なくありません。
月3,500〜5,500円の差を、どう考えるか
私はこう考えます。
「月3,500〜5,500円の差で、安心して乗れる、車検場所に困らない、引っ越しても対応できる、売却時にも有利、こんなにメリットがあるなら、絶対に8ナンバーを選びます」
仮にこの差額を売上で取り返すとしたら、月10,000〜15,000円の売上を増やせばいいだけです。
キッチンカー1日の売上が3〜5万円とすれば、月にあと1日、頑張って営業すれば取り返せる金額です。
そう考えると、「維持費の差」は、実はそれほど大きな決め手にはならないということが見えてきます。
次回予告 ―― 維持費の話で済まない、本当の問題
ここまで、純粋に維持費の事実だけをお伝えしてきました。
でも、実は4ナンバーキッチンカーには、もっと深刻な問題があります。
5年前、私はYouTubeで何を訴えたか
実は、私は5年前にYouTubeで「キッチンカー業界の違法改造問題」について発信しました。
当時、業界には4ナンバーで作られたキッチンカーが大量に出回っていました。
そして、その多くが、法律的にグレーな状態で運営されていました。
具体的には:
- 箱(シェル)をボルトで固定しているのに、4ナンバーのまま運転している
- 本来なら構造変更(8ナンバー化)が必要なのに、それをしていない
- 最大積載量を超過している
- 事故時に保険が下りない可能性がある
- 国土交通省の通達では、ボルト固定は「積載物」とは認められない
私のYouTube動画は、業界で炎上しました。
製作会社からは反発があり、4ナンバーで運営しているオーナーからは「じゃあ自分はどうすればいいんだ」という声が上がりました。
5年経って、業界はどう変わったか
あれから5年。
業界は、少しずつ変わってきました。
- 大手の製作会社も、8ナンバー中心の製作に移行するところが増えた
- 保険会社の対応も厳しくなってきた
- 中古市場で4ナンバーが売れづらくなった
でも、まだ問題は残っています。今でも4ナンバーで販売している製作会社はあり、知らずに購入している方もいます。
次回の記事で書くこと
次回の記事では、5年前のYouTube動画の続きとして、以下の内容を書きます。
- 当時の業界で何が起きていたか
- 私が動画で訴えた具体的な問題
- 動画投稿後、業界がどう反応したか
- 5年経って、解決された問題と、まだ残っている問題
- 実際にあった「保険が下りなかった」事例
- これからキッチンカーを始める人へのアドバイス
維持費の話より、もっと重要な話です。
これからキッチンカーを始める方、すでに4ナンバーで運営されている方、業界に関わるすべての方に、必ず読んでほしい内容です。
公開を楽しみにお待ちください。
最後に
この記事を読んでくださっている方の中には、「実は私もそうだった」「今、4ナンバーで検討中」「もう4ナンバーで作ってしまった」という方もいるかもしれません。
これからキッチンカーを始める方には、この記事と、次回の記事を読んでから判断してほしいです。
維持費の差(月数千円)で、大切な開業をリスクのある形でスタートしてほしくありません。
そして、すでに4ナンバーで運営されている方も、今後の選択肢として知っておく価値はあります。中古車両として手放す方法、構造変更で8ナンバー化する方法、いろいろあります。
業界の先輩として、心から伝えたいのは、「正しい情報を知った上で、自分にとって最良の選択をしてほしい」ということです。
維持費の話は、ここまで。
次回は、もっと深い部分の話をします。
この記事の執筆者
滝澤 仁 (たきざわ ひとし)
株式会社セレーノ 代表取締役 / サニーズクレープ本部
長野県在住。キッチンカー業界20年の経験を持つ。サニーズクレープ本部としてフランチャイズ33店舗を立ち上げ、現場の本音を業界に発信し続けている。