【47都道府県完全解説】キッチンカーで稼げる出店場所はどこ?地方vs都市・商業施設からオフィス街まで、20年の現場から本音で語る2026年版
「キッチンカーを始めたいんですが、どこで稼げますか?」
これは、私がキッチンカー業界20年の経験を通して、最も多く受けてきた質問のひとつです。
サニーズクレープ本部として、これまでに33店舗のフランチャイズを立ち上げてきました。フランチャイズ加盟を検討する方、独立して開業しようとする方、副業として始めようとする方――数えきれないほどの相談を受けてきました。
そして、相談の内容はほぼ毎回、最終的にこの質問に行き着きます。
「結局、どこで売れば儲かるんですか?」
答えはひとつではありません。「あなたの商材」「あなたの住んでいる地域」「あなたが求めるライフスタイル」によって、稼ぎやすい場所はまったく違います。
東京で売れる場所と、地方で売れる場所は違う。
ランチ需要が強い場所と、ファミリー需要が強い場所は違う。
初心者が参入しやすい場所と、プロでないと勝てない場所も違う。
この記事では、全国47都道府県を網羅して、キッチンカーが稼げる出店場所を解説します。
ただし、ありがちな「出店場所ランキング」の記事ではありません。私が現場で20年やってきて、フランチャイズ本部として33店舗の成功と失敗を見てきた本音を、できるだけそのまま書きます。
きれいごとは書きません。「東京は稼げる」「地方は厳しい」といった単純な話でもありません。
これからキッチンカーを始めたいあなたが、自分のフィールドで戦うための地図として使ってください。
長い記事になりますが、最後まで読んでいただければ、開業前に知るべきことのほぼすべてが手に入るはずです。
キッチンカーで「稼げる場所」を考える3つの視点
具体的な出店場所の話に入る前に、まず「稼げる場所」を見る視点を整理させてください。
ここを押さえずに「人気の出店場所ランキング」だけ眺めても、自分にとっての答えは見つかりません。
視点1:地域規模(都市部 / 地方都市 / 田舎)
キッチンカーの稼ぎ方は、地域の人口規模によって根本的に異なります。
私は47都道府県を、キッチンカーの視点で大きく3つに分けて考えています。
都市部(東京・大阪・名古屋・福岡などの大都市オフィス圏)
人口が多く、平日ランチ需要が確立されている地域です。一見「人が多いから儲かる」と思いがちですが、現実は逆。出店できる場所の大半は、すでに仲介業者が押さえています。新規参入の難しさは、後ほど詳しく書きます。
地方都市(人口5万〜数十万の中核都市)
地方の県庁所在地、政令指定都市の郊外、中堅都市などです。最も標準的で、最も開業しやすいのがこの規模感です。出店料も妥当、競合もそれなりにある、イベントも安定して開催される。多くのキッチンカーオーナーが活動しているメインフィールドです。
田舎(人口5万人以下の地域)
地方の小都市、町村、過疎地です。常設の出店場所は少ないですが、副業的に「好きなことをやる」生き方には合っています。地元イベントで月数回出店して、本業と並行して楽しむ。そういう関わり方ができる場所です。
「キッチンカーで生計を立てたい」なら地方都市、「副業で始めたい」なら田舎、「大勝負したい」なら都市部――この大枠を最初に決めることが、すべての出発点になります。
視点2:客層と商材のマッチング
これは私がフランチャイズ加盟者の研修で、口を酸っぱくして伝えていることです。
どんなに美味しい商品を作っても、客層とマッチしなければ売れません。逆に、商品の完成度が80点でも、客層にハマれば爆発的に売れることがあります。
例を挙げます。
フリーマーケットの客層は、「いかに安いものを多く買えるか」を目的にしている人が多い。そこに高級路線で開発したクレープを持っていっても、お客様はちらっと見て通り過ぎていきます。
オフィス街の客層は、12〜13時のわずか1時間で食事を済ませたい人たち。提供スピードが遅いと、列ができても買ってもらえません。
ファミリーイベントの客層は、子供と一緒に楽しめるメニュー、写真に撮りたくなるメニューを求めています。シンプルな弁当系では弱い。
観光地の客層は、その土地ならではの「体験」を求めています。全国どこにでもあるメニューより、ご当地感のあるメニューが刺さります。
「自分が売りたいもの」より、「相手が求めているもの」を理解すること。これが出店場所選びの本質です。
視点3:攻めと守りのバランス
3つ目の視点は、経営的な「攻めと守り」です。
キッチンカービジネスには、大きく分けて以下のような選択肢があります。
| 戦略 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 大型イベント中心 | 1日100万円超の売上も狙えるが、ハイリスク | プロ、経験10年以上 |
| 中規模イベント+定期出店 | 安定した売上、リスク低め | 一般的なオーナー |
| 商業施設・パチンコ等の定期 | 売上は安定、爆発力はない | 着実派 |
| 買取営業特化 | 売上保証ありの法人向け | 営業力のある人 |
| 仲介業者経由のオフィス | 安定だが新規参入難 | 都市部・実績ある人 |
「攻めすぎて致命傷を負う」「守りすぎて稼げない」――どちらも失敗パターンです。
自分の体力(資金・経験・覚悟)に応じて、攻めと守りのバランスを設計する。これが、長くキッチンカーを続けるための一番大事な発想です。
キッチンカー出店場所8カテゴリ完全解説
ここからは、具体的な出店場所のカテゴリに入ります。
一般的なメディアでは「キッチンカーの出店場所10選」のように10種類以上を並べて紹介しますが、私の経験上、現実的に意味のある8カテゴリに絞ります。
各カテゴリを、初心者向け・中級者向け・上級者向けの難易度別に整理しました。これは厳密な定義ではなく、私が現場で見てきた「参入のしやすさ」の肌感です。
【初心者向け】1. 商業施設(ショッピングモール、ホームセンター、ドラッグストア等)
ショッピングモールの催事スペース、ホームセンターの駐車場、ドラッグストア前のスペース――これらはキッチンカー初心者が最初に経験するのに最適な場所です。
メリット
- 集客は施設側が確保している
- 平日・休日問わず一定の人流がある
- ファミリー客が中心で、客単価は中程度
- スーパーやドラッグストアは生活動線の一部なので、雨でもある程度売れる
デメリット
- 出店料が固定制または歩合制(売上の10〜20%)で、利益率は高くない
- 施設のテナント飲食店との競合に配慮が必要
- 出店日時は施設側の都合で決まる
滝澤の本音
商業施設は「修行場所」として非常に良いです。集客は施設が担保してくれるので、出店者は調理スピード・接客・オペレーションに集中できます。
初心者は最初の半年〜1年、ここで「毎日同じことを同じクオリティでこなす力」を鍛えるのがおすすめです。
【初心者向け】2. イベント・お祭り
地域のお祭り、フードフェス、マルシェ、企業の周年イベント――キッチンカーが本来一番輝く場所です。
メリット
- 数百人〜数千人の集客が一気に集まる
- 売上のポテンシャルが大きい(1日10万円以上も珍しくない)
- お祭り気分でお客様の財布が緩む
- SNS拡散されやすい、フォロワーが増えやすい
デメリット
- イベントの集客力に売上が完全に依存する
- 雨天中止のリスク
- 出店料が定額制または歩合制(15〜20%)で、ハズレイベントだと赤字
- 仕込み量の予測が難しい
滝澤の本音
イベントは間違いなく稼げます。ただしイベントの内容を徹底的に調べることが大前提です。
最近、イベントごとの集客に大きな差が出てきています。同じ「フードフェス」を名乗っていても、来場500人のものと5,000人のものがある。過去開催実績、主催者の実績、客層、立地――必ず事前にリサーチしてください。
売れるイベントは出店料が高くても利益が残ります。ミスると致命的です。攻めと守りのバランスを最も問われるのがイベント出店です。
【初心者向け】3. パチンコ店・アミューズメント施設
意外かもしれませんが、パチンコ店、ボーリング場、ゲームセンターの駐車場は、初心者にとって優秀な出店場所です。
メリット
- 客層が「お腹を空かせた、お金を使う気のある大人」
- 滞在時間が長く、テイクアウト需要が高い
- 1日3,000円程度の固定費、または歩合10%程度で安価
- パチンコ店との会員特典コラボなど、施設側のキャンペーン連動もある
- 意外と常連客がつきやすい
デメリット
- パチンコ業界自体が縮小傾向
- 喫煙者比率が高く、食事系より軽食・ドリンク系が合う
- 「キッチンカーをパチンコ店で?」というイメージギャップへの抵抗感がある人も
滝澤の本音
パチンコ店は、業界の人がもっと注目すべき場所です。集客は施設が担保、出店料は安い、客層は明確、競合は少ない。これだけ揃った場所はなかなかありません。
ここで重要なのは、「来場者が欲しい商品」とマッチさせることです。パチンコ客が休憩時間に食べたいのは、片手で食べられる軽食、すぐに食べ終わるドリンクや軽いつまみ。本格的なフルランチではなく、軽快に食べられるメニューが刺さります。
そして特筆すべきは、施設側の協力が得られるケースです。パチンコ店によっては「会員価格キャンペーン」が組まれることがあります。これは、お客様には通常より安い価格で提供し、その差額を施設が負担する仕組みです。さらに館内アナウンスでキッチンカーの存在を告知してくれたり、キャンペーンチラシを配布してくれたりすると、思いの外売上が伸びます。
そして、意外と常連客がつきやすいのもパチンコ店の特徴です。お客様が施設に通うリズムが決まっているため、「あの日のあのキッチンカーで食べる」という習慣ができやすい。固定客ベースを作るのに向いている場所です。
イメージで敬遠するのはもったいない。一度試してみる価値はあります。
【中級者向け】4. 公園・観光地
地方自治体が管理する公園、観光地、海水浴場、キャンプ場など。自治体公募の出店募集が増えており、近年注目を集めるカテゴリです。
メリット
- 出店料が安い、または無料の案件も多い(自治体の社会実験事業など)
- 自然豊かなロケーションでSNS映えする
- ファミリー客が中心で、客単価が高め
- 観光地なら旅行客への販売も可能
デメリット
- 公園は天候の影響を直接受ける
- シーズン性が強い(夏のキャンプ場、桜の時期の公園など)
- 公募の応募期間や手続きが煩雑
- 平日は集客が読みにくい
滝澤の本音
縁の下でも、自治体公募の案件をたくさん扱っています。「出店料無料の通年募集」といった案件も珍しくありません。
ただし、公園出店はメニュー選びが命です。アイスクリームやドリンクなど「散策しながら食べられるもの」が強い。本格的なランチ系は外しやすい。客層と商材のマッチングを慎重に。
【中級者向け】5. 大学・専門学校
大学キャンパス内、専門学校敷地内での平日ランチ出店。仲介業者経由が多いカテゴリです。
メリット
- 平日昼間の安定した需要
- 学生は固定客になりやすい(4年間通う)
- 客単価は500〜800円程度と安いが、提供数が出る
- 学生特典・学割を仕掛けやすい
デメリット
- 大学の夏休み・冬休み・春休みは売上ゼロ
- 学生の予算意識が高く、価格を上げにくい
- 客単価が低いので、提供数を出せるオペレーションが必要
滝澤の本音
大学は「教育機関の年間カレンダー」を理解しないと痛い目を見ます。年間で営業できる日数を計算すると、思ったより少ないことに気づくはずです。
ただし、固定客が4年単位で付くという特徴は他にない強みです。「学生に愛されるキッチンカー」になれば、長期的に安定します。
【上級者向け】6. オフィス街
都心のオフィスビル敷地、ビジネス街の特定スペース、官公庁周辺など。仲介業者経由がほぼ必須の世界です。
メリット
- 平日12〜13時に集中的に売上が立つ
- 雨でも一定の売上がある(屋内ビル内出店の場合)
- 顔馴染みの固定客ができる
- 客単価は1,000円前後と高め
デメリット
- 仲介業者の審査が厳しく、新規参入は極めて困難
- ピーク時の1時間に大量提供できるオペレーション力が必須
- 出店料は売上の15〜20%が一般的で、利益を圧迫
- 移動時間が長く、商圏が狭い割に拘束時間が長い
滝澤の本音
オフィス街は、初心者が憧れるけれど、実は最も新規参入が難しい場所です。
仲介業者の力が非常に大きく、彼らの中で「集客がある=提供数を出せるキッチンカー」が選ばれます。そのため実績のあるキッチンカーの稼働率が増え、新規参入者が入る隙が小さいのが現実です。
挑むなら、「自分が何を売りたいか」より、「仲介業者やオフィスの人間が何を求めているか」を理解することが先決です。提供スピード、安定したクオリティ、毎日違うメニューを出せる柔軟性――そういう「相手の要求」に応えられるかどうかです。
【上級者向け】7. 道の駅・サービスエリア(SA)
高速道路のSA、国道沿いの道の駅。ご当地グルメと相性が良いカテゴリです。
メリット
- 観光客がメインで、客単価が高め
- ご当地感のあるメニューが刺さる
- 連休・お盆・年末年始は爆発的な売上
- 駐車場が確保されているので来場ハードルが低い
デメリット
- 平日と土日祝の売上格差が大きい
- 立地が田舎にあるため、毎日の出店は現実的でない
- 道の駅・SAの管理側との交渉が必要で、新規参入のハードルが高い
- 競合は地元の名物店なので、差別化が難しい
滝澤の本音
道の駅・SAは、「観光時期にだけ稼ぐ」というスタンスで関わるのが現実的です。
ご当地感、その場所でしか食べられないメニュー、SNS映えする見た目――この3つを揃えられるなら、上級者でも参入する価値があります。
【上級者向け】8. 住宅街(マンション、新興住宅地)
マンションの敷地内、新興住宅地の空きスペースなど。コロナ以降に伸びている新しいカテゴリです。
メリット
- 競合がほとんどいない
- 固定客がつきやすい(リピート率が高い)
- 新興住宅地は若い世代が多く、キッチンカーへの抵抗がない
- 在宅勤務の増加で平日も需要がある
デメリット
- マンション管理組合・住人との合意形成が必要
- 古い町や年齢層の高い過疎地は厳しい
- ターゲット規模が小さく、爆発力はない
- 営業時間・騒音・匂いへの配慮が必要
滝澤の本音
住宅街、特に新興住宅地は意外な穴場です。
20年やってきて、「ここは意外と稼げる」と感じる場所として住宅街を挙げます。新興住宅地は若い世代、特に子育て世代が多く、キッチンカーに対する抵抗感がない。むしろ「面白いものが来た」と興味を持ってくれます。
逆に、古い町、年齢層の高い過疎地は絶対的に厳しい。これは町としての年齢層の問題です。先進的な人は都市部に移り住み、地方の古い町には保守的な人が残る傾向があります。新しいものを受け入れる土壌があるかどうかが、住宅街出店の成否を分けます。
この章のまとめ
8カテゴリを駆け足で見てきました。ここまでで気づいてほしいのは、「初心者向け」と「上級者向け」の差は、決して「稼げる金額」の差ではないということです。
オフィス街は確かに客単価が高く、安定もしている。でも新規参入のハードルが極めて高い。一方、パチンコ店は地味に見えるけれど、初心者でも参入しやすく、安定した売上が立つ。
自分のレベル、自分の地域、自分の商材に合った場所を選ぶこと。これが、すべての出発点です。
次の章では、もう一段深い議論――「地方で開業すべきか、都市部で開業すべきか」――に入ります。
地方 vs 都市 ―― どちらで開業すべきか
「東京で開業すべきですか、地元で開業すべきですか?」
これも、私が頻繁に受ける質問のひとつです。
結論から言います。多くの場合、私は「地元で開業すべき」とお答えしています。
ただし、これは「地方が無条件に優れている」という話ではありません。それぞれにメリット・デメリットがあり、商材によって答えが変わるということです。
この章では、私が現場で見てきたリアルを書きます。
都市部のリアル
都市部(東京・大阪・名古屋・福岡など)でキッチンカーをやることの実態は、想像より厳しいです。
1. そもそも出店できる場所が狭い
都市部は土地が高密度に活用されているため、キッチンカーが入れるスペース自体が限られています。「人がたくさんいる場所」と「キッチンカーが出せる場所」は、想像以上に重なりません。
2. 出店場所のほとんどは仲介業者が押さえている
数少ない優良スペースは、すでに仲介業者(モビマル、Mellow、キッチンカーズジャパン、SHOP STOPなど)が抑えています。新規参入者が直接交渉しようとしても、「すでに仲介業者経由で運営しているので」と断られることがほとんどです。
3. 仲介業者の審査が厳しい
仲介業者経由で出店するには、彼らの審査を通る必要があります。提供スピード、衛生管理、SNSフォロワー数、過去の実績――審査基準は厳しく、駆け出しのキッチンカーが入る隙はあまりありません。
4. 移動に時間がかかる
東京で営業すると、商圏が狭いのに移動時間が長いというパラドックスが起こります。渋滞、駐車場探し、搬入経路の制約――距離は近いのに時間はかかる。1日2か所で出店しようとすると、移動だけで2〜3時間かかることもあります。
5. 競合が異常に多い
都市部はキッチンカーの数も多く、お客様の選択肢が無数にあります。「美味しい」だけでは選ばれません。SNSでの発信力、見た目のインパクト、独自性――総合力が問われます。
6. 駐車場代の負担が大きい
都市部のもうひとつの隠れたコストが駐車場代です。
地方なら無料・低額の駐車場が当たり前ですが、都市部で営業中・搬入時に駐車場を確保するには、1日数千円〜1万円の駐車場代がかかることもあります。これが毎日のように積み上がると、月単位で見ると無視できない金額になります。
7. 仕込み場所の確保が難しい
都市部で意外と見落とされがちなのが仕込み場所です。
キッチンカー営業には、車内とは別に「仕込み場所」(食材の下処理、保管などを行う許可済みのスペース)が必要です。地方なら自宅や知人の店舗を使えるケースが多いですが、都市部は家賃が高く、仕込み場所として使える物件を確保するだけで月数万〜10万円以上のコストになります。
「車両は買ったけど、仕込み場所がなくて営業できない」というのは、都市部で実際にある話です。
地方のリアル
一方、地方(地方都市・田舎)はどうか。
1. 出店料が比較的安い
地方の出店料は都市部より明らかに安いです。固定費1日3,000〜5,000円、歩合制でも10〜15%が一般的。都市部の歩合15〜20%と比べると、利益が残りやすい構造です。
2. 場所は広く、競合は「あるけれどある」程度
地方にも競合はいます。ただし、土地が広いので「同じエリアで競合する」ことは少ない。同じ商材でも、別の地域なら共存できることが多いです。
3. SNSの効果が大きい、フォロワーが一気に増えやすい
地方の最大の強みはSNS拡散力です。地方は情報の循環が活発で、「地元に新しいキッチンカーが来た」という話題はすぐに広がります。フォロワーが一気に数百人〜数千人増えることも珍しくない。
4. 話題になりやすい、集客しやすい
地方では「珍しい」「新しい」がそのまま価値になります。都市部では当たり前のメニューでも、地方では話題の中心になり得る。地域の中で「あのキッチンカー」として認知されやすいのが最大のメリットです。
5. ただし、保守的な客層もいる
これは表裏一体です。地方では「先進的な人は都市部に移り住む」傾向があり、地元に残るのは比較的保守的な層が多い。誰もが知っているメニューに並ぶ傾向があり、馴染みのない新しいメニューは「わからない」と敬遠されることもあります。
結論:稼ぎやすいのは地方
総合的に見て、稼ぎやすいのは地方です。
理由をまとめると:
- 話題になりやすい
- イベントやキッチンカー需要がはっきりしている
- 出店料が安く、利益が残りやすい
- SNS拡散力が大きい
- 競合は存在するが、共存しやすい
都市部はただ人口が多いので、爆発するポテンシャルはあります。ただし、その爆発を起こすためには相応の準備が必要です。
都市部で当てる条件
「それでも都市部で勝負したい」という方のために、都市部で成功するための条件を書きます。
1. とにかく尖った商品、珍しい商品、話題性のある商品
都市部の人は情報過多な環境にいます。普通の商品では埋もれます。「これは食べたことない」「これはSNSに上げたい」と思わせる商品が必要です。
2. 独自性、お店の飾りに力を入れる
一般的な車両ではなく、ちょっと変わったキッチンカー。アンティーク調、北欧風、レトロモダン――「車両自体が記憶に残る」レベルの独自性が、都市部では効きます。
3. SNS発信力
Instagramのフォロワー数、出店スケジュールの告知、お客様とのコミュニケーション――都市部で勝負するなら、SNS運用は必須スキルです。
実例:東京でグルメバーガーを開業したいという相談
少し前、こんな相談を受けました。
「東京の有名なグルメバーガー店で修行中の30代男性。地元は地方の中核都市。今、東京で独立してキッチンカーを始めるか、地元に戻って始めるかで迷っている」
私の答えは、「地方で開業すべきです」でした。
理由はこうです。
東京はグルメバーガーが多い。都内には何十軒もの有名店があり、激戦区です。新規参入者は、すでに名前のあるお店と比較されます。「あの店より美味しいの?」と。
一方、地方にはグルメバーガーがほとんどいない。地方のバーガー市場は、ほぼチェーン店で占められています。個人経営の本格グルメバーガー店は、ほとんど存在しません。
つまり、地方で開業すれば、比較対象がチェーン店になる。チェーン店との差別化は、本格グルメバーガーにとってそれほど難しくありません。「地方で唯一の本格グルメバーガー」というポジションを取れます。
美味しく作る技術がいる商材ほど、地方でトップに立てる。
これは、グルメバーガーに限らず、他の商材にも同じことが言えます。
スペシャリティコーヒー、本格スパイスカレー、本物のナポリピザ、職人レベルのドーナツ――東京では激戦の商材も、地方ではほぼ無風です。技術と情熱があれば、地方トップになれる可能性が高い。
ただし注意点もあります。グルメバーガーは原価が高い(バンズと肉が高い)。そして工程が多いので、提供数と時間が限られる。だからこそ競合が少ないという見方もできますが、それをクリアできる技術と経験が前提です。東京の有名店で修行を積んだ方であれば、その技術と経験はあるはず。だから、地方で挑戦する価値があると答えました。
地方で勝つための注意点
ただし、地方なら何でも売れるわけではありません。東京と同じ感覚で地方で出店すると、商材と地域のミスマッチが起きやすい。
地方のイベントで、馴染みのない商品(例:本格的なエスニック料理、変わったヴィーガンメニューなど)を出すと、お客様は「何これ?」と素通りすることがあります。
ポイントは、「都市部で流行り始めて、地方に届くまでの時間差を狙う」こと。
タピオカ、韓国スイーツ、マリトッツォ、ふわふわかき氷――これらはすべて、東京で流行ってから1〜2年後に地方で大爆発しました。そのタイミングを狙って先回りすれば、地方で大きく当てられます。
地方は「先進的すぎる商品」では売れません。「東京で流行ったものを、地方で初めて出す店」くらいのポジションが、最も成功確率が高いです。
47都道府県マップ ―― 地域別の特徴と狙い目
ここからは、全国47都道府県を地域ブロックに分けて、それぞれの特徴と狙い目を解説します。
私が縁の下を運営する中で見てきたデータと、20年の現場経験から得た肌感をベースにしています。
北海道
特徴:活発、ただし札幌近郊に集中
北海道は、東北と比べるとキッチンカーが活発な地域です。寒冷地という気候の厳しさはあるものの、夏のイベント、観光地需要、都市部の規模感などで、十分に成り立つ市場があります。
ただし、ほとんどが札幌近郊、もしくはその周辺に集中しています。函館、旭川、帯広などの中核都市にも一定の活動はありますが、それ以外の道内地域は出店機会が少ないのが現実です。
北海道の特徴的なスタイルとして、「お店を構えながら、イベントごとにキッチンカーで出店する」というオーナーが多いことが挙げられます。固定店舗とキッチンカーを併用する二刀流スタイル。これは北海道の市場規模と季節性を考えると、合理的な選択です。
狙い目:札幌のオフィス街、観光地、夏のイベント、屋外フェス。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
特徴:気候の厳しさが最大の壁
東北はキッチンカーが少ない地域です。理由は明確で、気候(寒さ、雪)が厳しいこと。冬の数か月は屋外営業が事実上不可能になります。
エリアとしても広く、出店地域がどうしても中核都市(仙台、盛岡、福島、山形など)に限られます。中核都市以外では、移動販売キッチンカーの数は限られる傾向にあります。
狙い目は、逆に「中核都市以外の田舎の需要を満たすキッチンカー」です。複数の商材を扱える万能型のキッチンカーが、東北の田舎エリアで活躍する可能性があります。「カレーもあるし、ドリンクもあるし、デザートもある」というオールラウンド型は、競合のいない地域で重宝されます。
冬季は営業を絞り、春〜秋に集中して稼ぐビジネスモデルが基本になります。
北関東(茨城、栃木、群馬)
特徴:キッチンカー文化が成熟
北関東は、以前からキッチンカーの組合・協会の力が大きく、加盟しているキッチンカーも多い地域です。キッチンカー製作会社も点在していて、業界全体として成熟しています。
昔からキッチンカーに限らず、催事・行商の文化がある地域だと認識しています。商業施設、パチンコ店、地域イベント――出店機会のバリエーションが豊富です。
狙い目:茨城・栃木の中核都市のイベント、群馬の温泉地、北関東の商業施設定期出店。
首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)
特徴:競合多、仲介業者の力が大きい、大型フェスが多い
前章で述べた通り、首都圏は競合が異常に多く、仲介業者の力が極めて大きい地域です。新規参入のハードルは全国一高い。
ただし、大型フェス・大型イベントの開催数も全国一です。フジロック、サマーソニックといった大型音楽フェスから、地域の食フェス、企業の周年イベントまで、毎週末どこかで何かしらのイベントが開催されています。
首都圏で勝負するなら、「仲介業者の審査を通れる実績を作る」か、「大型イベントに通る商材と運営力を持つ」か、「住宅地・新興マンションなど隙間を狙う」――この3つのいずれかになります。
東海(静岡、愛知、岐阜、三重)
特徴:温暖な気候と地域性
東海地方、特に静岡や愛知は温暖な気候もあり、また広いエリアごとにキッチンカーがいるバランスの良い地域です。
地域性のあるメニューを売りにしている店舗も多いのが特徴です。静岡おでん、味噌カツ、ひつまぶし――地域の食文化と結びついたキッチンカーが成り立ちます。
愛知は名古屋の都市部、岐阜は岐阜市と高山などの観光地、三重は伊勢神宮周辺の観光需要――それぞれ異なる強みがあります。
狙い目:愛知の商業施設、静岡の海沿いイベント、三重の観光地、岐阜の通年公園出店。
北陸(新潟、富山、石川、福井)
特徴:冬の気候は厳しいが、思いの外活発
北陸は冬の気候が厳しい地域ですが、天候の割にキッチンカーは多い印象です。
冬は思い切って営業しないか、スキー場で営業するか――この季節的な問題をどうクリアするかが課題です。スキー場は冬季限定で大きな需要があり、ここを取れるキッチンカーは強い。
金沢、新潟、富山などの中核都市では、夏〜秋にかけて活発な活動があります。
狙い目:夏季の中核都市イベント、冬季のスキー場、観光地(金沢、新潟など)。
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
特徴:首都圏と同様の競合密度
近畿は、首都圏と同様の競合密度を持つ地域です。大阪、京都、神戸の都市部では、首都圏と同じく仲介業者が大きな力を持ち、大型フェスも頻繁に開催されます。
ただし、首都圏との違いとして、関西広域連合の営業許可共通化(令和7年6月施行)があります。これにより、大阪府・和歌山県の自治体で取得した営業許可で、両府県全域での営業が可能になりました。広域展開のしやすさは近畿の強みです。
奈良、和歌山などの地方は、田舎エリアの市場性として捉えられます。
狙い目:大阪の大型イベント、京都の観光地・大学、兵庫の郊外住宅地、和歌山の海沿いイベント。
山陰(鳥取、島根)
特徴:キッチンカー過疎地、ブルーオーシャン
山陰、特に鳥取・島根はキッチンカーが少ない地域です。一般的に他の地域と比べて、キッチンカー文化が育っていない。
これはブルーオーシャンとも言えます。競合が少なく、地域の人々にとって「キッチンカー」自体が珍しい存在。話題性は十分に作れます。
ただし、市場規模が小さいので、「ここだけで生計を立てる」というよりは、副業や移住先としての選択肢になります。地方移住者がキッチンカーを始めるなら、山陰は穴場と言えます。
山陽(岡山、広島、山口)
特徴:広島を中心にバランスの取れた市場
山陽は、広島市を中心にバランスの取れたキッチンカー市場があります。広島キッチンカー協同組合といった組合組織も存在し、イベント派遣などの仕組みが整っています。
岡山、山口にも一定の活動があり、地方都市での標準的な開業ができる地域です。
狙い目:広島の大型イベント、岡山の商業施設、山口の地域イベント。
四国(徳島、香川、愛媛、高知)
特徴:この10年で急成長
四国は、ここ10年でキッチンカーがかなり増えた地域です。以前は少なかったのが、近年活発になっています。
香川のうどん文化、愛媛の蜜柑、高知のカツオ――地域食材を活かしたキッチンカーが特に強い。徳島は阿波踊りなどの大型イベントと連動した出店機会があります。
狙い目:四国4県を巡る移動型営業、地域食材を活かしたメニュー、地方イベント。
九州・沖縄
特徴:古くからキッチンカーが盛ん
九州は古くからキッチンカーが盛んな地域です。特に福岡がダントツで、キッチンカー文化が成熟しています。
南に行くほどキッチンカーは少なくなる傾向があります。福岡は別格、熊本は人口が多いこともあって台数が多い。佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島は徐々に少なくなっていきます。
狙い目:福岡の都市部イベント、熊本の中核都市、九州縦断の観光地巡り、地方イベント。
沖縄
特徴:観光地特化、離島にも展開
沖縄は観光地で営業しているキッチンカーが多い地域です。本島の海岸沿い、観光スポット、リゾートエリアが中心です。
ここ数年は石垣島や宮古島で営業するキッチンカーが増えてきました。さらにそこから行ける離島でもキッチンカーが営業しているケースが出てきています。
観光客向けの商材が中心で、地元客向けというよりリゾート滞在者向けのビジネスです。
狙い目:本島ビーチ沿い、石垣島・宮古島の観光地、リゾート連動イベント。
47都道府県マップのまとめ
ここまで全国を9つの地域ブロックに分けて見てきました。簡単に整理すると:
| ブロック | キッチンカー成熟度 | 狙い目 |
|---|---|---|
| 北海道 | 中(札幌集中) | 札幌都市部、観光地 |
| 東北 | 低 | 田舎の万能型キッチンカー |
| 北関東 | 高 | 組合経由の安定出店 |
| 首都圏 | 最高(競合最多) | 大型イベント、住宅地 |
| 東海 | 高 | 地域性メニュー |
| 北陸 | 中 | 夏季中核都市、冬季スキー場 |
| 近畿 | 高(競合多) | 広域展開、観光地 |
| 山陰 | 低 | ブルーオーシャン |
| 山陽 | 中 | 広島中心 |
| 四国 | 中(成長中) | 地域食材活用 |
| 九州 | 高(福岡中心) | 福岡都市部、観光地 |
| 沖縄 | 中(観光地特化) | リゾート、離島 |
自分の住んでいる地域、開業を検討している地域を見つけて、参考にしてください。
意外と稼げる場所、見た目より厳しい場所
ここまでカテゴリ別、地域別に見てきました。最後にこの章では、「業界のイメージとは違うリアル」をお伝えします。
ネットで「キッチンカー出店場所」を検索すると、定番の場所が並びます。でも、現場で20年やってきた私が見ている景色は、少し違います。
意外と稼げる場所
1. 住宅地、特に新興住宅地
前章でも触れましたが、改めて。新興住宅地は本当に意外な穴場です。
知人の駐車場、新興住宅地の一角、マンションの敷地内――こういう場所での出店は、想像以上に稼げます。
理由は明確です。新興住宅地は若い世代、特に子育て世代が多く、キッチンカーに対する抵抗がない。むしろ「面白いものが来た」と興味を持ってくれます。
逆に古い町、年齢層の高い過疎地は絶対的に厳しい。町としての年齢層がそのまま売上を左右します。
ターゲットを絞るなら、新興住宅地の20〜40代ファミリー層を狙うのが最も効率的です。
2. しっかり調べた中規模イベント、当てれば大きい大型イベント
「大型イベントは出店料が高い」と敬遠する人が多いですが、これは半分正解で半分間違いです。
ここで、規模感を整理させてください。「大型イベント」という言葉は使い手によってまったく意味が違うので、ここで明確にします。
地方の中規模イベント(地域のフード祭り、マルシェなど)
1日の売上目安は20万〜30万円、最大でも50万円程度。これが地方の中規模イベントのリアルな数字感です。出店料は1〜3万円、歩合制なら15〜20%程度。
このクラスは「徹底的にリサーチすれば、誰でも勝てる可能性がある」領域です。過去開催実績、主催者の実績、客層、立地、SNS反響――事前リサーチで当たり外れを見抜けます。「攻めと守りのバランス」が最も問われるのが、この中規模イベント帯です。
最近、同じ「フードフェス」を名乗っていても、来場500人のものと5,000人のものがあります。事前リサーチを怠ると、出店料と人件費だけかかって赤字になる。逆に、しっかり調べて当てれば、利益が大きく残ります。
都市部の大型イベント(大手フード系フェス、音楽フェスなど)
1日の売上が50万円、100万円というレベルになるのは、こちらの世界です。フジロック、サマーソニック、JAPAN JAMといった大型音楽フェス、都市部の大規模食フェス――こういうイベントです。
ここまで来ると、リサーチで外す心配は基本的にありません。誰もが知っているイベントなので、内容も客層もある程度わかっている。
ただし、別のリスクがあります。天候による中止です。2026年5月のJAPAN JAMや大阪の屋外イベントのように、悪天候で中止・縮小されるケースは実際にあります。仕込み済みの食材が無駄になるリスクを抱えています。
ちなみに、1日100万円を売るキッチンカーは、全キッチンカーの1%以下だと思います。それくらい、限られた世界の話です。
会社の納涼祭・社内イベント
これは見落とされがちな「勝ち筋」です。
会社の納涼祭などは、提供数が400食といったレベルが普通にあります。提供できる能力があれば、大きく稼げます。さらに、出店料がないことが多く、仕込み数もはっきりしている(事前に何食用意するか決まっている)ので、廃棄ロスもありません。
非常にいい出店です。これは次の「買取に振り切る営業」とも関連します。
3. 完全に買取に振り切る営業
これはあまり知られていない「業界の勝ち筋」です。
通常のキッチンカーは「個人客に1個ずつ売る」B2Cビジネスです。これに対して、買取出店は「企業や主催者がまとめて買い取る」B2B型のビジネスです。
例えば:
- 企業の周年パーティーで100食提供契約
- 結婚式の二次会で200食提供契約
- 展示会の来場者へのケータリング500食契約
- 会社の納涼祭で400食提供契約
このタイプの仕事を中心に営業活動を組み立てると、売上が安定し、廃棄ロスがゼロになります。
なぜ法人向けが安定するのか
ここに、業界の人があまり言語化しない真実があります。
物価高で個人客の財布は硬くなっています。「ランチに1,000円使うのは高い」「クレープに500円はちょっと」――個人消費は明らかに鈍化しています。
一方、会社の納涼祭やマーケティング企画は、企業がお金を出します。法人はお金がある(個人負担ではない)ので、遥かに安定します。金払いがいいのです。
「キッチンカー1台を貸し切りで」「200食まとめて」「広告効果も含めて30万円」――こういう取引は、個人客相手では実現しません。
専門の戦い方として:
- 広告代理店、イベント会社への営業に特化する
- メーカーのマーケティング目的の出店を狙う(新商品PR、サンプリングなど)
- 企業の福利厚生イベント(納涼祭、忘年会、運動会)を狙う
- そこを狙ったメニュー開発を最初から行う(大量提供できる、原価管理しやすい)
これは多くのキッチンカーが見落としている領域です。個人向けに売るより、法人向けに買い取ってもらう方が遥かに安定するケースは多いです。
見た目より厳しい場所
1. オフィス街
これも繰り返しになりますが、改めて強調します。オフィス街は新規参入が極めて難しいです。
東京、大阪、名古屋、福岡の都市部オフィス街は、ほぼ仲介業者(Mellow、モビマル、ネオ屋台村など)が抑えています。
仲介業者が選ぶキッチンカーには明確な基準があります。「集客がある=提供数を出せる」キッチンカーです。実績のあるキッチンカーが優先され、新規参入者の枠は限られます。
しかも、仲介業者の中ですでに「稼働率の高いキッチンカー」が形成されていて、そこに割って入るのは至難の業です。
オフィス街に挑むなら、まずは多少売れづらい場所から数字を作り、その実績を仲介業者に見せていく必要があります。
そして、「うまいものを提供して、お客様を待たせない、ストレスを与えない営業力」が必須です。提供スピード、安定したクオリティ、衛生管理、笑顔の接客――すべてのレベルが高くないと、オフィス街では生き残れません。
何より大事なのは、「自分が何を売りたいか」より、「仲介業者やオフィスの人間が何を求めているか、必要としているかを理解する」ことです。彼らの要求に応えられるかどうか、ここがすべての出発点です。
2. 大型イベント(プロ中のプロの世界)
前章でも触れましたが、改めて強く言います。大型イベントは、初心者が踏み込んでいい世界ではありません。
「1日100万円売れる」「200万円売れる」というキッチンカーの話を聞くことがあります。これは事実です。ただし、彼らはプロ中のプロです。
- 何時間も前から仕込み、大量の食材を準備する
- 数十人のスタッフを使い、ピーク時に1分間に何食も提供する
- 想定外の客足変動に対応する
- 仕入れ、人員配置、オペレーションをすべて最適化している
これは、10年、20年と力をつけてきた人たちが、ようやく到達した世界です。すぐにできるものではありません。
業界に長くいると、こういうプロの話を聞いて影響を受けやすい。「自分もあれくらい売れるんじゃないか」と。
ですが、自分を見失わないでください。プロは別次元の存在です。キッチンカー事業者という同じ括りで考えない方がいい。
初心者は、小さく始めて、着実に経験を積むこと。プロの話は参考程度に聞いて、自分のステージを冷静に見極めてください。
この章のまとめ
業界の「定説」と、現場のリアルは違います。
- 住宅地は地味だが、新興住宅地は穴場
- 大型イベントは儲かるが、リサーチが命
- 買取営業は誰も語らないが、最も安定する勝ち筋
- オフィス街は憧れるが、新規参入は難しい
- 大型イベントのプロ中のプロは、別次元の存在
これらのリアルを踏まえた上で、次の章では、私自身がキッチンカーを始めた最初の日のリアルをお話しします。今思い返しても、失敗だらけの1日でした。
私の初日 ―― サニーズクレープ第1回出店の失敗談
ここまで20年の経験から得た知見を書いてきました。
でも、私自身も最初から成功していたわけではありません。むしろ、初日の出店は失敗だらけでした。
今でも忘れられない、その日の話をします。
商業施設の屋上、ひっそりとしたフリマ
サニーズクレープを始めて、初めての営業の日。場所は、地元から30分ほどかけて行った商業施設の屋上で開催されていたフリーマーケットでした。
今思い返せば、本当に小規模で、集客もほとんど見込めないイベントでした。商業施設の屋上で、ひっそりと開かれていたフリマ。出店料は1,000円程度。
天気はよく晴れていました。
練習はしていた、それでも自信がなかった
その日のために、生地を焼く練習はとにかくやりまくっていました。当時経営していた飲食店のキッチンで何度も何度も。それでも、本番に向けての自信がありませんでした。
ドキドキしながら、お店の準備を始めます。準備にも時間がかかりました。それ以上に、自信がなかったので、オープン前に試しに何度か焼いてみました。
ここで、想定外のことが起こります。
「車内の日光」という落とし穴
当時経営していた飲食店のキッチン、つまり室内で練習していたとき、ガスの火力は完璧に把握できていました。
ところが、キッチンカーの車内で焼こうとした瞬間、状況が一変しました。
日光が車内に差し込んできて、ガスの火がどのくらいついているか、まったく見えないのです。室内で見ていた青い炎が、屋外の日光下では見えない。火力の調整ができない。
結果、思いの外、火力が強くなってしまって、生地がうまく焼けませんでした。
これは、研修中の私には完全な盲点でした。「飲食店のキッチンで完璧にできる」と「キッチンカーの車内で完璧にできる」は、まったく別の話だったのです。
オープン、誰も来ない
それでもオープンの時間になりました。お客様を待ちます。
一向にお客様は来ません。
それもそうです。大した宣伝もしていない、商業施設の屋上でひっそり開催されているフリマ。フリーマーケットに来るお客様の目的は、「今回はいかに安いものを買えるか」という客層です。
そこに、私が持ち込んだのは、ちょっと高価な価格、高級路線で開発したクレープのブランドでした。
商品と客層は、完全にミスマッチでした。
さらに、振り返ってみれば、お客様が買ってくれなかった理由は他にもありました。
- 作り慣れていないので、商品サンプルがない
- 写真もない、どんなクレープなのかわからないPOP
- なんとなく漂う匂いだけが、辛うじて「クレープ屋らしさ」を伝えていた
- 素人同然の飾り付けで、お店としての完成度が低い
お客様はちらっと見ることはあっても、購入しません。そして、その小さいキッチンカーの中には、自信のなさそうな30すぎの男が、キョロキョロ落ち着きのない顔でこちらを凝視している――買いに来るわけがありません。
接客業が長かった私も、初めての現場では、今までの経験を活かせるような事ができませんでした。
1組目のお客様、10分以上待たせる
お昼前になると、ようやく1組のお客様が来てくれました。
ところが、生地を焼こうとすると、緊張のあまり生地が破れてしまいました。
また1枚焼く。失敗。また1枚。
満足できるような生地を提供するのに、10分以上もお待たせしてしまいました。
あの時のお客様のことは、今でも忘れません。
結果、売上数千円、利益はゼロ
その日、結局売れたクレープは10数個。売上は数千円でした。
出店料は1,000円程度だったので、利益はほとんど残りませんでした。
あのフリマで、本当によかった
今振り返って思うのは、「あのフリマで本当によかった」ということです。
結果的にお客様が少ないフリマだったので、傷は小さく済みました。もしオープン初日に多数のお客様が来るような大きなイベントだったら、大変なことになっていたと思います。
商品の準備不足、車内の火力調整、POPの不在、飾り付けの素人っぽさ、緊張による接客の崩壊――これらすべての欠点が、もし大型イベントで露呈していたら、SNSで「あのキッチンカー、待たされた」「商品が雑」と拡散されて、開業早々に大きなダメージを負っていたでしょう。
初日が「ひっそりとしたフリマ」だったからこそ、失敗を小さく抑えられた。これは結果論ですが、今振り返ると本当に幸運でした。
この失敗から学んだこと
あの日の失敗を一行で言うなら、「準備不足」です。
- 商品開発の練習はしていたが、キッチンカー車内での実地練習が足りなかった
- 出店場所のリサーチが甘く、客層と商材がミスマッチだった
- POP、写真、飾り付け――お店としての完成度が圧倒的に低かった
- 緊張への対処、初対面のお客様への対応 ―― プレオープン的な事前準備が必要だった
この経験があったから、その後、私はサニーズで研修する際、オープン前の練習、準備、注意点に関しては口を酸っぱく、しつこく伝えています。
「飲食店のキッチンで完璧にできても、車内では別物」
「客層と商材は、絶対に事前にリサーチする」
「POPと写真と飾り付けは、味と同じくらい重要」
「初日のオペレーションは、頭で考えてもダメ、実際に動いて確認する」
私がこれまで指導してきた、すべてのオーナーに伝えている内容の出発点が、あの屋上のフリマでした。
失敗を恐れる必要はない
これからキッチンカーを始める方に伝えたいのは、失敗を恐れる必要はないということです。
私の初日は、客観的に見れば「失敗」です。利益も出ず、お客様を待たせ、商品にも自信が持てなかった。
でも、その失敗が20年後の今、全オーナーに伝えている指導の核になっています。
初日に完璧を求める必要はありません。ただ、その日に学んだことを、次の日に活かせるかどうか――そこが分かれ目です。
そして、できるだけ初日の失敗を小さくするために、次の章で「これから始める人への3つのコツ」をお伝えします。
これから始める人への3つのコツ
私が20年やってきて、33店舗のフランチャイズを指導してきて、辿り着いた「最初の半年で気をつけるべき3つのコツ」を共有します。
これだけ守れば、初日の私のような失敗は避けられます。
コツ1:小さく始める
最初から大きなイベントに飛び込まないでください。
大きなイベント、特に出店料の高いイベントには出店しない。これが鉄則です。
理由はこうです。
オープン初期は、基本的にどれだけ練習しても、すべてのクオリティが低い。商品のクオリティ、接客、オペレーション、提供数、POP、店作り――どれも、開業時点ではまだ低いレベルです。
これは誰でも同じです。プロでも、ゼロからスタートする時は低い。改善を積み重ねて、お店の価値は徐々に上がっていきます。
問題はここです。オープン初期の「価値が低いとき」にお客様が多く来店されると、価値の低いもの(悪いもの)をどんどん宣伝することになる。
SNSで口コミ投稿されたり、友人知人に話されたり――情報は伝播します。そして残念なことに、良いものより悪いものの方が伝わりやすいのです。
「あの店、待たされた」「クレープが破れてた」「店主が緊張してて感じ悪かった」――こういうネガティブな口コミが、開業早々に広がると、リカバリーに何ヶ月もかかります。
だから、最初は小さく。価値が大きくなってから、積極的に大きなイベントへ。この順番が大事です。
最初の半年は、出店料1,000〜3,000円程度の小さなイベント、商業施設、パチンコ店などで、「毎日同じことを同じクオリティでこなす力」を磨いてください。
小さな失敗を繰り返しながら、徐々に規模を上げていく。これが王道です。
「いきなり大型フェスに出店して大成功」というのは、ほぼ起こりません。
コツ2:集客を徹底的に調べる
これは私自身が、初日に最も失敗したポイントです。
イベントなら過去の開催実績、商業施設なら現地の雰囲気・集客・場所を、絶対に下見してください。
具体的には:
- イベント ―― 過去開催の写真、SNS反響、主催者の他イベント実績、想定来場数の根拠
- 商業施設 ―― 平日と休日の人流、年齢層、競合の有無、駐車場の利便性
- 公園・観光地 ―― 季節ごとの客層変化、天候リスク、トイレなどの動線
- 大学・専門学校 ―― 学生数、長期休暇、学割の文化、競合キッチンカー
「主催者が言う集客見込み」は、しばしば実態と乖離します。自分の目で見て、自分の足で確認する。これに勝るリサーチはありません。
特に、初出店の場合は必ず事前に現地を見る。Googleマップで見るだけでは絶対に分からない情報があります。
コツ3:客層と商材のマッチング
私が初日に失敗した最大の原因は、これでした。
フリマの客層に、高級路線のクレープを持ち込んだ。商品が悪かったのではなく、組み合わせが間違っていました。
これから始める方に強く伝えたいのは:
- 「自分が売りたいもの」と「お客様が欲しいもの」は、しばしば違う
- 「美味しい」だけでは選ばれない、「その場で求められる」かどうか
- 同じ商品でも、出店場所を変えるだけで売上が倍以上変わる
例えば、本格スパイスカレーは、ファミリー客の多い公園では辛すぎて売れません。同じ商品を、平日のオフィス街で出せば、行列ができることもあります。
自分の商材が「誰に」「どこで」「何のために」食べられるのか――これを徹底的に考えてから、出店場所を選んでください。
番外編:プレオープンの重要性
3つのコツに加えて、私が研修で必ず伝えているのが「プレオープン」です。
正式オープンの前に、家族・知人を呼んで、実際に車両で営業してみる。お金を受け取らなくてもいいから、本番と同じオペレーションを通してみる。
これをするだけで、初日の失敗の8割は防げます。
- 提供スピードは想定通りか
- 機材は問題なく動くか
- 動線はスムーズか
- 接客の余裕はあるか
「飲食店のキッチンで完璧」を「キッチンカー車内で完璧」に変換するには、実地練習しかありません。
出店場所探しに「キッチンカーの縁の下」が役立つ理由
ここまで、出店場所選びの全体像を解説してきました。
「では、実際にどうやって出店場所を見つけたらいいのか?」
その手段の一つとして、私が運営している「キッチンカーの縁の下」を紹介させてください。
押し売りはしません。「こういう時に縁の下が便利」という機能ベースで、簡潔にお伝えします。
1. 全国の出店募集情報をLINEで受け取れる
縁の下には、全国の出店募集情報が220件以上集まっています(2026年5月時点)。
これらは、行政公式情報、観光協会、実行委員会、民間主催者、自治体公募――幅広いソースから手動で精度を確認して掲載しているものです。
自分の都道府県を登録するだけで、新着の出店募集情報がLINEで届きます。出店場所探しの時間を、大幅に削減できます。
2. キッチンカー製作会社を比較できる
これから車両を購入する方には、全国155社以上のキッチンカー製作会社一覧が役立ちます。
地域別、新車・中古別、サイズ別に比較検討できます。相見積もりを取る際の出発点として使ってください。
3. 求人募集・求職者情報
キッチンカーは1人で運営することもできますが、忙しい時期にはスタッフが必要です。
縁の下では、キッチンカーで働きたい人と、スタッフを探している事業者をマッチングしています。「人手が足りない」「副業でキッチンカーを手伝いたい」というニーズに応える機能です。
4. 全国のキッチンカー検索
全国85台以上の登録キッチンカーを、都道府県・料理ジャンルで検索できます。
近隣のキッチンカーがどんな出店をしているのか、参考にしたい時に便利です。業界の動きをキャッチアップする情報源として使えます。
5. オーナー取材記事・業界コラム
私自身が、全国のキッチンカーオーナーを取材した記事を連載しています。
熊本のビーフシチューオムライス、埼玉のチュロス専門店――地方で奮闘するオーナーの本音と工夫を、じっくり聞き取っています。
「自分も同じような悩みを抱えていた」「この戦略は参考になる」――そういう気づきが得られる記事を、月1〜2本ペースで公開しています。
縁の下の3つの約束
最後に、縁の下の運営姿勢を3つだけ。
1. 地方のキッチンカーに本気で向き合う
都市部に偏重しがちな業界の中で、私たちは地方の事業者・主催者の声を拾うメディアでありたいと思っています。47都道府県すべてを対象に、地元で動くキッチンカーを応援します。
2. キッチンカーで「働く」選択肢を広げる
独立開業だけがすべてではありません。キッチンカー業界で働く、副業でキッチンカーに関わる、退職後にキッチンカーを始める――そういう多様な関わり方を支える場所でありたい。
3. 20年の知見を、開業希望者に届ける
サニーズクレープ本部としてフランチャイズ33店舗を運営してきた経験、その中での成功と失敗のすべてを、これから業界に飛び込む方にオープンにしていきます。
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まとめ ―― 47都道府県、それぞれの戦い方がある
長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
キッチンカーで稼げる場所は、地域によって違う
- 都市部 ―― 人口は多いが、新規参入のハードルが高い。仲介業者の力が大きく、駐車場代・仕込み場所のコストも重い。
- 地方都市 ―― 最も標準的で、最も開業しやすい。出店料は安く、SNS拡散力も大きい。
- 田舎 ―― 副業や好きなことをやる生き方に合う。
出店場所は8カテゴリ、難易度を理解する
- 初心者向け ―― 商業施設、イベント、お祭り、パチンコ店
- 中級者向け ―― 公園・観光地、大学
- 上級者向け ―― オフィス街、道の駅・SA、住宅街
自分のレベル、自分の地域、自分の商材に合った場所を選ぶこと。
47都道府県、それぞれに特徴がある
北海道は活発、東北は中核都市集中、北関東は組合の力、首都圏は競合最多で大型フェス豊富、東海は地域性、北陸は冬季の課題、近畿は広域許可で展開しやすい、山陰はブルーオーシャン、山陽は広島中心、四国は急成長、九州は福岡中心、沖縄は観光地と離島。
業界の定説と現場のリアルは違う
- 意外と稼げる ―― 新興住宅地、リサーチした中規模イベント、買取営業
- 見た目より厳しい ―― オフィス街、大型イベント(プロの世界)
特に、買取営業(法人向け)は業界の隠れた勝ち筋です。物価高で個人客の財布は硬いが、企業の予算は安定しています。
これから始める人への3つのコツ
- 小さく始める(大きなイベントに飛び込まない)
- 集客を徹底的に調べる(現地下見必須)
- 客層と商材のマッチング(自分が売りたいものより、相手が求めるものを)
失敗を恐れる必要はない
私自身も、初日は失敗だらけでした。商業施設の屋上で、客層を読み間違え、車内の日光でガスの火が見えず、生地を破り、10分以上お客様を待たせました。
でも、その失敗があったから、これまで指導してきた全オーナーに伝えられることがあります。
初日に完璧を求める必要はありません。
その日に学んだことを、次の日に活かせるかどうか。続けられる人だけが、本当の力を身につけます。
47都道府県、あなたの戦い方を見つけてください
この記事は、47都道府県すべてのキッチンカー希望者に向けて書きました。
東京の人には東京の戦い方がある。
地方都市の人には地方都市の戦い方がある。
田舎の人には田舎の楽しみ方がある。
あなたの住んでいる地域で、あなたの商材で、あなたの戦い方を見つけてください。
そして、その過程で「キッチンカーの縁の下」が少しでも役に立てれば、これほど嬉しいことはありません。
47都道府県すべてのキッチンカーオーナーが、自分らしく続けられる業界を目指して。
これからも、縁の下から支えていきます。
この記事の執筆者
滝澤 仁 (たきざわ ひとし)
株式会社セレーノ 代表取締役 / サニーズクレープ本部
長野県在住。自らキッチンカーから事業を立ち上げ、フランチャイズ33店舗・中古車両仲介・出店マッチングサービスと、キッチンカー業界のインフラを築いてきた実体験の持ち主。
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