キッチンカーの縁の下
はじめての開業

キッチンカーは1時間でいくら売れる?現役オーナーが実例で語るピーク時売上のリアル

「キッチンカーって、1日でいくら稼げるんだろう」——開業を考えると、誰もが一度は気になる疑問です。

でも、実は「1日いくら」という問い方は、あまり役に立ちません。週に何日出るのか、どんな場所か、メニューの単価はいくらか——条件が人によってバラバラなので、「1日◯◯円」と言われても自分に当てはめられないからです。

もっと実用的なのは、「ピーク時の1時間で、いくら売れるか」という見方です。これが分かれば、「6時間営業のイベントなら、自分はいくら売れる見込みか」を自分で計算できるようになります。

この記事では、実際に現場に立つキッチンカーオーナーの数字を3つの実例で紹介しながら、ピーク時の売上をどう考えればいいかを、できるだけ正直に解説します。夢のある大きな数字も出てきますが、最後に「本当に目指すべき現実的なライン」もはっきりお伝えします。

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売上の正体は、たったひとつの式

まず、売上の仕組みはとてもシンプルです。

売上 = 客単価 × 客数

イベント出店では、一人のお客様が同じものを何個も買うことはほとんどありません。つまり客数=何組のお客様に提供できたかで、これは提供スピードでほぼ決まります。

だから、ピーク時の1時間売上を上げる鍵は、突き詰めると2つだけです。

ひとつは客単価(1組あたりいくら買ってもらうか)。もうひとつは1時間に何組さばけるか(提供スピード)。この2つの掛け算が、あなたの「1時間あたりの売上」になります。

言葉だけだとピンと来ないので、実際のオーナーの数字を見ていきましょう。

【実例1】FOOD TRUCK THE SEASON ― チキンオーバーライス・ポテト・レモネードの場合

まずは、この記事を運営する縁の下の運営者自身が手がけるキッチンカー「FOOD TRUCK THE SEASON」の実例です。メニューはチキンオーバーライス、アメリカンロングポテト、生搾りレモンスカッシュ。

ある公園での「星空の映画祭」というイベントでは、ピークが夕方5時から8時の3時間。2人体制で、1時間あたり10万円を売ります。1日の最大は30万円。行列が途切れることなく、とにかく速く提供して、これが限界の数字です。

1人体制の場合の目安は、1時間あたり約5万円。ピークが6時間続くようなイベントなら、1日30万円ほどになります。

ここから分かる大事なことがあります。メニューとオペレーションが整っていれば、人数を増やした分だけ売上も伸びるということです。1人で1時間5万円なら、2人で10万円。理屈はシンプルです。逆に言えば、土台(メニュー設計と提供の仕組み)ができていないまま人だけ増やしても、売上は比例しません。

【実例2】サニーズ(クレープ)― 専門特化型のトップ水準

次は、クレープの移動販売を19年続け、現在はフランチャイズ本部を運営する「サニーズ」の実例です。商材が変わると、売上の作り方も変わります。

クレープは、注文を受けてから生地を焼き、巻いて、トッピングして渡します。爆発的に数を出しにくい商材で、時間効率の面ではハンデがあります。

それでもサニーズでは、提供スピードの目安を「お会計を含めて1個約2分」に設定しています。1個2分なら1時間で30個。そして数年やっている熟練オーナーは、美しい見た目を損なわずに、1人で1時間60個を販売します。

仮に客単価700円なら、60個 × 700円で1時間あたり42,000円。クレープという手のかかる商材で、1人でこの水準に届くのは、19年積み上げたノウハウがあるからです。

手の込んだメニューには「単価の壁」がある

ここに、これからクレープで開業したい人が見落としがちな落とし穴があります。

最近のクレープのキッチンカーは、手の込んだ華やかなメニューが増えています。見た目は魅力的ですが、その分1個の提供に5分かかることもあります。5分かかると、1時間に作れるのは12個。

42,000円を売るには、12個で42,000円、つまり1個3,500円にしなければ同じ売上に届きません。クレープ1個3,500円は、現実にはなかなか難しい価格です。

だからこそ、サニーズのように「基本メニュー12種類とシンプルに絞り、手数を減らして速く提供する」設計が効いてきます。メニュー構成・オペレーション・提供方法のすべてが、売上に直結しているのです。

ポイント
「華やかで手の込んだメニュー」と「速く回せるシンプルなメニュー」は、売上の作り方が根本的に違います。どちらが正解ということではなく、自分の単価と提供スピードが釣り合っているかを必ず確認しましょう。

【実例3】大型イベントの上級者 ― 1日200万円の世界

最後は、音楽フェス、スタジアムでのサッカーの試合、大型グルメイベントなどに出る、2tクラス以上の大型キッチンカーの世界です。

こうした現場では、1日で200万円ほど売り上げることがあると言われています。

考え方は、これまでと同じです。1人あたりの提供スピードのマックスが1時間約6万円だとして、アルバイト・スタッフ6人体制なら1時間で36万円。そのピークが6時間続けば、約216万円。掛け算の構造は、これまでの実例とまったく同じです。

このクラスのオペレーションには、共通する型があります。

  • メニューは増やしすぎない(メイン1・サブ1・ドリンク1で、セット1,500〜2,000円以上)
  • 会計は最低2箇所
  • 会計と受け渡しの場所を分ける
  • 1組数十秒で提供できるメニューにする
  • まとめて調理し、盛り付けるだけにする
  • 会計に時間がかかるキャッシュレスは要注意。現金のみにすることも
  • 端数が出る単価にしない
  • 提供に手数をかけない
  • 担当を明確にする

6人体制なら、会計2人・調理3人・受け渡しやサポート1人、といった構成が一例です。

【ここが一番大事】その数字に、影響されないこと

ここまで「1時間10万円」「1日200万円」という数字を見てきて、夢がふくらんだ方もいるかもしれません。でも、ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。

1日に50万、100万、ましてや200万を売るというのは、プロ中のプロの世界です。特に1日200万円は、キッチンカー業界の中でも上位数%、上位中の上位の話です。

イベントに出て同業者と話すと、こうした景気のいい数字を耳にすることがあります。確かに夢のある数字ですが、影響されないほうがいい。これは、メジャーリーガーの大谷選手のような話です。到底すぐに到達できるものではありません。

その水準にいる人たちは、何十年もかけ、数々の修羅場を経験し、ノウハウを積み重ねてきた結果としてそこにいます。提供スピードはノウハウの塊です。一つひとつの作業を根本から見直し、メニュー・客単価・客層・調理器具・調理方法・会計方法、そのすべてをトータルで考え抜いた末の数字なのです。アルバイトの採用ひとつとっても、慣れていないとすぐに現場は破綻します。

隣の芝生は青く見えます。でも、これから始める人や、始めて間もない人が、まず目指すべきは——

1人あたり、1時間に3万円。

これが、初心者がはじめに目標にするべき現実的なラインです。いきなり1時間10万円や1日200万円を狙うのではなく、まずはこの数字を安定して出せるようになること。そこから自分の実力を少しずつつけていく以外に、上の世界へたどり着く方法はありません。

速さと質は、両立する

長年売り上げてきたベテランほど、どの店よりも美味しく、どの店よりも声を出し、雰囲気・売り方・見せ方が優れていました。時間が経っても味が落ちない。提供が速い。まさにプロ中のプロです。速さと質は、トレードオフではないのです。

忙しいときほど大事なのは、雑に仕事をしないこと。売れるからといって、適当な、美味しくないものを出さないこと。速く回すことと、丁寧に作ることは、両立できます。むしろ両立させているのが、本当に売れている店です。

まとめ ― 数字は目安、本当に大切なもの

最後に、要点を振り返ります。

  • 売上は「客単価 × 客数(提供スピード)」。ピーク時の1時間売上は、この掛け算で決まる
  • FOOD TRUCK THE SEASONは2人で1時間10万円、サニーズのクレープは1人1時間42,000円。商材で売上の作り方は変わる
  • 1日200万円は上位数%の世界。夢の数字に影響されず、まずは1人1時間3万円を現実的な目標に
  • 速さと質は両立できる。忙しくても雑にしないことが、本当に売れる店の条件

最後に、ひとつだけ。販売個数や売上の数字は、本当はそれほど大切ではありません。安売りすれば数字はいくらでも作れます。大事なのは、買ってくれたお客様が「美味しかった、また食べたい」と思ってくれて、それが継続的な商売につながっていくことです。

売上報告の数字に一喜一憂するより、目の前のお客様に美味しいものを届け続けること。一時的な数字ではなく、また来たいと思ってもらえるお店であること。それが、長く続けられるキッチンカーの本当の条件だと、私たちは考えています。

数字は、あくまで自分の現在地を知るための目安です。その先にある「お客様の満足」を見失わずに、一歩ずつ進んでいきましょう。

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滝澤 仁

この記事を書いた人

滝澤 仁
株式会社セレーノ代表 / キッチンカーの縁の下 運営者・業界19年

長野県在住。2005年にキッチンカーで起業し、フランチャイズ本部・中古車両売買・業界メディアを手がける。出店する側・集める側・支える側、すべての立場を現場で経験してきた。

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