キッチンカーは飽和した?2026年に始めるなら知っておくべき5つの現実
「キッチンカーって、まだ儲かりますか?」
開業相談を受けるたびに、最近よく聞かれる質問です。
業界に20年いる人間として、正直に答えます。
「儲かる人もいます。でも、想像しているのとは、たぶん違います」
メディアやYouTube、開業セミナーでは「キッチンカーはこれからの時代に最適」「自由な働き方」「初期費用が安い」と華やかに語られています。でも、その情報のほとんどは、キッチンカーを売る側から発信されているものです。
実際に現場で働いているオーナーの本音は、ほとんど世に出ません。理由は単純で、現役オーナーには時間も体力も余裕がないからです。そして、リアルを語っても、自分には何のメリットもないからです。
だから今回、業界20年・フードトラック事業10年やってきた私が、2026年のキッチンカー業界のリアルをお話しします。
これからキッチンカーを始めようと考えている方、すでに開業して苦戦している方、両方に読んでいただきたい内容です。
5つの現実を、順番に見ていきます。
現実1:「キッチンカー出店詐欺」が急増している
最初にお伝えしたいのが、これです。
ここ数年、「キッチンカー出店詐欺」「イベント詐欺」とでも呼ぶべき問題が、業界で深刻になっています。
すでに大手メディアでも報じられている事例を一つ紹介します。
2025年7月に開催予定だった音楽フェス「AFRO JAM(アフロジャム)」。タレントのボビー・オロゴン氏が主催したイベントです。
このイベントを巡っては、出店料を支払ったキッチンカーオーナーや、チケットを購入した来場者が、開催直前から主催会社と連絡が取れなくなる事態が発生しました。
SNSでは、「出店料を払ったが連絡が取れない」「24万円飛ばされた」「未だに返金されていない」といった被害の声が、開催から1年近く経った今も上がり続けています。
さらに、Yahoo!ニュース等の報道によれば、イベントの広告費約887万円が1年間未払いという問題も発覚。被害者が主催者を直撃する動画も拡散されました。
「返金対応します」というメールは届いた、という声もありますが、実際には返金されていない。そんな状況が続いているのです。
このイベントだけの話ではありません。業界では、似たような話がここ数年で本当に増えました。
なぜこんなことが起きるのか
背景にあるのは、キッチンカー業界の「飽和」です。
イベント主催者の側からすると、キッチンカーを募集すれば、すぐに集まる時代になりました。告知をInstagramで一度流せば、出店希望が殺到する。そういう状況です。
その結果、何が起きたか。
「出店料を集めること自体が目的のイベント」が、急激に増えたのです。
本来、イベント主催者の仕事は、集客の努力をして、お客様を呼び込み、出店者と一緒に盛り上げることです。
ところが今は、
- 出店料は基本前払い、もしくは当日支払い
- 前払いの場合、天候等の理由で中止になっても返金なし
- 連絡がずさん、話が違う、当日になって条件が変わる
- 一回きりしか開催しない、責任を取らない
こうした主催者が、本当に増えました。
ひどいケースでは、出店料だけ集めてイベントを中止し、返金もせず、連絡も取れなくなる。冒頭で紹介した事例は、まさにそのパターンです。
キッチンカー側ができる対策
これからキッチンカーを始める方、すでに営業されている方に、特に伝えておきたいことがあります。
イベント出店の話が来たら、必ず以下を確認してください。
- 主催者の過去のイベント実績
これまでにどんなイベントを、何回開催してきたか。実績がない、もしくは1回限りの主催者は要注意です。
- 支払いタイミングと返金条件
前払いか当日払いか。雨天や中止の場合の返金ルールが、契約書または書面で明記されているか。
- 会場・行政との関係
会場は正規に押さえられているか。道路使用許可、保健所への届出は出ているか。
- SNSでの評判
「主催者名 + 評判」「イベント名 + 中止」で検索する。過去にトラブルを起こしている主催者は、検索すると痕跡が出てくることが多いです。
- 同業者からの情報
キッチンカー仲間に「ここの主催者、どう?」と聞ける関係性を持っておく。実は、これが一番確実な情報源です。
信頼できる主催者を見極める
逆に、信頼できる主催者にはこんな特徴があります。
- 何年も継続してイベントを開催している
- 出店者への対応が丁寧で、レスポンスが早い
- 集客のための告知・宣伝をしっかりやっている
- 当日の運営体制が整っている
- 雨天対応やトラブル時の対応ルールが明確
新しいイベントだから悪い、古いから良い、という単純な話ではありません。ただ、「出店料目当て」の主催者かどうかは、事前にしっかり見極める必要があります。
「キッチンカーを集めれば、お金は入ってくる」と考えている主催者と仕事をしてしまうと、お金も時間も信用も失います。
これが、今のキッチンカー業界で最初に知っておくべき現実の一つです。
現実2:出店料の値上がりと「中抜き」の実態
業界に長くいる人間として、もう一つお伝えしたい現実があります。
それは、出店料の値上がりです。
「売上の10%」という目安が崩れている
キッチンカー業界には昔から、出店料の目安として「売上の10%程度」という相場感がありました。
例えば、その日の売上が10万円見込めるイベントなら、出店料は1万円前後。これくらいが、お互いに無理のない健全な水準です。
ところが今、この目安が完全に崩れてきています。
例えばこんなケースが、現場では本当に起きています。
- 出店料を1万円払って、その日の売上が1万円
- 5万円の出店料を払ったのに、売上はほぼゼロ
- そもそもイベント会場にお客様がほとんど来ない
つまり、出店料は強気に値上げされているのに、集客は伴っていない。そういうイベントが、増えているのです。
主催者の「強気」がにじむ現場
これは料金だけの話ではありません。
業界全体の空気感も、変わってきました。
私がキッチンカーを始めた20年前、当時は広告代理店や主催者から呼ばれても、キッチンカーは正直、かなり下に見られていました。
それが10年前くらいから、「キッチンカーと一緒に頑張ろう」「お互い盛り上げていこう」という空気が少しずつ生まれてきた。業界全体が市民権を得てきた時期です。
ところが、ここ数年でまた変わりました。
キッチンカーが飽和し、「呼べばいくらでも集まる」状態になったことで、一部の主催者の対応が、また厳しくなってきています。
態度、連絡のレスポンス、出店者への扱い、そして料金の交渉姿勢──「キッチンカー側が頭を下げて出店させてもらう」という構図が、強まってきているのを感じます。
一部地域で起きている「中抜き」問題
もう一つ、これは業界の中でもあまり表に出てこない話なのですが、正直にお伝えしておきます。
一部の地域や個人レベルで、こんな現象が起きています。
古くからその地域で営業している古参のキッチンカーが、新人キッチンカーに「いい場所を紹介するよ」と声をかける。そして、本来3,000円の出店料を、8,000円として新人に伝え、差額の5,000円を中抜きしている──。
これは決して全国的な現象ではありません。ごく一部の地域、ごく一部の個人で起きていることです。
ただ、新人オーナーにとっては、場所がなければ営業すらできない状況なので、「おかしいな」と思っても声を上げられない。受け入れないと、その場所には二度と入れてもらえない。
そういう力関係の中で、泣き寝入りしている新人がいる。これも今のキッチンカー業界の、見えにくい一面です。
出店料を判断する時のチェックポイント
出店料の妥当性を判断する時は、以下の点を冷静に見るようにしてください。
- 過去の同イベントでの売上実績
主催者または同業者から、過去に出店した人の売上を聞き出す。「だいたい○万円くらいでした」という話があれば、出店料の妥当性が判断できます。
- 想定来場者数
来場者数が500人なのに、出店料が3万円というのは、相場的に高い。来場者数 × 客単価 × 自店の購入率の見込みで、ざっくりの売上を計算してみる。
- 出店者数とのバランス
キッチンカーが30台並ぶ会場で、来場者が1,000人しかいないなら、1台あたり30人しか回ってきません。これでは出店料を回収できない可能性が高い。
- 支払いタイミングと返金条件の明文化
口約束ではなく、書面で残す。「雨天中止の場合、出店料は○%返金」など、条件を文字で確認する。
- その場所を紹介してきた相手は誰か
主催者直接なのか、間に人が入っているのか。間に人が入っている場合、出店料が上乗せされている可能性を、頭の片隅に置いておく。
判断の軸は「売上の10%」
迷った時の判断軸は、シンプルです。
その出店料が、自分のその日の売上の10%以下に収まりそうか。
20%を超えるようなら、それはキッチンカー側がリスクを背負いすぎている契約です。30%、40%となったら、主催者が出店料目当てになっている可能性が高い。
「この出店料で、本当に元が取れるのか」という、シビアな計算を、必ず事前にやってください。
ここで判断を間違えると、1日18時間働いて利益が残らない、ということが、本当に起きます。
これが、現代のキッチンカー業界の現実です。
現実3:採択率の低下と「既得権益」の壁
3つ目の現実は、出店場所そのものが、新規参入者にとって取りにくくなっているという話です。
採択率が10分の1になった都市部
東京や大阪など、都市部のキッチンカー事情は、特に厳しくなっています。
人気のあるイベントへの出店申込は、採択率が10分の1とか、それ以下というのが、ここ数年の現実です。
10台募集に対して、100台、200台が応募する。そういう状況です。
これはコロナ禍の影響が大きい。当時、キッチンカー購入に補助金が出る自治体が多く、そのタイミングで参入したオーナーが一気に増えました。
特に都市部では、当時から飽和傾向にありましたが、コロナ明けでイベント開催が戻った時には、完全に「キッチンカー過剰」の状態になっていたのです。
大手のマッチングサービスでも、「とにかく売れるキッチンカー(=既に実績のある店)でないと、なかなか出店できない」という話は、この頃から聞かれるようになりました。
地方の大型イベントも厳しい
「地方ならまだ余裕がある」という感覚は、すでに古いです。
私が住んでいる長野県諏訪地域(諏訪市、岡谷市など)でも、キッチンカーフェスティバルが開催されていますし、隣接する塩尻市でも同様のイベントが行われています。
数十台のキッチンカーが集まる規模のイベントで、最初のうちは集客もすごかった。
ところが、今は申込が殺到するようになり、応募しても結構な割合で落ちる状況になっています。
これは諏訪地域に限った話ではありません。全国の地方イベントで、同じような状況になっています。
大型イベントの「既得権益」構造
もう一つ、これは業界の中でもあまり語られないことなのですが、お伝えします。
地方の公園で開催されるような大型イベントやフェスティバルは、古くからその地域で活動しているキッチンカーや、業界の協会・組合が、ある程度押さえているのが実情です。
協会・組合に所属していないと、そもそも大型イベントの話自体が回ってこない。そういう構造になっている地域があります。
その結果、新規参入のキッチンカーは、売れない現場、集客の少ないイベントに回されることが多くなります。
これが、新人が苦戦する大きな理由の一つです。
協会・組合の質は、トップ次第
ただし、これは協会・組合そのものを否定する話ではありません。
協会・組合のあり方は、そのトップに誰がいるかによって、大きく変わります。
業界全体の発展を真剣に考えているリーダーがいる協会・組合は、新人の受け入れにも開かれていて、情報共有や勉強会も盛んです。業界の底上げに貢献しています。
一方で、自分たちの権益を守ることが優先で、他のキッチンカーが既に営業していた場所を組合の現場として奪い取るような行為をする団体も、残念ながら存在します。
協会・組合が商売としての側面も持っているため、分裂したり、仲違いしたりすることも珍しくありません。同じ地域に、似たような名前の協会・組合が乱立しているのは、こうした事情が背景にあります。
新規参入される方は、自分の地域にどんな団体があるのか、どんな人がトップにいるのかを、ある程度調べておくとよいと思います。
新人キッチンカーが取るべき道
採択率が下がり、既得権益の壁もある中で、これから始める方は、どう動けばいいのか。
私が考えるのは、こういう方針です。
- 大型イベント一本足にしない
人気イベントは抽選で落ちるのが前提。落ちても食べていけるよう、小さな出店機会を複数持っておく。
- 小さな出店場所で実績を積む
最初から大型を狙わず、地域のマルシェ、企業の社内イベント、住宅地の小さなイベントなどで実績を積む。
- 自分で場所を開拓する
これが本質です。人の紹介や協会経由ではなく、自分で交渉して、自分の場所を持つ。時間はかかりますが、これが最も強い基盤になります。(詳しくは最後のセクションで触れます)
- 協会・組合の見極め
入る・入らないを判断する前に、その団体の評判、トップの人物、実際の活動内容を、じっくり見る。焦って入る必要はありません。
- 同業者との横の繋がり
協会経由ではなく、個人としてのキッチンカー仲間を作る。本音の情報交換ができる相手を、数人で良いので持っておく。
「どこかに登録すれば、自動的に出店場所が降ってくる」という時代は、もう終わっています。
少なくとも、それで食べていける人は、ほんの一部に限られています。
これが、3つ目の現実です。
現実4:商品の飽和と「インスタ映え」の罠
4つ目の現実は、商品レベルでの飽和です。
特に飽和している商品ジャンル
ここ数年、キッチンカーで売られている商品は、ある特定のジャンルに集中する傾向が強くなっています。
地方の感覚で言わせてもらうと、特に飽和しているのはこのあたりです。
- クレープ
- 唐揚げ
- レモネード
- ロングポテト系
- カレー
- タピオカ系の派生ドリンク
私自身、サニーズクレープというクレープのフランチャイズ本部をやっているので、クレープは特に肌で感じています。
参入障壁が低く、原価率が比較的良好で、SNS映えもする。こうした条件が揃った商品ジャンルには、新規参入が集中しやすい。
その結果、同じ会場で同じような商品を売るキッチンカーが何台も並ぶ、という現象が当たり前になりました。
お客様からすれば、「またクレープか」「またレモネードか」となり、食いつきが落ちます。
ターポリン看板で「みんな同じ」になる
商品だけではなく、見た目の同質化も進んでいます。
私がキッチンカーを始めた10年前、車体に大きなターポリン看板を掲げているお店は、そんなに多くありませんでした。
それが今では、ほぼすべてのキッチンカーが、車体側面にどデカいターポリン看板を貼っています。
「目立たせるためにやっている」のは分かります。私もそれ自体は否定しません。
ただ、みんなが同じことをやった結果、「目立たせるための看板」が、逆に「みんな同じに見える壁」になってしまった。
イベント会場にずらっと並ぶキッチンカーを、お客様目線で見てみてください。正直、どの店も似たような看板に、似たような色使い、似たような写真の盛り方で、「結局どこも同じに見える」状態になっています。
その中で、独自のスタイルを出せているお店は、本当に目立ちます。看板がなくても、車体のデザインだけで「あ、あの店だ」と分かる。そういうお店には、行列ができていますし、イベント主催者からも「呼びたい」と思われています。
「インスタ映え」が招いた本末転倒
もう一つの問題が、SNSの影響です。
キッチンカー業界では今、Instagramを運用するのが半ば必須になっています。出店申込の判断材料として、主催者がInstagramのフォロワー数を見ることも珍しくありません。
ひどいところでは、「フォロワーの多い順に選んでいる」という主催者もいるそうです。
そういう状況なので、オーナーの側も、「どうすれば映える写真が撮れるか」を意識するようになります。
その結果、何が起きたか。
- 必要以上に盛りまくった「メガ盛り」メニュー
- 食べきれない量、食べづらい構造
- 派手なトッピングで原型が見えない料理
- カラフルで目立つけど、味のバランスは二の次
商品の本来の魅力──つまり「美味しい」かどうか──よりも、写真映えが優先される。そういう本末転倒が、現場で起きています。
お客様は、ちゃんと見ている
ただ、ここで強調しておきたいのは、お客様は、本当によく見ているということです。
最初は「映える」で買ってもらえても、味が伴わなければ、リピートはありません。
そして、リピートのないキッチンカーは、長くは続きません。
実際、業界で長く続いているオーナーには、共通した特徴があります。
- 商品が「1本」に尖っている
あれもこれもメニューに並べていない。「うちはこれ」という1メニューに徹底的にこだわっている。
- 見た目より、味と素材
写真映えのために装飾を盛るのではなく、素材の良さで勝負している。
- Instagramのフォロワー数が少ない、もしくはやっていないのに繁盛している
これは意外かもしれません。でも、私が見てきた中で、本当に強いオーナーは、Instagramのフォロワー数を競っていません。
「告知すると増えすぎちゃう」「対応できなくなる」という理由で、SNSをあえて控えめにしているオーナーすらいます。
飽和時代に勝つメニュー戦略
これからキッチンカーを始める方、今のメニュー構成を見直したい方に、私から伝えたいのは、シンプルな話です。
メニューを増やさない。
「クレープもやって、ドリンクもやって、唐揚げもやって…」と広げたくなる気持ちは分かります。保険をかけたくなる。
でも、お客様の目には、「全部中途半端な店」に映ります。専門性を感じない。こだわりが伝わらない。結果、「美味しそうに見えない」「買いたいと思わない」となるのです。
逆に、
「うちはこれ1本です」
と言い切れる店は、それだけで商品力が伝わります。
その代わり、その1本に、徹底的にこだわってください。
素材選び、調理工程、提供方法、見せ方、味──妥協せず、磨き続ける。
これは「やりやすい」とも言えます。あれもこれもではなく、1本だから、改善のサイクルを回しやすい。1本だから、原価管理もシンプル。1本だから、お客様にも覚えてもらいやすい。
飽和した時代だからこそ、「広げる」ではなく「尖らせる」。
これが、生き残るためのメニュー戦略です。
現実5:「3ヶ月以内にやめる人」が圧倒的に多い
最後の現実は、開業した後の話です。
「3年以内に廃業する人が多い」という話を聞いたことがあるかもしれません。でも、業界の実情として、私がお伝えしたいのは、もっとシビアな数字です。
やめる人の大半は、3ヶ月以内
私はキッチンカーの縁結びという、中古キッチンカーの売買仲介もやっています。そこには「キッチンカーを売りたい」という連絡が、定期的に入ってきます。
その連絡してくる方々の話を聞いていると、ある傾向がはっきり見えます。
やめる人の大半は、開業から3ヶ月以内です。
中には、ひどいケースだと、1回も稼働せずにやめる人もいます。
「開業した」というより、「開業に至らず終わった」という方が正確かもしれません。
製作会社にキッチンカーを発注して、納車されて、いざ営業を始めようとしたら、
- 出店場所が見つからない
- メニューがうまく形にならない
- そもそも想像していたのと現実が違いすぎる
こうした理由で、ほとんど営業せずに諦めてしまう。そういう人が、本当に多いのです。
なぜ3ヶ月でやめてしまうのか
3ヶ月以内にやめてしまう人の共通点は、シンプルに言えば、
「思ったようにいかなかった時に、立て直せない」
ということです。
- 出店場所が見つからない → 探す術が分からない
- メニューがうまくいかない → 改善の方向性が見えない
- 売上が伸びない → 何を変えればいいか分からない
- お客様が来ない → 立地のせいにして終わる
「うまくいかない」のは、誰でも最初は同じです。キッチンカーで、最初から順調に売上が立つ人は、ほとんどいません。
問題は、その後です。
1年以上続く人と、3ヶ月でやめる人の違い
私が見てきた中で、1年以上続く人には、はっきりした特徴があります。
それは、改善できる人ということです。
うまくいかない時に、「なぜうまくいかないのか」「ここをこう変えてみよう」と考えて、実行できる。
そして、改善した結果が少しでも良くなると、それが面白くなって、また次を試したくなる。
そういうサイクルを回せる人だけが、1年、3年、5年、10年と続いていきます。
逆に、3ヶ月以内にやめてしまう人は、うまくいかない原因を、自分の外側に求めがちです。
「立地が悪い」
「天気が悪い」
「お客様が分かっていない」
「主催者が悪い」
もちろん、外的要因もあります。でも、それを言っているうちは、何も変わりません。
3年以上続く人は、もう「キッチンカーが好き」
そして、3年以上続いている人は、もう次のステージに入っています。
何が違うかと言うと、キッチンカーという仕事そのものが、好きになっているのです。
苦労や大変なことは、もちろんあります。でも、それを上回る面白さや喜びを、自分の中で見つけている。
- お客様の「美味しかった」という言葉
- 商品を改善した手応え
- 新しい場所を開拓できた達成感
- 仲間との出会い
こうした小さな喜びが積み重なって、「この仕事を続けていきたい」という気持ちが固まっていきます。
10年以上続いているオーナーになると、もう完全にキッチンカーに取り憑かれている人たちです。やめる人がほとんどいません。
実際、サニーズクレープの加盟オーナーを見ても、10年以上続けている方が大半で、やめる方が本当に少ないのです。
長く続けてきた人がやめる理由
ちなみに、3年、5年と続けてきた人がやめるケースもあります。
ただ、その理由は、最初の3ヶ月でやめる人とは、まったく違います。
長く続けてきた人がやめる理由は、
- 店舗化(固定店を持つ)
- 結婚、出産による生活の変化
- 引っ越し、住む地域の変化
- 病気や体調の問題
こうした、人生のステージが変わるタイミングです。
つまり、「キッチンカーが嫌になってやめる」のではなく、「次の人生に進むためにやめる」という、前向きな卒業のような形が多い。
これは大きな違いです。
「儲かる」と煽る情報の正体
ここで、なぜ「3ヶ月でやめる人」がこんなに多いのか、その背景を話しておきます。
これからキッチンカーを始めようと、ネットやYouTube、開業セミナーで情報収集すると、驚くほど「儲かる」「成功する」という話ばかりが目に入ります。
理由は明確です。
そのほとんどが、キッチンカー製作会社や開業セミナー業者から発信されている情報だからです。
製作会社は、キッチンカーを購入してもらわないと商売になりません。だから、これからもこのスタンスは変わりません。「リスクが大きい」「失敗する人が多い」という情報を、積極的に発信する動機がないのです。
逆に、現役のキッチンカーオーナーが業界のリアルを語ることは、ほとんどありません。
なぜか。
- 毎日の営業で時間的な余裕がない
- 体力的にも疲れていて発信どころではない
- リアルを伝えても、自分には何もメリットがない
- むしろライバルを増やしてしまう可能性がある
私自身、サニーズクレープのYouTubeで業界のリアルを話していますが、正直、これは少数派の活動です。
その結果、これから始める方に届く情報は、「キッチンカーは儲かる」「自由に働ける」「初期費用も安い」という、華やかな側面ばかりになります。
そして、そういう情報を信じて参入した人が、現実のキッチンカー業界に直面した時、ギャップに耐えられず、3ヶ月でやめてしまう。
これが、業界の実態です。
始める前に、自分に問いかけてほしいこと
これからキッチンカーを始めようとしている方に、お伝えしておきたいことがあります。
開業前に、自分にこう問いかけてみてください。
「うまくいかない時期が、半年続いても、続けられるか」
最初の3ヶ月、半年は、ほぼ間違いなく、想像通りには進みません。
その時期に、
- 自分で原因を考えて、
- 改善策を試して、
- 結果を見て、また考えて、
このサイクルを、淡々と回し続けられるか。
そして何より、それを面白いと思えるか。
「儲かるからやる」のではなく、
「この仕事が好きだからやる」
「自分の料理を直接届けたいからやる」
「お客様に喜んでもらえることがやりがいだからやる」
そう思える人だけが、飽和したこの時代でも、生き残っていけます。
これが、業界20年見てきた人間としての、正直な現実です。
それでも生き残る人がいる──飽和時代を勝ち抜くオーナーの共通点
ここまで5つの現実を見てきました。
正直、明るい話ではありませんでした。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、「キッチンカーは絶対にやめておけ」と言いたいわけではない、ということです。
業界が飽和した今でも、しっかり結果を出して、楽しく続けているオーナーは、たくさんいます。
そして、私が業界20年で見てきて、「この人は続くな」「この人は強いな」と思うオーナーには、共通する特徴があります。
最後に、それをお伝えして、この記事を締めたいと思います。
共通点1:商品が「1本」に尖っている
これは現実4でも触れましたが、改めて。
長く続いているオーナーは、メニューが少ないです。
「うちはこれ1本でやっています」と言い切れる店。その1本に、徹底的にこだわっている店。そういうお店が、強いです。
なんでも屋になると、どの商品にも専門性が感じられず、お客様から「美味しそう」と思われない。
逆に、1本に絞っている店は、お客様が買う前から、「ここはこれが美味しいんだろうな」と期待してくれます。
その代わり、その1本には、妥協なく磨き続ける覚悟が必要です。
共通点2:独自のスタイルを持っている
ターポリン看板で全員が同じに見えてしまう中で、自分だけのスタイルを確立しているお店は、本当に目立ちます。
これは見た目だけの話ではありません。
- 車体のデザイン
- 商品の見せ方
- 接客の雰囲気
- 店主のキャラクター
- 提供方法
こうしたすべてが、「あの店は、あの店らしい」とお客様に認識されている。
そういうお店には、看板に頼らなくても、お客様がついてきます。
共通点3:自分で出店場所を開拓している
これは、これからの時代、ますます重要になる要素です。
マッチングサービスや協会経由の出店だけに頼っていると、登録料、手数料、出店料がこれからも上がり続けます。利益を圧迫されるばかりです。
長く続いているオーナーは、自分で交渉して、自分の場所を開拓しています。
- 商業施設の販促担当に直接アプローチする
- 地域のマルシェ主催者と関係を作る
- 企業の総務部に営業をかける
- 地元の工場や事業所に声をかける
- 住宅地の自治会と繋がる
これは時間がかかります。最初の数年は、断られ続ける覚悟も必要です。
でも、自分で開拓した場所は、中間業者に手数料を取られません。主催者との直接の信頼関係ができます。そして何より、
「あの店がいるから、あそこに行きたい」
と、お客様から指名される存在になれます。
これが、最も強い基盤です。
共通点4:数字に強い
意外と見落とされがちですが、これは本当に重要です。
長く続くオーナーは、数字をしっかり把握しています。
- その日の売上、客数、客単価
- 商品ごとの原価率
- 出店ごとの利益率
- イベント別の収支
- 月次、年次の損益
イベントで18時間働いて、売上は30万円出た。でも実際の利益は数千円しか残っていなかった、というのは、本当によくある話です。
「売上=利益」ではありません。
- 出店料
- 食材原価
- 人件費(自分の時給を含む)
- 燃料費
- ガソリン、移動コスト
- 機材の減価償却
こうしたコストを差し引いて、手元にいくら残ったのかを正確に把握できる人だけが、正しい判断ができます。
そして、数字を見ているからこそ、「このイベントには次から出ない」「この出店料は割に合わない」という判断ができる。
数字を見ていないオーナーは、売上に振り回されて、赤字のイベントに何度も出てしまうのです。
共通点5:改善し続ける力がある
これは現実5でも触れましたが、本質中の本質です。
うまくいかない時に、
- 何が原因か考えられる
- 仮説を立てて試せる
- 結果を見て、次に活かせる
このサイクルを、淡々と回し続けられる人。
3ヶ月、半年、1年、3年と、ずっと改善し続けられる人。
そういう人は、必ず結果を出します。
逆に、「うまくいかない原因」を自分の外側に求める人は、何年やっても伸びません。
共通点6:お客様を本当に大事にしている
長く続くオーナーは、お客様との関係を、本当に大切にしています。
これは「リピーターを作るマーケティング」というレベルの話ではありません。もっと根っこの部分です。
- お客様の顔と名前を覚えている
- 前回来てくれた時の会話を覚えている
- 美味しかったと言ってくれた一言を、心から受け取る
- イベントで出会ったお客様を、本当に嬉しく思う
これは、テクニックでは身につきません。
「キッチンカーが好き」
「お客様に美味しいものを届けたい」
「この仕事をやっていて良かった」
そういう気持ちを、ずっと持ち続けている人だけが、自然にできることです。
共通点7:人間性ができている
最後に、これは身も蓋もない話なのですが、非常に重要なことを言います。
人間としてしっかりしているオーナーは、強いです。
- 約束を守る
- 連絡をきちんと返す
- 仲間に対して誠実
- お客様に対して感謝を忘れない
- 困った時に相談できる関係を持っている
- 自分の機嫌は自分で取れる
こうした基本的なことができている人は、業界の中で自然と信頼を得ていきます。
その信頼が、
- 出店場所の紹介
- 仲間からの情報共有
- リピーターの獲得
- トラブル時の助け合い
すべてに繋がっていきます。
逆に言えば、どれだけ商品が美味しくても、人間性に問題があるオーナーは、業界の中で孤立していきます。そういう人は、長くは続きません。
実際、私が知っているオーナーの中で、Instagramのフォロワー数が少なくても、あるいはInstagramをほとんどやっていなくても、お客様にしっかりついてもらっている人は、たくさんいます。
「告知すると人が増えすぎて対応できなくなる」という理由で、SNSをあえて控えめにしているオーナーすらいるくらいです。
そういうオーナーに共通しているのは、フォロワー数ではなく、人としての魅力です。
これが、最終的には一番強い。
まとめ:結局、生き残るのはどんな人か
7つの共通点を挙げてきましたが、すべてを一言でまとめるなら、こうなります。
「キッチンカーが本当に好きで、商品にこだわり、お客様に喜んでほしいと心から思っている人」
これに尽きます。
副業でちょっとやってみよう、という気持ちでは、正直、本気の人には勝てません。飽和した今の業界では、特にそうです。
でも逆に言えば、
- この仕事が本当に好きで、
- 自分の商品にこだわりを持って、
- お客様の喜ぶ顔を見たくて、
- 改善し続ける覚悟があって、
- 数字もきちんと管理できて、
- 人としても誠実でいられる、
そういう人にとっては、今でも、これからも、キッチンカーは魅力的な仕事です。
決して、飽和=絶望ではありません。
ただ、入る前に、「自分はその覚悟がある人間か」を、冷静に問いかけてほしい。
それが、20年この業界を見てきた私から、これから始める方への、正直なメッセージです。
最後に
長い記事を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を書いた一番の理由は、「キッチンカーは儲かる」という情報ばかりが流れる中で、業界のリアルを正直に伝える人間が、もっといていいと思ったからです。
これからキッチンカーを始めるかどうか迷っている方には、できるだけ正確な現実を知った上で判断してほしい。
すでに開業して苦戦している方には、「自分だけが苦しいわけじゃない」と知ってほしい。
そして、長くこの業界で頑張っているオーナーの方には、「現場の本音を言ってくれてありがとう」と思っていただけたら、書いた甲斐があります。
キッチンカー業界が、これからも本当の意味で健全に発展していきますように。
私も、サニーズクレープの本部として、そしてキッチンカーの縁の下を運営する者として、できることをやっていきます。
それでは、また。
関連記事
開業資金や経営の現実について、さらに踏み込んだ記事もあります。あわせてどうぞ。
*文:キッチンカーの縁の下/滝澤 仁(株式会社セレーノ代表取締役、サニーズクレープ本部)*
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