軽バンタイプのキッチンカーをおすすめしない3つの理由|業界20年以上の本部運営者が語る本音
執筆者: 滝澤仁(たきざわ ひとし)
キッチンカー業界歴20年以上、サニーズクレープ本部運営。これまでに何十台ものキッチンカーオーナーをサポートしてきた経験から、開業を考えている方に向けて本音でお話しします。※本記事は2020年に滝澤が自身のYouTubeで公開した内容を、2026年の業界情勢に合わせて加筆修正したものです。
はじめに
こんにちは、サニーズクレープ本部の滝澤仁です。
最近、縁の下のLINEを通じて「軽バンタイプの移動販売車を購入して開業しようと思うのですが、どうですか?」というご相談が増えてきました。
ここで言う「軽バンタイプの移動販売車」とは、エブリイやサンバーといった軽自動車のバンをベースに、シトロエンマスクやワーゲンマスクといったレトロでかわいいフロントマスクを取り付けた、あのカラフルでポップなキッチンカーのことです。
クレープやカフェのキッチンカーでよく見かけるあのタイプですね。
「比較的安く始められそう」「見た目がかわいくて目を引きそう」という理由で選ばれる方が多いのですが、サニーズクレープではこのタイプを採用していません。
今日はその理由を、現場でずっとキッチンカーに携わってきた一個人の見解としてお話しします。あくまで「滝澤の経験に基づく考え」ですので、判断材料の一つとしてお読みいただければと思います。
結論:軽バンタイプをおすすめしない3つの理由
先に結論をお伝えすると、こんな理由です。
- 体への負担が大きい(座ったまま長時間調理は本当にきつい)
- 作業効率が悪く、提供スピードが遅くなる
- キッチンカーとしての資産価値がほとんどない
ただし、例外的に軽バンタイプが向いている業態もあります。それも後ほど詳しくお話ししますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
それでは1つずつ見ていきましょう。
理由①:体への負担が大きい
これが一番大きな理由です。というか、これが全てと言ってもいいくらいです。
軽バンタイプの車内は基本的に立つことができません。狭い車内で1日中座ったまま調理をすると、私の経験では1日で背中も腰もバキバキになります。
それでも1年、2年と続けている方もいらっしゃいますし、本当にすごいなと思いますが、これから始める方にあえて推奨したいかと言われると、私はおすすめできません。
サニーズでも10年前に試したことがあります
実はサニーズクレープでも、10年ほど前に「どうしても安く開業したい」というオーナーさんのために、サンバーのクラシックタイプをベースにした軽バンタイプの移動販売車を作ったことがあります。
当時の予算で100万円ほど。安くてかわいい、まさに理想の一台でした。
でも結果として、そのオーナーさんは営業を続けることができずにやめてしまいました。
体への負担、作業のしづらさ、思うように売上が伸びないことが重なって、移動販売そのものが嫌いになってしまったんですね。本当に申し訳ない結果になりました。
その経験から、サニーズでは「車内で座ったままでしか調理できない軽バンタイプは採用しない」という方針になりました。
どんな業態なら大丈夫か
「ちょっと試しにイベントで月1回、2時間だけ販売したい」というレベルなら問題ありません。
ですが、スーパーやイベントで朝10時から夕方18時まで、約8時間営業するとなると、クレープのような調理工程が複数あるメニューでは正直かなり厳しいです。
長時間営業をするなら、車内で立って動けることが本当に大事だと、現場を見てきて痛感しています。
理由②:作業効率が悪く、提供スピードが遅くなる
2つ目の理由は、軽バンタイプは構造的に作業効率が悪くなりがちだということです。
クレープを例にお話しすると、移動販売車のレイアウトは「生地を焼くスペース」と「クリームやソースをトッピングするスペース」が物理的に分かれることが多いです。
(中には鉄板の上で直接トッピングするスタイルもありますが、少数派です)
そうすると、生地を焼いた後に体の向きを変えてトッピングするという動作が必要になります。これが座ったままだと本当にやりづらい。立って動ければスムーズな動きが、座っているとぎこちなくなって時間がかかります。
提供スピードは売上を直接左右する
大きなイベントに出店して行列ができても、提供スピードが遅いとさばききれず、機会損失になります。
そして残念ながら、お客様は行列が長くて待ち時間が読めないと、いつまでも待ってはくれません。一定時間並んで進まないと「もういいや」と離れてしまいます。
キッチンカーで売上を作るには「いかに楽に、速く調理できるか」が本当に大事です。
これは私が20年以上現場を見続けて、何度も実感してきたことです。重要なので強調しておきます。
キッチンカーで成功するか失敗するかは、調理導線の設計で決まると言っても過言ではありません。
理由③:キッチンカーとしての資産価値がほとんどない
これは初心者の方には少しわかりにくい話なので、丁寧に説明します。
そもそも軽バンタイプの移動販売車は、車の構造的な改造をほとんどしていません。
そこら辺で売っている軽バンの後部座席・荷室に、仕切り板・給排水タンク・シンク・必要に応じて換気扇を取り付ければ、保健所の営業許可が取れます。
(※注:保健所の営業許可基準は2021年6月の食品衛生法改正で全国共通化されました。本記事執筆当時とは要件が変わっていますので、開業時には必ず最新の基準を最寄りの保健所で確認してください)
自作なら材料費10万円ほど
DIYができる方なら材料費10万円もあれば作れます。
「自分では作れない」という方でも、ネット上にキッチン部分の販売業者がたくさんあって、20〜30万円も出せばシンクや作業台、給排水タンクが揃った十分な作りのキッチンが手に入ります。
(2026年現在は資材価格の上昇で、上記より2割ほど高くなっている印象です。30〜40万円を見ておくと安全です)
じゃあ実際いくらで作れるのか
軽バンタイプの移動販売車一式の費用感をざっくり計算してみます。
| 項目 | 当時の相場 | 2026年の感覚 |
|---|---|---|
| 軽バン中古車本体(エブリイ等) | 50万円 | 60〜100万円 |
| キッチン部分(自作 or 業者依頼) | 20〜30万円 | 30〜40万円 |
| シトロエンマスクキット | 20万円 | 25万円 |
| 全塗装(かわいいカラーリング) | 20万円 | 25万円 |
| 合計 | 約120万円 | 約140〜180万円 |
「こんなに安くて、こんなにかわいいキッチンカーが手に入るなら最高じゃない?」と思うかもしれません。
ですが、ここに売却時の問題があります。
売却時の悲しい現実
事業がうまくいかなくて売却したいとなった時、軽バンタイプの移動販売車の中古はヤフオク等で50〜80万円程度でしか売れないのが現実です。
頑張って高く売れても、新品時の半値以下になります。
注意してほしいフランチャイズ販売
ここからは少しシビアな話ですが、現場で何度も見てきた事実なので書きます。
一部のフランチャイズ本部や販売業者は、こうした軽バンタイプの移動販売車を200〜300万円という金額で販売しています。
「比較的安く始められる」という理由で軽バンタイプから始めた方が、実際にやってみて体への負担と作業効率の悪さに気付き、軽トラ+ボックスタイプ(車内で立てるタイプ)に作り変えようとしても、売却額が安すぎて作り変える資金にもならないというケースをこれまで何十人と見てきました。
結果、軽バンタイプのまま我慢して営業を続け、最終的に「移動販売はつらい、儲からない」というイメージのまま辞めてしまうんです。
これは本当に切ない話で、私が縁の下を立ち上げた理由の一つでもあります。
シトロエンマスク・ワーゲンマスクの車検問題(2026年補足)
もう一つ、今だから言える注意点を加えておきます。
シトロエンマスクやワーゲンマスクは2026年の今でも根強い人気があります。ですが、ちゃんと8ナンバー(特殊用途自動車)への構造変更をせずに取り付けているケースが多く、車検時にトラブルになる事例をよく耳にします。
特に中古で購入する場合は、書類や登録区分をしっかり確認してから買わないと、後々のメンテナンス費用や保険でかなり苦労します。安くてかわいいからと飛びつかず、ちゃんと適切な改造申請がされているかを必ず確認してください。
ただし、軽バンタイプが向いている業態もあります
ここまで否定的な話が続きましたが、軽バンタイプが向いているケースもあります。これは公平にお伝えしておきます。
軽バンタイプがおすすめできる業態の特徴
「調理工程がシンプルで、体の向きを変える必要がない業態」なら、軽バンタイプは十分に活躍できます。
具体的にはこんな業態です。
- 牛串・焼き鳥:グリドルや焼き台で焼くだけのシンプルな業態
- カレー・スープ系:仕込み済みのものを温めて盛るだけ
- エスプレッソ系コーヒー専門店:エスプレッソマシンで抽出して提供
- クラフトビール・ドリンク系:注いで提供するだけ
これらは注文を受けて、お釣りを渡して、そのまま盛り付けて提供するという直線的な動線で完結します。
体の向きを変える必要がなく、お客様との距離も近いので、目の前で調理するシズル感が購買意欲を高める効果もあります。
自作で始めるならアリ
しかも、こうしたシンプルな業態ならキッチンカーを自作してみるのも十分アリです。
ネットで調べれば作り方の情報はたくさんありますし、先ほどの計算通り材料費を抑えれば、かなり安く開業できます。「とにかく安く始めて、まずはやってみたい」という方には、この選択肢は本当におすすめです。
まとめ:キッチンカー選びは「あなたの職場選び」
長くなったので最後にまとめます。
軽バンタイプを避けた方がいい人
- クレープ・たこ焼き・調理工程が複雑なメニューで開業したい
- 1日6時間以上の営業を継続的に行いたい
- 長く本業として続けたい
軽バンタイプでもOKな人
- 焼き鳥・カレー・コーヒーなど、調理工程がシンプルな業態
- まずは試しにイベント中心で月数回出店したい
- 自作が得意で、できるだけ初期費用を抑えたい
大事なメッセージ
移動販売車は、「長時間そこで働くあなたの職場」です。
シトロエンマスクをつける予算があるなら、軽バンタイプではなく、作業効率がきちんと考えられた、しっかり改造されているキッチンカーを選ぶことをおすすめします。なんとなくかわいいから、という理由だけでは選ばないでください。
そして、もし軽バンタイプを既に購入してしまったという方。残念ですが、現状からの改善策は限られています。だからこそ、これからキッチンカーを始める方には勢いに任せず、じっくり時間をかけて勉強・準備してほしいと切に願っています。
開業後はやることが本当に多くて、勉強する時間も精神的余裕もなくなります。事前準備が全てです。
キッチンカー開業の相談は縁の下へ
キッチンカーの開業について「どんな車両を選んだらいいか」「どこに相談すればいいか」迷っている方は、ぜひ縁の下のLINEからお気軽にご相談ください。
製作会社の選び方、業態に合った車両の選び方、出店場所の探し方など、私たちが20年以上の業界経験をもとにアドバイスさせていただきます。相談は完全無料です。
それではまた、別の記事でお会いしましょう。
滝澤仁
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