インフレ時代、キッチンカーを続けたかったら値上げしろ|業界20年が数字で解説する適正価格戦略
こんにちは、サニーズクレープの滝澤です。
今日は、これからの時代、本当に大事な話をします。
インフレ時代に、キッチンカーが生き残る道。
結論から言います。
値上げするしかありません。
「えっ、お客様離れちゃうんじゃない?」「そんなことできないよ」
そう思う方、多いと思います。
でも、これからお見せする数字を見ていただければ、「値上げしないとキッチンカーは続けられない」ということが、論理的にご理解いただけると思います。
これは精神論でも、私の感覚論でもありません。シンプルな算数の話です。
少し長くなりますが、これからキッチンカーを続けていきたい方、今売上が伸び悩んでいる方、必ず最後までお読みください。
5年前、私は「値下げはダメ、絶対」と言った
実は5年前、私はサニーズクレープのYouTubeチャンネルで、「値下げは絶対にダメ」というテーマで動画を公開しました。
当時はコロナ禍の真っ只中。
客足が遠のく中で、「値下げすれば売れるんじゃないか」と考えるオーナーが多くいました。
そんな中、私は数字を使って、「値下げをすると収益は必ず悪化する」ということを、論理的に説明しました。
具体的には、500円のクレープを100円値下げして400円にした場合、お客様を40%増やさないと、元の利益は維持できないというシビアな現実を、数字でお見せしました。
5年経った今、私の考えはもっとシビアになっています。
なぜなら、この5年間で、世の中の状況が完全に変わったからです。
2026年、私たちが直面している現実
過去5年で物価は約12%上昇
総務省統計局の消費者物価指数(CPI)を見ると、コロナ禍前の2020年と比較して、2025年時点で物価は約12%上昇しています。
これは平均値です。キッチンカーが直面している現実は、もっとシビアです。
キッチンカー営業に関わる主要コストの上昇
具体的に、私たちキッチンカー業界で使う原材料や経費は、こうなっています。
| 項目 | コロナ前(2020年)比 | 状況 |
|---|---|---|
| 食用油(業務用) | 2026年6月から17〜21%値上げ | 日清オイリオ等、各社が一斉に発表 |
| マヨネーズ(450g) | 約3.6倍 | 231円→852円(2026年3月時点) |
| キャノーラ油(1L) | 約1.4倍 | 270円→395円 |
| 食パン(1kg) | 約1.25倍 | 411円→524円 |
| 小麦粉(業務用) | 複数回値上げ | 政府売渡価格に連動 |
| ガソリン(レギュラー) | 約1.3〜1.4倍 | 約170円/L(2026年4月時点) |
| 電気・ガス代 | 大幅上昇 | 補助金がなければさらに高い |
| 包材(紙袋・容器) | 約1.2〜1.5倍 | 原油高・物流費上昇 |
特に食用油は、2026年6月から業務用が最大21%値上げ。日清オイリオ、昭和産業、J-オイルミルズと、大手3社が一斉に値上げを発表しています。
これを書いている今(2026年5月)の時点で、既に発表されている値上げです。
バイオ燃料需要、中東情勢、円安、人手不足
なぜここまで値上げが続いているのか。
理由は複数あります。
- 米国でバイオ燃料(植物油)の需要が拡大
- 中東情勢の緊迫化による原油高
- 円安が継続(輸入コスト増)
- 人手不足による人件費・物流費の上昇
これらは短期的に解決する問題ではありません。
つまり、これからもコストは上がり続けます。
2026年のキッチンカー営業の現実
5年前、私はクレープ1枚500円という前提で計算をしました。
そのクレープを作るのに必要な原材料、そして包材。
5年前と比べて、これらの原材料・包材すべてが値上がりしています。
平均すると、原価は約20〜30%上昇していると考えてください。
つまり、5年前は500円で売っていたクレープでも、今は同じ品質を維持するなら、600円以上で売らないと利益が同じだけ残らないんです。
これが現実です。
ここから本題:3パターンを数字で比較
ここから、いよいよ数字を使った解説に入ります。
5年前の動画と同じく、できるだけシンプルな例で説明します。
前提条件
- 商品:クレープ
- 1日の客数:48人
- 月間稼働日:25日
- 月の客数:1,200人
- 原価率:30%(2026年現在の業務用原材料価格ベース)
この前提で、以下の3パターンを比較します。
| パターン | 価格 | 設定理由 |
|---|---|---|
| パターンA(現状維持) | 600円 | 2026年現在の標準価格 |
| パターンB(値下げ) | 500円 | 売れないからと値下げした場合 |
| パターンC(値上げ) | 700円 | インフレに合わせて適正値上げ |
パターンA:現状維持(600円)
まず、現状維持の数字を見てみましょう。
販売価格:600円
1日客数:48人
月間客数:1,200人
月商 = 600円 × 1,200人 = 720,000円(72万円)
原価(原価率30%) = 720,000 × 0.30 = 216,000円
粗利 = 720,000 - 216,000 = 504,000円(50.4万円)
月の粗利:約50.4万円
ここから、
- 出店料(売上の5〜20%)
- 水道光熱費・通信費・保険料・交通費・雑費等(売上の10%程度)
を引いた金額が、月の手取り(営業利益)となります。
売上規模や経費構造によって変わりますが、売上の30〜50%程度が営業利益として残れば、健全な経営と言えるでしょう。
これが現状維持の数字です。
パターンB:値下げ(500円)──5年前の動画と同じ罠
次に、「売れないから値下げしよう」と考えて、500円に値下げした場合を計算してみます。
販売価格:500円(100円の値下げ)
1日客数:48人(客数は変わらないと仮定)
月間客数:1,200人
月商 = 500円 × 1,200人 = 600,000円(60万円)
原価(価格は下げても原価は同じ) = 216,000円
※提供する商品は同じなので、原価は変わらない
粗利 = 600,000 - 216,000 = 384,000円(38.4万円)
月の粗利:38.4万円
現状維持(50.4万円)と比べると、12万円も粗利が減ります。
しかも、原価率が30%から36%に悪化しています。
「100円安くしたんだから、お客様増えるでしょ?」
そう思いますよね。では、お客様が25%増えた場合(48人→60人/日)を計算してみましょう。
販売価格:500円
1日客数:60人(25%増)
月間客数:1,500人
月商 = 500円 × 1,500人 = 750,000円(75万円)
原価(1.5倍に増える) = 270,000円
粗利 = 750,000 - 270,000 = 480,000円(48万円)
月の粗利:48万円
現状維持(50.4万円)と比べると、まだ2.4万円も少ない。
しかも、お客様が25%増えるということは、
- 販売する商品数が25%増える
- 1日の販売労力が増える
- 提供スピードを上げないとさばけない
- 1人のお客様への接客時間は減る
- それでも価格は安いまま
仕込み量や廃棄リスクは大きく変わらなくても、販売現場の労力は確実に増えます。
頑張った結果、利益は減っているんです。
値下げで粗利を維持するには、何%の客数増が必要?
5年前の動画でもお見せした計算ですが、改めて。
500円(値下げ後)で、現状維持の粗利50.4万円を確保するには、
必要な月商 = (50.4万円 + 原価) ÷ 0.7
※ 計算上、客数増に応じて原価も増える
正確には:
必要な客数 = 50.4万円 ÷ (500 - 600×0.30)
= 50.4万円 ÷ (500 - 180)
= 50.4万円 ÷ 320円
= 1,575人
1日あたり = 1,575 ÷ 25日 = 63人
現状の48人から63人へ、約31%の客数増が必要です。
ただし、これは原価が固定の場合の最低ライン。実際には、お客様が増えれば、
- スタッフの疲労
- 提供スピードを上げる必要
などの負担も増えるので、実質的には40%の客数増が必要になると考えてください。
新規のお客様を40%増やす。これがどれだけ大変か、現役オーナーなら身に染みて分かるはずです。
しかも、
- 値下げで安っぽいイメージがついた商品
- 「あの店、安くなった」と認識される
- 一度下げた価格は上げにくい
こうしたデメリットも背負うことになります。
値下げは、5年前も今も、生き残る道ではありません。
パターンC:値上げ(700円)──インフレ時代の正解
では、本題の値上げパターンを見てみましょう。
販売価格:700円(100円の値上げ)
1日客数:48人(変わらない場合)
月間客数:1,200人
月商 = 700円 × 1,200人 = 840,000円(84万円)
原価(価格を上げても原価は同じ) = 216,000円
※同じ材料・同じ品質を維持
粗利 = 840,000 - 216,000 = 624,000円(62.4万円)
月の粗利:62.4万円
現状維持(50.4万円)と比べると、月12万円も粗利が増えます。
そして、原価率は30%から26%に改善します。
「でも、100円値上げしたら、お客様離れちゃうでしょ?」
ここが大事なポイントです。
値上げで客数が減ったらどうなるか
「値上げしたら客が減る」という不安は当然あります。
では、客数が20%減った場合を計算してみましょう。
販売価格:700円
1日客数:38.4人(20%減)
月間客数:960人
月商 = 700円 × 960人 = 672,000円(67.2万円)
原価(客数が減れば、使う材料も減る) = 172,800円
※20%客数減なので、原価も20%減
粗利 = 672,000 - 172,800 = 499,200円(49.9万円)
月の粗利:49.9万円
なんと、現状維持(50.4万円)とほぼ同じです。
つまり、
「値上げで客数が20%減っても、利益はほとんど変わらない」
これが現実です。
しかも、
- 仕込み量は20%減
- 労働時間も短縮
- 廃棄リスクも下がる
- 1人のお客様により丁寧に接客できる
- 商品のクオリティも維持しやすい
つまり、同じ利益を、より楽に、より高い品質で稼げるんです。
値上げで客数が変わらなかったら?
理想的なシナリオですが、これも見ておきましょう。
販売価格:700円
1日客数:48人(変わらない)
月の粗利:62.4万円
月12万円のプラス。年間で144万円のプラスです。
これだけの利益増は、原材料費の上昇分を吸収しつつ、さらに自分の生活も豊かにできる金額です。
3パターンの比較まとめ
| パターン | 価格 | 客数 | 月商 | 原価 | 粗利 | 現状比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A:現状維持 | 600円 | 1,200人 | 72万円 | 21.6万円 | 50.4万円 | ±0 |
| B-1:値下げ・客数同じ | 500円 | 1,200人 | 60万円 | 21.6万円 | 38.4万円 | ▲12万円 |
| B-2:値下げ・客数25%増 | 500円 | 1,500人 | 75万円 | 27万円 | 48万円 | ▲2.4万円 |
| B-3:値下げで現状粗利維持 | 500円 | 1,575人(31%増) | 78.75万円 | 28.4万円 | 50.4万円 | ±0 |
| C-1:値上げ・客数同じ | 700円 | 1,200人 | 84万円 | 21.6万円 | 62.4万円 | +12万円 |
| C-2:値上げ・客数20%減 | 700円 | 960人 | 67.2万円 | 17.3万円 | 49.9万円 | ▲0.5万円 |
この表を、よく見てください。
衝撃的な事実
- 値下げ(B-1)で客数を増やせなかった場合:月-12万円
- 値上げ(C-1)で客数が変わらなかった場合:月+12万円
同じ100円の価格変更でも、上げるか下げるかで、月24万円もの差が生まれるんです。
そして、値上げの場合、客数が20%減ったとしても、利益はほぼ維持できます(C-2)。
逆に値下げの場合、客数を31%以上増やさないと、今と同じ利益は維持できません(B-3)。
新規のお客様を31%増やすのと、既存のお客様の20%が離れる程度で済むのと、どちらが現実的かは、明らかです。
それでも値上げに踏み切れない理由
ここまで読んで、
「理屈は分かった。でも、本当に値上げして大丈夫?」
と思う方、多いと思います。
その不安、よく分かります。私も、何度も経験してきました。
値上げに踏み切れない理由は、だいたい3つです。
理由1:「お客様が離れるかも」という恐怖
これが一番大きい。
ですが、考えてみてください。
今、値上げをしていない外食って、ありますか?
- マクドナルドのバーガー → ここ数年で複数回値上げ
- スターバックスのドリンク → 値上げ
- コンビニのおにぎり → 値上げ
- ファミレスのメニュー → 値上げ
- ラーメン1杯 → 1,000円超えが当たり前に
- 牛丼 → 値上げ
世の中全部、値上げしています。
これは、お客様も分かっています。
「全部高くなってるよね」というのが、今の消費者の感覚です。
その中で、キッチンカーだけが昔の価格のままだったら、むしろ「無理してるな」「品質落としてるんじゃないか」と思われる時代です。
理由2:「自分の商品にそこまでの価値があるか自信がない」
これも、よく聞きます。
5年前の私の動画でも触れましたが、自信のなさは、商品価値の低下に直結します。
逆に言えば、
- 商品にこだわっている
- 良い材料を使っている
- 丁寧に作っている
- お客様に喜んでもらえている
そういう自負があるなら、それは値上げしていい商品です。
価値ある商品を、適正な価格で売る。これは商売の基本です。
理由3:「他のキッチンカーが安いから」
これは間違った比較対象です。
確かに、業務スーパーで仕入れた安い材料で、冷凍食品を温めて出すような営業の仕方なら、500円でクレープを売れます。
でも、それはキッチンカー全体の価値を下げる行為です。
「キッチンカーの料理は、安かろう悪かろう」「コンビニで買った方がマシ」「衛生的にも不安」
そう思われてしまったら、業界全体が衰退します。
業務スーパーで仕入れて高く売る、という商売
実は、業界には今、こういう動きが増えています。
業務スーパーで安い冷凍食品を仕入れて、それをそのまま温めて販売するキッチンカー。
利益率は確かに高い。
でも、これは私の本音として、やめてほしいんです。
理由は明確です。
キッチンカーの価値を下げる
お客様は、キッチンカーに何を期待しているか。
- その場で作る、ライブ感
- ここでしか買えない料理
- オーナーのこだわり、ストーリー
- イベントを楽しむ、ハレの場の演出
これらの価値があるから、コンビニや外食ではなく、キッチンカーで買うんです。
業務スーパーの冷凍食品を温めただけのものを、500円、600円で売っていたら、
「これならコンビニで買った方がいいや」
と思われます。
そうなったら、もうキッチンカーの存在価値はありません。
結果的に自分たちの首を絞める
「キッチンカーって、おいしくないよね」「ただ高いだけだよね」「衛生的に大丈夫?」
こう思われてしまったら、
真面目に良い材料を使って作っているオーナーまで、お客様に選ばれなくなります。
これは、業界全体の問題なんです。
業務スーパー仕入れで安く売る商売の仕方は、短期的には儲かるかもしれません。
でも、5年、10年スパンで見ると、業界全体を衰退させる行為です。
私は業界20年やってきた人間として、「キッチンカーで買う料理は、どこで買ってもおいしい、コスパがいい、本格的」と思ってもらえる業界を、守りたいんです。
比較対象は、キッチンカーだけじゃない
もう一つ、頭に入れておいてほしいことがあります。
お客様にとっての比較対象は、キッチンカーだけではないということです。
お客様が500円のクレープを買おうとしている時、そのお客様の頭の中では、こんな比較が起きています。
| 選択肢 | 価格帯 | 提供価値 |
|---|---|---|
| キッチンカーのクレープ | 500〜700円 | その場で作る、外で食べる楽しさ |
| コンビニのスイーツ | 250〜400円 | 安い、すぐ食べられる、品質安定 |
| カフェのケーキ | 600〜900円 | 座ってゆっくり、空間込みの体験 |
| ファミレスのデザート | 500〜800円 | 食事と一緒に、空間込み |
| ファストフードのスイーツ | 300〜500円 | 安い、すぐ食べられる |
つまり、キッチンカーは「コンビニより上、カフェよりちょっと下」というポジションで戦っています。
このポジションで、
- コンビニ並みの品質
- でもコンビニより高い
これでは、お客様は買いません。
逆に、
- カフェに引けを取らない品質
- カフェよりちょっとだけ手頃な価格
- イベント感、特別感
これがあれば、お客様は買ってくれます。
価値があるものを、適正な価格で売る。
これがキッチンカーの生き残る道です。
場所によって価格は変えていい
ここで、もう一つ大事な話をします。
私は、場所によって価格を変えるのはアリだと考えています。
富士山の上のペットボトル
分かりやすい例を挙げます。
スーパーで売っているペットボトルの水。普通なら80〜100円ですよね。
ところがこれが、富士山の頂上に行くと、500円とか600円で売っています。
これを「ぼったくり」と思う人もいるかもしれません。でも、よく考えてみてください。
- 周りに何もない場所
- そこまで運ぶ手間とコスト
- 選択肢が他にない状況での価値
- 飲める喜び
この条件下では、500円のペットボトルは適正価格なんです。
そして実際に、お客様もそれを納得して買っています。
キッチンカーも同じ考え方ができる
キッチンカーの価格設定も、これと同じです。
周りに飲食店がほとんどない場所で営業するなら、普段より少し高くてもお客様は買ってくれます。
なぜなら、
- 他に選択肢がない
- 移動するのも面倒
- せっかくのイベントだから楽しみたい
- 「ここでしか食べられない」という価値
こういう要素が、価格に反映されるからです。
私が現場でやっていた価格チェック
私は現役で営業していた頃、イベントに出店する時、必ず会場をぐるっと一周していました。
何をチェックしていたか。
他のキッチンカーの販売金額です。
- クレープ類はいくらで売っているか
- ドリンクの相場はどのくらいか
- このイベントに出店している店の価格帯はどうか
これを把握した上で、自分の店の価格を決めていました。
例えば、
- 周りが600円〜700円ばかりなら、自分も同等の価格に
- 周りが安めの設定なら、自分は少し高めにして「品質で勝負」と差別化
- 客層が高めなら、思い切って強気の価格に
価格は、現場で柔軟に変えていいんです。
そのために、価格を変更できる体制を作っておく。
これは経営判断として、本当に大事なことです。
「いつも同じ価格」が正しいとは限らない
「うちは全国どこでも500円!」
これは一見、誠実に見えます。でも、経営的には正しくありません。
なぜなら、
- 都心の高級イベント
- 地方の小さなマルシェ
- 観光地の真ん中
- 学園祭
これらすべてで、お客様の財布の紐の固さも、他店との競争状況も、まったく違います。
場所が違えば、適正価格も変わる。
これを意識していないオーナーは、本来取れた利益を、自分から取らずに帰っているんです。
安く買う工夫は、絶対に必要
「値上げ」と「適正な価格」を強調してきましたが、安く買う工夫は別の話として、絶対に必要です。
ここを混同しないでください。
仕入れを安くする工夫は、
- 業務用問屋の活用
- 産直契約
- 季節のまとめ買い
- 仕込みの効率化
- 廃棄ロスの削減
- 食材のフル活用
など、いくらでもあります。
これは「原価を下げる努力」であって、「商品価値を下げる」こととは別です。
良い材料を、より安く仕入れる。これは商売の基本です。
問題は、「安い材料を使って商品価値を下げる」という発想です。
これをやってはいけない、というのが私のメッセージです。
値上げを成功させる5つのポイント
「よし、値上げしよう」と決めた方に、業界20年で見てきた成功パターンをお伝えします。
1. 商品の価値を一度見直す
値上げの前に、自分の商品が本当に値上げに値するか、冷静に見直してください。
- 材料はこだわっているか
- 手間をかけているか
- お客様に「美味しい」と言ってもらえているか
- ここでしか食べられない要素があるか
もし弱い部分があれば、まずそこを強化する。それから値上げに踏み切る。
2. お客様に丁寧に説明する
値上げの時、何も言わずにこっそり上げるのは最悪です。
おすすめは、
- SNSで「材料の値上げに伴い、〇月から価格を改定します」と告知
- 「品質は守ります」「これからもよろしくお願いします」と感謝を伝える
- できれば、新メニューや改良と合わせて値上げする
「事情を理解してもらった上での値上げ」と「だまし討ちのような値上げ」では、お客様の反応はまったく違います。
3. 同時に商品を改良する
値上げするタイミングで、少しだけ商品をアップグレードするのが効果的です。
- 量を少し増やす
- トッピングを1種類追加する
- 包材をきれいなものに変える
- 新しいメニューを追加する
「値上げしたけど、その分良くなった」という印象を作る。
4. 価値を伝える発信を増やす
値上げした分、自分の商品の価値を発信してください。
- 材料へのこだわり
- 仕込みの様子
- お客様の声
- 商品が完成するまでのストーリー
InstagramやLINEで、こうした発信をすることで、お客様が「これは良い商品なんだ」と認識してくれます。
5. 一度の値上げ幅は10〜20%程度に
100円の値上げで、約16%(600円→700円)の値上げ幅です。
これくらいまでなら、しっかり説明すれば、ほとんどのお客様は受け入れてくれます。
20%を超える値上げは、慎重に。そして、半年〜1年に1回くらいのペースなら、お客様も納得しやすいです。
業界20年の私からのメッセージ
5年前、コロナ禍の中で、私は「値下げするな」と訴えました。
そして2026年の今、私は「値上げしろ」と訴えています。
時代が変わっても、本質は同じです。
価値ある商品を、適正な価格で売る。
これしか、キッチンカーが生き残る道はありません。
物価は、これからも上がり続けます。
そんな中で、
- 自分の商品にこだわりを持って、
- 良い材料を使って、
- お客様に喜んでもらえるものを作って、
- 適正な価格でお売りする。
これができるオーナーだけが、5年後、10年後も、キッチンカーを続けていられます。
逆に、
- 業務スーパーで仕入れた安い材料で、
- 価格だけ安くして、
- 数を捌くことばかり考えている、
そういうオーナーは、必ずどこかで淘汰されます。
なぜなら、
- 物価高で原価がさらに上がる
- 安売り合戦に巻き込まれる
- お客様離れが起きる
- 業界全体の信頼を落とす
こういう負のスパイラルに陥るからです。
お店がなくなることは、お客様を悲しませること
最後に、私が一番伝えたいことをお話しします。
適正な利益を上げて、お店を継続していくこと。
これが、本当に大切なんです。
なぜか。
お店がなくなることは、自分のお店を愛してくれたお客様を悲しませることだからです。
毎週末、楽しみに来てくれていたお客様。「美味しかった」と言ってくれたお客様。イベントで再会を喜んでくれたお客様。
そういう方々のためにも、お店を続けていく責任があります。
- 値下げ合戦に巻き込まれて廃業する。
- 原価を吸収できずに閉店する。
- 無理な営業で体を壊して辞める。
どれも、お客様を悲しませる結果になります。
「いやいや、うちにはそんな常連のお客様、いないよ」
もしそう思うなら、ちょっと厳しいことを言わせてください。
そんなお店なら、もうやめたほうがいいです。
愛してもらえないお店に、続ける価値はありません。
逆に言えば、
「あの店がなくなったら寂しい」と思ってくれるお客様が一人でもいるなら、そのお店は続ける価値があります。
そして続けるためには、適正な価格で売って、適正な利益を出して、体も心も健康でいる必要があります。
そのための値上げです。
最後に
「値上げ」という言葉に、抵抗がある方は多いと思います。
でも、これは自分とお客様、両方を守る行為です。
適正な価格で売ることで、
- 自分の生活が守られる
- 良い材料を使い続けられる
- 商品の品質を維持できる
- お客様にも、ちゃんとしたものを提供できる
- 長く続けていける
そして、業界全体としても、
- キッチンカーへの信頼が守られる
- 「キッチンカー = ちゃんとしている」という認識が定着する
- 新規参入者も適正価格で営業できる
- 業界全体が健全に発展する
値上げは、業界の未来のための行為でもあるんです。
この記事を読んでくださった皆さんに、明日からの営業で、ぜひ価格設定を見直していただきたい。
価値ある商品を、適正な価格で。
これが、業界20年の私から、これからキッチンカーを続けていく皆さんへの、心からのメッセージです。
それでは、また。
関連記事
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参考データ・出典
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(2026年最新)
- 日清オイリオグループ プレスリリース「2026年6月価格改定」
- 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2026年4月)
- エレミニスト「過去5年で物価約12%上昇」(2026年最新データ)
文:キッチンカーの縁の下/滝澤 仁(株式会社セレーノ代表取締役、サニーズクレープ本部)
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