キッチンカーの縁の下
はじめての開業

キッチンカーをローンで買うな:総額120万円の利息と「やめられない地獄」のリアル

「初期投資を抑えるために、キッチンカーはローンで買いましょう」

製作会社や開業支援会社の営業担当からこう勧められて、ローン契約を検討している方へ。

ちょっと待ってください。

業界20年、サニーズクレープFC本部代表として、そして中古キッチンカー仲介サービス「キッチンカーの縁結び」を運営する立場から、はっきり申し上げます。

安易にキッチンカーをローンで買うと、ほぼ確実に苦しみます。

縁結びには、ローン返済中の車両を「もう続けられないから売りたい」と相談してくる方が後を絶ちません。事業がうまくいかず、ローンが返せず、しかし所有権が信販会社にあるから売却もできない——そんな「やめられない地獄」に陥った人を、私は何人も見てきました。

この記事では、キッチンカー業界に蔓延する「ローン購入の罠」について、製作会社が決して語らない裏事情を含めて、徹底的に解説します。

まず結論:本記事の要点

時間がない方のために、この記事の核心を先にお伝えします。

  • キッチンカー販売で使われる信販系オートローンの金利は6〜15%(消費者金融に近い水準)
  • 350万円のキッチンカーを6年・年率10%でローン購入すると、総額470万円・利息だけで120万円支払うことになる
  • 販売店・開業支援会社には、ローン契約で「ローンバック」と呼ばれるバックマージンが入る仕組みがある
  • ローン購入車両の所有権は信販会社にあるため、廃業したくても売却できない
  • 結果、相場より高く買わされた車両のローンだけが残り、やめるにやめられない状態に陥るオーナーが続出している

「ローンを組まないとキッチンカーが買えない人」は、そもそも商売を始めるべきではない、というのが業界20年の私の本音です。

ローンを組まないと買えない人は、商売をすべきではない

少し厳しい話から始めます。

私は、自己資金が貯まっていない状態でキッチンカーを始めようとしている人に、「やめておいたほうがいい」と伝えています。なぜなら、自己資金が貯まっていない人は、お金を貯める体質になっていないからです。

商売の基本は、収入より支出を少なくすることです。これは個人の家計と全く同じ。日々の生活で「収入から少しでも残す」ことができない人が、商売を始めた途端にお金を残せるようになる、ということはありません。

「今は借金もあって生活が苦しい。だからキッチンカーで一発逆転したい」

その気持ちは痛いほどわかります。しかし、何度でも言わせてください。キッチンカーは誰でも簡単に楽に稼げる商売ではありません。1年で約半数が廃業し、3年後に生き残っているのは3割と言われる、極めて厳しい世界です。

「キッチンカーは儲かる」「需要がある」という言葉に乗せられる時代は終わりました。これからキッチンカーを始める方は、しっかり準備し、勉強し、自分の頭で考えてチャレンジしてほしい。それが私の願いです。

キッチンカーで使われるローンの正体

ここから本題です。まず、キッチンカー購入で使われるローンの仕組みを説明します。

銀行系マイカーローンは使えない

キッチンカーは「事業用車両」になるため、銀行のマイカーローンは基本的に使えません。マイカーローンは個人の自家用車向けの商品だからです。

そこで登場するのが、販売店と提携している信販系オートローンです。

代表的な信販会社:

  • オリコ
  • アプラス
  • ジャックス
  • セゾン

これらの信販会社のオートローンが、キッチンカー購入時によく勧められます。

なぜ販売店はローンを勧めるのか

仕組みはこうです:

  1. キッチンカーオーナー(購入者)が信販系オートローンに申し込み
  2. 審査が通ると、信販会社から販売店に車両代金が一括で支払われる
  3. オーナーは信販会社に分割で返済していく

この流れの中で、関係者全員にメリットがあります。

  • 販売店:車両代金を一括で受け取れる(リスクゼロ)
  • オーナー:月々の負担が少なく感じる(本当は高額な総額を払うのに)
  • 信販会社:高い金利を収益にできる

一見、Win-Win-Winに見えますね。しかし、この「月々の負担は少ない」というイメージに乗せられて、高額・長期のローンを組んでしまう人が後を絶たないのです。気づいたときには、もう手遅れです。

信販系オートローンの金利は、消費者金融に近い水準

問題は、信販系オートローンの金利の高さにあります。

各種ローンの金利比較

主要な金融商品の金利を比較してみましょう。

プラスの利率(お金を生むもの)

商品 利回り
銀行普通預金 0.001%
個人向け国債 0.05%
全世界株式インデックス投資信託 5〜7%
不動産投資(アパート経営等) 3〜10%
自己投資 10%以上(上限なし)

マイナスの利率(支払うもの)

商品 金利
住宅ローン 0.5〜1%
政策金融公庫・銀行融資 1〜2%
銀行系各種ローン 3〜5%
信販系オートローン 6〜15%
クレジットカードキャッシング・リボ払い 15〜18%
消費者金融 15〜18%(上限20%)

注目してほしいのは、信販系オートローンが6〜15%という、消費者金融に近い水準だということ。住宅ローンの10倍以上、政策金融公庫の10倍前後の金利です。

1〜2%の住宅ローン金利との違い

「住宅ローンと比べてもたかが数%の差でしょ?」と思う方もいるかもしれません。しかし、このたった数%の差が、最終的に何百万円もの差になって返ってきます

具体的にシミュレーションしてみましょう。

350万円のキッチンカーを6年ローンで買うと、総額470万円

実際の数字を見てみます。

シミュレーション条件

大手キッチンカー製作会社のローンプランをベースに計算します。

  • 車両価格:350万円(新車)
  • 頭金:0円
  • 月々の返済:70,000円
  • 返済期間:72回(6年)
  • 実質年率:10%
  • 返済方式:元利均等返済

計算結果

  • 元金:350万円
  • 利息合計120万円
  • 総返済額470万円

なんと、車両価格に対して120万円も余分に利息を支払うことになります。月々7万円の返済は確かに「払えそう」に見えますが、6年間払い続けた総額は470万円。これがローン購入の現実です。

もし350万円が手元にあったら

逆に、350万円の自己資金がある人が、これを全世界株式インデックス投資信託に5%の複利で運用したらどうなるか。

  • 6年後:470万円
  • 増加額120万円

つまり、

  • ローンで買う人:6年でマイナス120万円
  • 自己資金で買う人:6年でプラス120万円

その差は240万円です。

「お金を持っている人」と「お金がない人」の差が、ますます開いていく仕組み。これがローンの本質です。

製作会社が絶対に語らない「ローンバック」の裏事情

ここからは、製作会社や開業支援会社が決して表で語らない裏事情をお話しします。

「ローンバック(バックマージン)」と呼ばれる仕組みをご存知でしょうか。

ローンバックとは

これは、信販会社から販売店・開業支援会社に支払われるバックマージンのことです。

  • 販売店が信販会社のローン契約を取ってくる
  • 信販会社は「ありがとう」のお礼として、販売店にマージンを支払う
  • マージンの割合は提携内容により様々だが、金利の約半分がローンバックされるケースもある

つまり、販売店は車両を売る利益に加えて、ローン契約を取るだけで数十万円の追加報酬を得られる仕組みになっているのです。

なぜ「ローンを勧める」のか、これでわかる

考えてみてください。

販売店が「初期投資を抑えるためにローンで買いましょう」と熱心に勧めてくる本当の理由——それは、お客様のためではなく、ローン契約1件で数十万円のバックマージンが入るからです。

これがローンバックの実態です。決して綺麗事ではありません。

もちろん、すべての販売店がこのような姿勢で営業しているわけではありません。誠実な業者もたくさんあります。しかし、「ローンで安く始められる」という営業文句の裏には、こういう仕組みがあるということは、知っておくべきです。

ローン購入車両は「所有権が信販会社」という事実

ローンの落とし穴は金利だけではありません。もう一つ、決定的に重要な事実があります。

車検証を見れば分かる「本当の所有者」

ローンで分割購入した車両の車検証を見ると、こう書いてあります。

  • 所有者:信販会社(オリコ、アプラス等)
  • 使用者:キッチンカーオーナー

つまり、ローン完済までの間、車両の所有権は信販会社にあるのです。

これは決して悪い仕組みではありません。返済が滞ったときに信販会社が担保として車両を確保するため。当然のことです。

しかし、これが「やめられない」を生む

問題は、事業がうまくいかなかったときに起きます。

縁結びには、こんな相談が頻繁に寄せられます。

「キッチンカーをローンで買ったが、思うように売れない。ローンの返済も苦しいので、車両を売却して廃業したい」

私もなんとか力になりたいと思って、車検証の写真を送ってもらうのですが、所有者の欄を見ると——信販会社の名前になっている。

この状態だと:

  • ローンを完済しないと名義変更できない(=売却できない)
  • 売却するには残債を一括返済する必要がある
  • でも、お金がないからローンを組んでいた人が、一括返済できるはずがない

結果、事業はやめたい、でもキッチンカーは売れない、だから事業を続けるしかないという、地獄のような状態に陥ります。

しかも、相場より高く買わされている現実

さらに残念な事実をお伝えします。

ローンで購入された車両の多くは、私の目から見て相場より高く売られているケースが多いのです。

  • 本来なら200万円程度で作れる車両を、300〜400万円で販売
  • それを長期ローンにして、総支払額が450〜500万円
  • 仮に150万円で売却できたとしても、300万円の借金だけが残る

これは、極端な話ではありません。実際に起きていることです。

それでも「ローンで買いたい」あなたへ

ここまで読んで、「じゃあキッチンカーは諦めるしかないのか」と思った方もいるでしょう。

そんなことはありません。

ローンが「悪」なのではない

私はローンや借金そのものが悪だとは思っていません。むしろ、ローンを賢く使って事業を加速させるプロの経営者もたくさんいます。

例えば:

  • 住宅ローン(0.5〜1%)で家を買って、それより高い利回りの不動産投資に回す
  • 政策金融公庫(1〜2%)で融資を受けて、利益率の高い事業に投下する

これらは、金利を上回るリターンを出せる経営力がある人にとって、賢い選択です。

ただし、こういう人は、そもそも信販系オートローン(6〜15%)を使いません。なぜなら、もっと安い金利で借りられるからです。

キッチンカーで「使ってもいいローン」

もしキッチンカー開業のために融資を受けるなら、私がおすすめするのは以下です。

  • 日本政策金融公庫(利率1〜2%程度)
    • 創業支援融資制度がある
    • 事業計画書をしっかり作る必要があるが、その分、勉強になる
  • 地元の信用金庫・銀行融資(利率3〜5%程度)
    • 地域に根ざした金融機関との関係構築にもなる

これらは「安い金利でお金を調達して、それ以上の利益を出す」という、経営の正しい使い方です。

信販系オートローンを使ってはいけない理由

信販系オートローン(6〜15%)を使うのは:

  • お金がない人
  • 若い人(金融知識がまだ少ない)
  • 金融リテラシー・情報リテラシーが不足している人

これらの人が、最も金利の高い借り方をしている——それが業界の現実です。

キッチンカーをやりたい若者へ:夢の叶え方

では、お金がない若者は、キッチンカーの夢を諦めるしかないのでしょうか。

そうではありません。

自己資金を貯めることから始める

私自身、お店を始める前はお金がありませんでした。だから、こうやって貯めました。

  • 無駄な支出を一切止める
  • 収入を最大化する(本業+副業など)
  • 体力の限界まで働く

地道で、決して楽な道ではありません。しかし、自分が汗水垂らして貯めたお金で買うキッチンカーは、絶対に粗末に扱えません。

  • どんなキッチンカーにすべきか、慎重に検討する
  • 中古車両も含めて選択肢を広げる
  • 自分の頭で考え、勉強する

自分の血と汗で稼いだお金は、自分を慎重で賢明な経営者にしてくれます。

中古キッチンカーで初期投資を半額以下に

新車のキッチンカーを350万円でローンで買うのではなく、中古で150万円のキッチンカーを自己資金で買う、という選択肢があります。

私が運営するキッチンカー縁結びでは、引退するオーナーから直接、中古キッチンカーを買うことができます。

  • 業者を介さないので価格が抑えられる
  • 既存のオーナーから直接買えば、運営ノウハウも一緒に引き継げることがある
  • ローンを組まずに自己資金で買える価格帯の車両も多い

新車にこだわらなければ、初期投資を半分以下に抑えることは十分可能です。

まとめ:時間を買うか、自分を磨くか

最後に、もう一度整理します。

キッチンカーローンの真実

  • 信販系オートローンの金利は6〜15%(消費者金融並み)
  • 350万円・6年・年率10%なら、総額470万円・利息120万円
  • 販売店にはローンバック(バックマージン)が入る仕組みがある
  • ローン購入車両は所有権が信販会社にあり、勝手に売却できない
  • 廃業してもローンだけが残る地獄に陥るオーナーが続出している

ローンが必ずしも悪ではない

  • 政策金融公庫(1〜2%)など、安い金利の融資は積極的に活用してもOK
  • 「金利以上のリターンを出せる経営力」がある人にとっては、ローンは武器になる
  • ただし、信販系オートローン(6〜15%)を使う人は、ほぼ確実にその経営力を持っていない

時間とお金、どちらを取るか

  • ローンは時間を買う代わりに、お金を失う仕組み
  • 自己資金は時間がかかるが、お金が増える仕組み
  • 急いで始めて失敗するより、3年遅れて始めて成功するほうが、人生は豊かになります

キッチンカーは楽しくてやりがいのある仕事です。真面目に商売に取り組めば、必ず結果につながります。

でも、最初の一歩を間違えてはいけません。安易なローンが、その夢の足かせになるのです。

これからキッチンカーを始める方には、ぜひこの記事を心の片隅に置いておいてほしい。そして、もしあなたの周りに「ローンでキッチンカーを買おう」としている人がいたら、ぜひ教えてあげてください。

夢は逃げません。一歩ずつ、着実に進んでいけば、必ずたどり着けます。


この記事の元動画はこちら

【YouTube】キッチンカーをローンで買うな | サニーズクレープ

文字では伝わりきらない部分も、動画なら表情・声色も含めてお伝えしています。よろしければあわせてご覧ください。

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筆者:滝澤 仁(キッチンカーの縁の下 代表)

キッチンカー業界20年。株式会社セレーノ代表取締役、サニーズクレープ本部としてFC33店舗を全国展開。フードトラック ザ・シーズン、キッチンカー縁結び、キッチンカーの縁の下を運営。

「個人が好きなことを仕事にして、人生を豊かにする」をミッションに、これからキッチンカーを始める方の現実的な開業相談を、LINEで受け付けています。

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