キッチンカーの給水タンク 40L・80L・200Lの違いと選び方|建前と現場のリアル
「キッチンカーを始めたいけど、給水タンクは何リットルにすればいいんだろう?」
開業準備の中で、地味だけど非常に重要なのが給水タンクの容量選びです。容量を間違えると保健所の営業許可が下りない。逆に、必要以上に大きいと車内スペースが圧迫され、運転にも支障が出ます。
この記事では、これからキッチンカーを始める方に向けて、給水タンクの基本ルール(40L・80L・200Lの違い)と、現場のリアルな話を整理します。正直に書きますが、最終的にはお住まいの管轄の保健所と、ベテラン事業者・経験豊富な製作会社に必ず相談してください。給水タンクは「ネットの情報だけで決められないテーマ」だからです。
📚 キッチンカー開業の全体像はこちら
結論:容量は保健所に電話で聞く。これが正解。
最初に、いちばん大事なことを書きます。
給水タンクの容量は、必ず申請予定の管轄の保健所に電話で確認してから決めてください。
「クレープなら80L、コーヒーなら40L」という一般的な目安はあります。でも、同じクレープでも保健所によって40Lで通る場合と、80Lが必要な場合があります。私たちサニーズでも、加盟オーナーの地域によって、40Lで許可が下りた店舗と80Lが必要と言われた店舗の両方があります。
ネットの情報は参考にはなりますが、最終的に許可を出すのは管轄の保健所です。「あのサイトに40Lで大丈夫と書いてあった」は通用しません。電話一本で済む話なので、必ず事前に確認してください。
これが、この記事でいちばん伝えたいことです。
2021年6月の法改正で「40L・80L・200L」の3区分に統一
少し制度の背景を整理します。
以前は自治体ごとにバラバラだった給排水タンクの容量基準が、2021年6月の改正食品衛生法施行で「40L程度」「80L程度」「200L程度」の3区分に全国統一されました。
これは大きな進歩です。以前は「東京は18L以上」「ある県は40L以上」と地域差が大きく、引っ越しや出店地域の拡大で再申請が必要になるなど、事業者は混乱していました。
3区分に統一された現在、それぞれの容量で何が許可されるかの一般的な目安は以下の通りです。
| タンク容量 | 提供品目 | 調理工程 | 仕込み |
|---|---|---|---|
| 40L程度 | 1品目 | 1工程 | 不可 |
| 80L程度 | 数品目 | 約2工程 | 不可 |
| 200L程度 | 制限なし | 複数工程OK | 可(条件次第) |
ただし繰り返しますが、これはあくまで一般的な目安です。実際の判定は、メニュー内容・調理工程・仕込み場所の有無・食器の種類など、複数の要素を総合して、保健所が個別に判断します。
40L:簡易調理向け(コーヒー・かき氷・ドリンク・既製品の温め直し)
許可される範囲
提供できるメニューは原則として1品目、1工程の簡易な調理に限られます。
具体的には、
- ドリンク類(コーヒー、ジュース、レモネード)
- かき氷
- 既製品の温め直し(中華まん、フライドポテト等)
- 揚げ物(冷凍ポテト等を揚げるだけ)
- 焼き物(焼き鳥、グリドル系)
「車内で生鮮食材を切る・調理する」のはできません。仕込みは原則として別の場所で済ませて、車内では仕上げの加熱や盛り付けだけ、というスタイルになります。ただし、仕込み場として認められるのは「営業許可を取得してある調理場」です。自宅のキッチンは原則として仕込み場として認められないので、営業許可を取得した別の調理場(シェアキッチン等)を確保する必要があります。
メリット
- 車内スペースを最大限に確保できる
- タンク容量が小さく軽いので、運転負担も少ない
- 給水・排水の作業も短時間で済む
デメリット
- メニューの幅が極端に狭くなる
- 「車内で野菜を切る」「お皿を洗う」など、現場で発生する一般的な作業ができない
80L:標準的な軽食向け(クレープ・サンドイッチ・たい焼き等)
許可される範囲
複数の品目、約2工程までの調理が可能です。実際にいちばん多く採用されている容量です。
具体的には、
- クレープ(生地を焼く+トッピング)
- サンドイッチ
- たい焼き、たこ焼き
- 軽めの定食的メニュー
- ホットドッグ
メリット
- メニューの幅が一気に広がる
- 80Lタンクでもサイズ感は扱いやすく、現場のキッチンカーオーナーから最も多く選ばれている
- 軽トラサイズのキッチンカーでも積載できる現実的なサイズ
デメリット
- 40Lより重く、車内スペースもやや圧迫する
- 「車内で野菜を切る」のような本格的な仕込みは原則不可
200L:本格調理・仕込みOK(ラーメン・カレー・ケバブ等)
許可される範囲
調理工程・品目数に制限がほぼなく、車内での仕込みも条件付きで可能になります。
具体的には、
- ラーメン、うどん、そばなど大量の水を使うメニュー
- カレー、シチュー
- ケバブ(生肉の取り扱いを含む本格調理)
- 多品目の本格的な料理
- 使い捨てでない食器の使用も可能になる場合あり
メリット
- メニューに制限がほぼなくなる
- 仕込みが車内で完結すれば、別途仕込み場を確保する必要がなくなる(都道府県によりますが)
デメリット
これが現実的に重要なポイントです。
- 車内スペースを大きく圧迫する(200L=200kgが基本)
- 給水・排水に時間がかかる
- 満タンに給水すると、軽トラサイズでは最大積載量を超えるリスクがある
- 重量が増えて運転も難しくなる(加速悪化、ブレーキ距離増、横風の影響増)
このデメリットは、軽トラサイズのキッチンカーで200Lを積もうとする方は、必ず理解しておいてください。詳しくは軽トラ開業の記事も参照してください。
容量選びの基本的な考え方
商材別の一般的な目安はこんな感じです。
| 商材 | 目安となる容量 |
|---|---|
| コーヒー、ドリンク、かき氷 | 40L |
| クレープ、たこ焼き、サンドイッチ | 80L |
| ラーメン、カレー、ケバブ、本格定食 | 200L |
ただしこれも目安です。同じクレープでも、提供スタイル(冷たいトッピングを使うかどうか、食器を洗うかどうかなど)で保健所の判断が変わることがあります。
繰り返しになりますが、自分の管轄の保健所に電話で確認してください。これが何より確実です。
ここから先は「現場のノウハウ」の領域
ここまでは、ネットで調べれば誰でも書ける「建前」の話です。
正直にお伝えします。給水タンクの実際の運用は、ネット上にはほとんど書かれていないノウハウの領域です。たとえば、
- 200Lのタンク容量を確保しながら、車内スペースを最大限残す配置方法
- 給水・排水を効率化する工夫
- 重量を分散させて運転負担を軽減する設計
- 排水溝の上に停車して排水するなど、立地を活かした運用
これらは、私たちのような長年現場に立ってきたベテラン事業者と、ノウハウを持つ製作会社が、口伝で蓄積してきた知恵です。私もここに全部書けるほどの整理ができているわけではありませんし、書いてしまうと逆に「正解の押しつけ」になってしまいます。
なので、ここから先は3つのアプローチをおすすめします。
ひとつ:ノウハウのある製作会社に相談する
経験豊富なキッチンカー製作会社は、商材ごとの容量選び、スペース設計、運用面の工夫まで含めて提案してくれます。「200Lタンクを積みたいけど軽トラサイズで作りたい」のような相談にも、現実的な解を出せる会社があります。
ただし、製作会社の質はピンキリです。詳しくは製作会社の選び方記事で書きました。最低3社の相見積もりは、給水タンクの運用相談の質を比べるうえでも有効です。
ふたつ:ベテラン事業者に話を聞く
イベントなどで同業者と顔見知りになったら、給水タンクの運用について素直に質問してみてください。多くの方は親切に教えてくれます。「現場で何リットルを積んで、どう運用しているか」は、ネットに書かれていない本物の情報です。
みっつ:小さく始めて、必要なら大きくする(難しい場合もある)
完璧な容量選びを最初からするのは難しいです。「もし容量が足りなかったら困る」と心配で200Lを積むよりも、まず自分のメニュー構成で必要な最小限の容量で始めて、運用しながら判断するほうが現実的なケースも多いです。
ただし、後から容量を変えるには車両改造が必要になり、コストもかかります。最初の設計時に「先のメニュー展開」まで見据えて、製作会社と相談するのがベストです。
給水と排水の運用:衛生面の重要ポイント
最後に、運用面で必ず知っておいてほしい衛生上のポイントを書きます。
自宅で給水・排水するのが基本
出店場所で給水・排水ができるケースは、ほぼないと思ってください。自宅にホースで給水できる蛇口と、排水できるポイント(排水溝の上に停車できる場所)を確保するのが基本です。
これは開業前に意外と見落とされがちなポイントです。マンション住まいで自宅の駐車スペースに給水・排水設備がない場合、毎日の運用が非常に大変になります。自宅環境が向いていない場合は、別途、給排水できる仕込み場や月極駐車場を確保する必要が出てきます。
排水タンクは数日で匂う
給水タンクは清水(きれいな水)なので汚れにくいですが、排水タンクは数日放置すると匂います。営業終了後はできるだけ早めに排水・洗浄してください。これを怠ると、衛生面で大きなリスクになります。
給水タンクの密閉性が食中毒予防の基本
給水タンクの密閉性が確保されていないと、外部から雑菌が入って汚染される可能性があります。これは見落としがちですが、給水タンクの汚染が食中毒の原因になることもあるので、給水時の密閉性、洗浄の頻度、タンクの材質には注意してください。
衛生面を軽視すると、PL保険を使う事態(食中毒の賠償)になりかねません。詳しくは保険の記事も参照してください。
まとめ:建前と本音の両方を知ったうえで判断する
要点を振り返ります。
- 給水タンクの容量は、必ず管轄の保健所に電話で確認してから決める
- 2021年6月の法改正で40L・80L・200Lの3区分に統一された
- 40L=簡易調理、80L=軽食(最も採用が多い)、200L=本格調理+仕込み可能
- 200Lタンクは車内スペースと重量に大きく影響する。軽トラサイズだと現実的な制約がある
- 実際の運用は、ベテラン事業者・経験豊富な製作会社のノウハウ領域。建前だけで判断せず、必ず複数の専門家に相談する
- 給水・排水は基本的に自宅で行う。衛生管理(密閉性・洗浄・排水の頻度)は食中毒予防の基本
給水タンクは、保健所の申請書類の数字だけで決められるものではありません。実際の運用、衛生管理、車内スペース、運転負担、そして将来のメニュー展開——これら全部を考えて、自分にとって最適な容量を選んでください。
そして、迷ったらネットの情報を鵜呑みにせず、保健所・ベテラン事業者・製作会社の3者に相談すること。これが、後悔しない給水タンク選びの王道です。
※本記事の情報は2026年6月時点のものです。法改正や各自治体の運用変更により内容が変わる可能性があるため、最新情報は必ず管轄の保健所にご確認ください。
縁の下では、全国の出店募集を/offers/で毎日更新しています。キッチンカー登録(無料)をすると、主催者からの依頼時に運営が条件に合う事業者をご紹介します。ブログ更新や業界情報もLINEでお届けします。
キッチンカー登録(無料)