キッチンカーの縁の下

キッチンカーの出店料5万円は返ってくるのか|琵琶湖三市同時花火大会と、出店前に確認すべき8つのこと

2026年8月22日に予定されていた「琵琶湖三市同時花火大会」が、開催13日前に中止となりました。

出店予定は約240店舗。出店料は1店舗あたり5万円。

実際に支払ったキッチンカーや飲食店が、今も返金を待っている状況です。

この記事では、何が起きたのかを整理したうえで、キッチンカー事業者が出店料を払う前に、自分で確認できる方法をまとめます。

事件そのものより、そちらのほうが皆さんの役に立つと考えているからです。


1. 何が起きたのか

まず、確認できている事実を時系列で整理します。

2025年12月

イベントが告知される。滋賀県の長浜・彦根・高島の3市で、計1万発以上の花火を同時に打ち上げるという内容。

2026年1月〜

6,000円〜19,000円の全席指定の有料観覧席が販売開始。同時に、出店者の募集も始まる。

出店条件は、3市合わせて約240店舗を想定、出店料は1店舗5万円、さらに売上の10%が歩合。花火終了後も飲食ブースを続ける「ナイトマーケット」構想も示されていました。

240店舗から5万円ずつ集まれば、出店料だけで1,200万円規模になります。

2026年8月6日

長浜・彦根・高島の3市が、それぞれ公式サイトで「市が主催・共催するイベントではない」と注意喚起。開催直前になっても詳細が明らかにされず、3市に問い合わせが殺到したためです。

その後の報道で、琵琶湖での開催に必要な河川法にもとづく県への許可申請などが行われていなかったことも明らかになりました。

2026年8月9日

実行委員会が中止を発表。「開催日までに実施に必要な準備・運営体制を整えることが困難と判断した」という説明でした。延期も振替もなく、今後の開催予定もないとされています。

2026年8月22日

本来の開催予定日。花火は上がりませんでした。


出店した側の損失

実際に出店料5万円を支払った飲食店の方が、取材にこう答えています。

インスタグラムで出店者募集を見つけ、DMで申し込んで5万円を振り込んだ。その後、半年近く具体的な連絡がなかった。

通常なら遅くとも1ヶ月前には行われる出店者向けの説明会が、実施されたのは開催20日前。搬入経路やメニュー、数量といった、本来なら細かく連絡が来る事項もほとんど伝えられなかった。

さらに、保健所への手続きを進める中で、保健所から花火大会の「存在を知らない」と言われたといいます。

中止も、主催者からの直接連絡ではなくインスタグラムで知ったとのことです。

損失は、出店料だけではありません。仕入れた材料、空けた予定、準備にかけた時間。50万円以上になる可能性があると話しています。


2. 返金はどうなっているのか

2026年8月20日、実行委員会が公式SNSを更新しました。

チケット購入者や出店者に向けて、「返金対応を前提として、返金の対象範囲、方法、時期、手続その他必要な事項について、法務・会計面を含めた確認・協議を進めております」と説明しています。

一方で、現時点では具体的な返金方法や実施時期、対象範囲について最終的な決定には至っていないとしています。

また、SNS上で「返金を行わないのではないか」という見方が広がっていることについては、「当実行委員会として返金を行わないとの方針を決定した事実はございません」と否定しました。

正式な発表まで時間を要している点については「重く受け止めている」としています。

ただし、本来の開催日である8月22日の時点でも、購入者への具体的な返金連絡は届いていないと報じられています。

つまり現在は、「返金する姿勢は示されたが、いつ・いくら・誰にかは決まっていない」という状態です。


3. これは詐欺なのか

SNSでは「詐欺だ」という声が非常に多く上がっています。

当メディアがこの件について発信した投稿にも、たくさんのコメントをいただきました。断定する声が目立つ一方で、印象に残った言葉があります。

キッチンカーにも座席予約した人にもお金を返したら、ただの企画倒れ。返せなかったら詐欺

これ、法的にも実務的にも、かなり正確な線引きだと思います。

断定できない理由

疑わしい点は、たしかに山ほどあります。

3市も消防も警察も、開催1ヶ月前の時点で実施を把握していなかった。花火に必要な火薬類の申請も、河川法にもとづく許可申請も確認できなかった。地元紙が花火業者・会場・許認可・警備体制などを質問しても、具体的な回答は示されなかった。

一方で、こういう事実もあります。

実行委員会の代表者は実名で公表されていました。しかもその人物は、2026年5月に滋賀県の教育委員会の公式サイトで、地元高校の活動を支援した人物として紹介されています。前年の冬には、市役所に企画の説明にも訪れていました。

「適当な名前で偽サイトを作り、チケットだけ売って消える」という典型的な架空イベント型の詐欺とは、明らかに様子が違います。

考えられるのは、経験も資金も人手も足りない体制で大規模なイベントを企画してしまい、告知とチケット販売だけが先行して、会場・花火業者・許認可・警備といった実務が追いつかずに破綻した、という可能性です。

いわゆる「企画倒れ」です。

それでも問われること

ただし企画倒れだったとしても、問題が消えるわけではありません。

一番重要なのは、「いつの時点で、開催できないと分かっていたのか」です。

無理だと判断した後もチケットと出店枠を売り続けていたなら、話はまったく変わってきます。

そして、それは外からは分かりません。

当メディアの立場

正直に書きます。

私は、実態としては詐欺に近いものだったと思っています。

ただ、返金対応を前提とした協議が表明された以上、「詐欺だ」と断言することはできません。

コメント欄で、同じような事例を知っているという方から、こんな話も寄せられました。ある地域でイベントの協賛金を集めておきながら会場使用許可を取り下げ、仮設機材も音響も警備も手配していなかった。チケットは払い戻したが協賛金は返さず、詐欺で告訴されたものの不起訴処分になった、というものです。

個人の証言なので事実確認はできていませんが、詐欺の立証は簡単ではないというのは、現実としてその通りです。

だからこそ、私たちが持つべき結論はこうなります。

外からは、詐欺かどうか判断できない。だったら、払う前に自分で確かめるしかない。


4. ニュースにならない被害のほうが、ずっと多い

ここからが本題です。

今回の件は規模が大きかったからニュースになりました。240店舗、1,200万円規模、有料観覧席まであった。だから全国で報道されています。

でも、小規模なら、他にもあるんです。

数店舗、十数店舗のイベントが消えても、ニュースにはなりません。泣き寝入りで終わります。

そして実際にキッチンカーをやっていると、ニュースにならない「グレーな話」のほうが、はるかに多いのが実感です。

いくつか挙げます。

買取の案件で、話が消えていた

出店の準備を進めていたのに、直前になっても連絡が来ない。こちらから電話したら、いつの間にか話がなくなっていた。広告代理店が間に入っていたケースです。

当日行ったら、出店台数が倍になっていた

打ち合わせで台数を聞いていたのに、現地に着いたら想定の倍の車が並んでいた。当然、1台あたりの売上は落ちます。

集客人数の水増し

これが一番よくあるパターンです。「3万人来ます」と言われて、高い出店料と歩合を払って出店したら、現地に人がいない。

こういうのは、詐欺とは言えません。言えないけれど、損害を受けているのはこちら側です。

そして最近増えているのが、最初から集客する気がなく、キッチンカーの出店料を集めることが目的になっているイベントです。

特に、実績のない第1回目のイベントには注意が必要です。


5. 危険なサイン7つ

ここからは、怪しい案件を見分けるためのサインです。

01. 電話での問い合わせができない

問い合わせ窓口がメールやDMだけ、というパターン。

補足しておくと、今回の件では「電話番号の記載自体はあった」という指摘もいただきました。重要なのは番号があるかどうかではなく、実際に電話で人と話せるかです。番号が書いてあっても繋がらない、あるいは「電話での問い合わせは受け付けていません」と書かれているなら、同じことです。

02. 申し込みがSNSのDM

今回、5万円を支払った飲食店の方も、インスタグラムで募集を見つけてDMで申し込んでいます。

03. 先に払わないと出店が決まらない

「支払いをもって出店確定」という順序。被害に遭った方本人が「最初から怪しいと思っていた」と話しています。

04. 説明会が異常に遅い

大きなイベントなら、遅くとも1ヶ月前には出店者説明会があります。今回は開催20日前でした。

05. 搬入経路やメニューの細かい連絡が来ない

搬入時間、動線、販売メニュー、想定数量。本来は主催者側から細かく指示が来ます。それがないのは、運営の実態がない可能性があります。

06. 質問に具体的に答えない

聞いても「調整中です」で返ってくる。何度聞いても同じなら、それが答えです。

07. 自治体名を使っているのに、自治体が関与していない

今回、3市が公式サイトで注意喚起を出す事態になりました。市名や地域名を冠したイベントなら、その自治体に確認できます。


ひとつ当てはまったから即アウト、という話ではありません。

ただ、2つ3つ重なったら、立ち止まってください。


6. 出店料を払う前に確認すべき8つのこと

ここが、この記事の本題です。

どれもお金はかかりません。時間も、大してかかりません。

01. 保健所に聞く【最優先・追加コストゼロ】

これが一番大事で、一番簡単です。

理由は単純で、キッチンカーはどのみち保健所に手続きに行くからです。わざわざ確認するのではなく、いつもの手続きのついでに一言聞くだけで済みます。

「◯月◯日に、この場所でこういうイベントがあるようなのですが、ご存知ですか」

これだけです。

今回の件でも、5万円を支払った出店者が保健所の手続きを進める中で、保健所から「そのイベントは知らない」と言われています。

その時点で、赤信号は点いていたわけです。

大きなイベントなら、保健所は必ず把握しています。臨時営業の届出が集中しますから。「知らない」と言われたら、それはかなり異常なことです。

02. 自治体・消防に確認する

イベントに市や町の名前が入っているなら、その自治体の観光課や商工課に電話して聞けば済みます。

「こういうイベントがあるようですが、市は関わっていますか」

花火が上がるイベントなら、消防に「火薬類の申請は出ていますか」と聞けます。今回のように湖上や河川敷で行うイベントなら、河川法にもとづく許可が必要になります。

遠慮する必要はまったくありません。自治体としても、後から被害が出るほうが困るからです。

03. 関連業者が手配されているか聞く

これは今回、コメント欄でいただいた指摘から加えた項目です。

「一番簡単なのは、受注した花火製造業者がいるかどうかを確認することでは」という声がありました。まさにその通りで、大規模なイベントほど、関連業者が必ず入ります。

キッチンカー側から聞けることに置き換えると、こうなります。

「警備会社はどちらが入られますか」

「電源の手配はどの業者さんですか」

「仮設トイレはどこに何基設置されますか」

まともに動いているイベントなら、普通に答えられます。答えられない、あるいは毎回「調整中」で返ってくるなら、実務が動いていない可能性があります。

04. 同業のキッチンカーに聞く

実は、これが一番早いことがあります。

「このイベント、出たことある人いますか」

去年出た人がいれば、実際に人が来たのか、売上はどうだったのか、主催者の対応はどうだったのか、全部わかります。

イベントで他のキッチンカーと仲良くなっておくことは、情報源を持つということです。

05. 過去の開催実績を調べる

「第1回」と書かれているなら、特に慎重に。

過去に開催されているイベントなら、去年の写真や来場者の投稿がネットに必ず残っています。

これだけ大きいイベントを謳っているのに、過去の痕跡が何もない。 それ自体が、ひとつの答えです。

06. 集客の広告が出ているか見る

これは個人的に、かなり重視しているポイントです。

数万人を集めるイベントなら、主催者は必ず告知にお金と手間をかけています。地元紙、フリーペーパー、駅のポスター、地元のテレビやラジオ。

ところが、出店者募集の告知だけが熱心で、お客さんを呼ぶ告知が見当たらない。

これは危ないです。集客する気がないか、集客より出店料集めが目的になっている可能性があります。

07. 地元の人が知っているか確かめる

06と重なりますが、もっと手軽な方法です。

その地域の知り合いに「このイベント知ってる?」と聞いてみる。数万人規模を謳うイベントなら、地元では話題になっているはずです。

誰も知らないなら、その規模の集客は起きません。

08. こちらから定期的に連絡を入れる

待つのではなく、こちらから聞きます。

「搬入時間はいつ頃になりそうですか」

「出店台数は何台になりましたか」

「電気は何ワットまで使えますか」

まともな主催者なら、普通に答えます。

答えられない、返事が来ない、毎回「調整中です」で返ってくる。それが答えです。


7. なぜ、こういう案件が増えるのか

最後に、構造の話をします。

キッチンカー、増えすぎています。

イベントの主催者からすると、今はキッチンカーがすぐ集まる。募集をかければ、集まってしまう。

だから、イベントの規模以上に呼びすぎる。台数が多すぎて、出店料に対して売上が取れない。これは今、普通に起きていることです。

そして、そこからもう一段進むと、今回のような話になります。

キッチンカーが集まるということは、出店枠が「売れる」ということなんです。

今回の件で言えば、240店舗から5万円ずつで1,200万円。

イベントを実際にやるのは大変です。会場も、許認可も、警備も、本当にお金と手間がかかる。

でも、出店枠を売るだけなら、サイトとSNSがあればできてしまう。

そういう時代になった、ということです。

だから、こういう案件はこれからも増えると考えています。減ることはないでしょう。


まとめ:確認は、全部タダです

今回の花火大会が詐欺だったのかどうか、現時点で断定はできません。

返金がきちんと行われれば「杜撰な企画倒れ」で終わる話かもしれませんし、そうでなければ違う話になります。

でも、私たち出店する側にとって大事なのは、そこではありません。

外からは判断できない。だから、払う前に確かめる。

最後に、チェックリストをまとめておきます。保存するなり、印刷するなりして、出店を決める前に見返してください。

危険なサイン

  • 電話での問い合わせができない
  • 申し込みがSNSのDMのみ
  • 先に払わないと出店が決まらない
  • 説明会が異常に遅い
  • 搬入経路やメニューの細かい連絡が来ない
  • 質問に具体的に答えない
  • 自治体名を使っているのに、自治体が関与していない

払う前に確認すること

  1. 保健所に「このイベント知っていますか」と聞く(手続きのついで)
  2. 自治体・消防に確認する(許可申請が出ているか)
  3. 関連業者が手配されているか聞く(警備・電源・仮設)
  4. 同業のキッチンカーに聞く
  5. 過去の開催実績を調べる
  6. 集客の広告が出ているか見る
  7. 地元の人が知っているか確かめる
  8. こちらから定期的に連絡を入れる

どれも、お金はかかりません。

5万円と、仕入れた材料と、空けた一日を守るためなら、安いものだと思います。

今回、損害を受けられた方々には、返金が行われることを願っています。


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本記事は2026年8月23日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。返金対応の進捗など、状況に動きがあった場合は追記します。

なお本記事では、主催者・関係者の個人名は扱いません。また、現時点で詐欺と断定できる公的な判断は出ていないため、断定的な表現は避けています。

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滝澤 仁

この記事を書いた人

滝澤 仁
株式会社セレーノ代表取締役 / キッチンカーの縁の下 運営者・業界19年

長野県在住。2005年にキッチンカーで起業し、フランチャイズ本部・中古車両売買・業界メディアを手がける。出店する側・集める側・支える側、すべての立場を現場で経験してきた。

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