キッチンカーをやめる時の話:撤退・売却・引退、後悔しない引き際
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この記事は、キッチンカーの開業から運営までを体系的にまとめたキッチンカー開業の基礎知識の関連記事です。あわせてお読みください。
「やめる」という言葉に、後ろ向きな響きを感じる人は多いと思います。
でも、19年この業界を見てきて思うのは、引き際を間違える人のほうが、ずっと多くを失っているということです。やめること自体は、失敗ではありません。問題は、やめ方を間違えること、そして「やめる」という選択肢があることを忘れて、ずるずると消耗してしまうことです。
この記事では、キッチンカーをやめるときの3つの形——撤退・売却・引退——について、現実に起きていることをそのままお伝えします。これからやめようか迷っている人にも、いつか来るその日に備えておきたい人にも、読んでほしい内容です。
そして最後に、私自身が18年前、34歳のときに自分の飲食店を閉店した話もします。今こうしてキッチンカーの仕事を続けていられるのは、あの閉店があったからです。
やめ方には3つある:撤退・売却・引退
ひとくちに「やめる」と言っても、中身は大きく3つに分かれます。
- 撤退:うまくいかなくて、事業をたたむ。いちばん多いパターン。
- 売却:車両に資産価値があるうちに、次の人に引き継ぐ。
- 引退:生活の変化や年齢を理由に、納得して区切りをつける。
この3つは、心境も、お金の動きも、まったく違います。ところが多くの人が、この区別をしないまま「とにかくやめる」となだれ込んでしまう。だからこそ、損をするのです。
順番に見ていきましょう。
いちばん多いのは「稼げなくてやめる」パターン
まず現実を正直に言います。やめていく人のいちばん多い理由は、商売がうまくいかない、稼げないことです。
「飽きた」「体力が続かない」という理由は、実はあまり多くありません。圧倒的に多いのは、資金が尽きるパターンです。
そしてもうひとつ、見落とされがちなのが——稼げない状態に、車のトラブルが重なるケースです。ただでさえ売上が苦しいところに、車が故障する。あるいは事故に遭う。そうなると、稼ぐ手段そのものを失います。修理費用も出せない。ここで多くの人が、続けられなくなります。
キッチンカーは「車があれば稼げる」商売ですが、裏を返せば車が止まれば、すべてが止まるということでもあるのです。
モチベーションが切れたとき、戻すのは難しい
資金面とは別に、もうひとつのやめどきがあります。モチベーションが続かなくなったときです。
これは正直に言って、いったん切れてしまうと、そこからやる気を復活させるのはなかなか難しいものです。
ただ、現場のオーナーさんがよく口にするのは、「お客様の”おいしかったよ”の一言」なんですね。結局、モチベーションは現場でしか戻ってこないのかもしれません。机の上で考えていても、やる気は湧いてこない。お客様に直接商品を手渡して、その反応を受け取る——その繰り返しの中にしか、続ける理由は見つからないのだと思います。
「ずるずるやめる」のがいちばんもったいない
「この人、引き際を間違えたな」と感じる、わかりやすい瞬間というのは、実はあまりありません。
なぜなら、やめる人の多くは静かに消えていくからです。
車が少しずつ汚れていく。Instagramの投稿が徐々に減っていく。そして、いつのまにか活動しなくなっている。最後にちゃんと挨拶ができればまだいいほうで、誰にも告げずに、静かにやめていくパターンがとても多いのです。
これは、お客様にとっても、本人にとっても、もったいないことです。
後で詳しく触れますが、車が汚れていく前に、Instagramの投稿が止まる前に、動けることがあります。売れるうちに動く。挨拶ができるうちに挨拶する。 引き際の美しさは、そのまま次の人生のスタートの質につながります。
きれいにやめた人の共通点
逆に、「きれいにやめたな」と感じる人もいます。
多いのは、生活環境の変化を理由にする人です。特に「子供と一緒に過ごす時間を大切にしたい」という理由。あるいは、引っ越して生活そのものを変える人もいます。
キッチンカーをやりたくて始めて、でもやっぱり大変で、その生活を変える。そういう人は、お客様にも惜しまれながら、それでも「自分の新しい人生をまた探していく」というメッセージを残して去っていきます。
私は、これがいちばんきれいなやめ方だと思っています。やめることを後ろめたく思わず、前を向いて次へ進む。お客様もそれを応援してくれる。そういう区切りのつけ方が、理想です。
やめ方にも、その人の生き方が出る
少し大きな話をします。
私は常々、キッチンカーに限らず、商売を始めるとき(独立・起業)には、それまで自分がどんな人生を送ってきたかが、結果として現れると思っています。そして、実際にそうなのです。
サニーズのオーナーを見ていても、開業後すぐに事業が軌道に乗る人がいます。そういう人には共通点があります。誠実で、明るくて、友達が多い。「あなたがお店を始めたら、教えて。すぐ行くわ」と人に言われる人です。
なぜか。普段から人にやさしく、まわりを明るくし、人のことも応援できる——だから事業を始めても、人に応援されるのです。むしろ、応援せざるを得ないような人なんですね。
これは、やめるときにも同じことが言えます。
「やめどきだからやめる、それだけ。あとは関係ない」——そういう態度でやめると、その人の今後にも大きく響きます。どんなやめ方をするかを、人は見ているのです。 きれいに区切りをつけて去る人と、投げやりに消えていく人。その違いは、次に何かを始めるとき、まわりが応援してくれるかどうかに、はっきりと表れます。
やめ方は、終わりの作法であると同時に、次の始まりの準備でもあるのです。
売却:車両に値段がつくうちに動く
ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
撤退で「何も残らない」人と、売却で「次につなげる」人。その差は、ほんの少しの判断の違いです。
そして、もうひとつ大きいのが——ふだん車をどう扱ってきたかです。
何も残らない人は、車を丁寧に使わない人です。汚れたまま放置する。ぶつける。修理しない。メンテナンスをしない。そうやって使った車は、当然ながら価値が下がり、いざ売ろうとしても売れません。
逆に、日頃から車をきれいに保ち、ちゃんと手入れをしてきた人は、高めの価格でしっかり売却できます。やめるときになってあわてても遅い。売却額は、これまでの数年間の車の扱い方が、そのまま反映されるのです。
キッチンカーには、飲食店にはない大きな強みがあります。それは、移動販売車という”資産”が手元に残ることです。店舗の場合、閉店したら設備も内装もマイナスにしかなりません(これは私の実体験で、後で詳しく話します)。でもキッチンカーは違う。売却すれば、いくらかは戻ってくるのです。
中古キッチンカーは、いくらで売れるのか
正直に言えば、中古キッチンカーの価格はピンキリです。車両の程度によって本当にさまざまで、「相場はいくら」と一言で語れるものではありません。
縁結びでは、車両の情報と写真を送っていただいて、私のほうで「売れそうな金額」をお伝えすることがあります。あまりに高い金額では、絶対に売れません。かといって安すぎると、売り主が損をするだけです。
実際には、安すぎるパターンというのはほとんどありません。むしろ問題は逆で、希望売却価格が高すぎるケースです。その場合は率直に「この価格ではうちでは売れないので、掲載できません」とお伝えしています。これは売り主のためでもあります。売れない価格で長く掲載されても、時間を無駄にするだけだからです。
「売り時」は、実はない
「いつ売るのがいちばん高く売れますか?」とよく聞かれます。
正直なところ、売り時というものは特にありません。縁結びを始めてから6年ほど経ちますが、「この時期が高い」というタイミングは見つかっていません。
ただ、不思議なことに——売りたいという車が殺到する時期と、あまり来ない時期はあります。それがなぜなのかは、私にもわかりません。
ですから、「もっと高く売れる時期を待とう」と考える必要はありません。むしろ待っている間に車は古くなり、車検は切れ、状態は悪くなっていく。売ろうと決めたら、動く。 それが結局いちばん損をしない方法です。
架装(設備)は、つけたまま?外す?
シンク、冷蔵庫、発電機——こうした設備が売却額にどう影響するか、というご質問もよくいただきます。
完動品であれば、もちろん価値になります。発電機などを付けて売る方もいます。ただ、私が売れやすいと感じるのは、設備を盛りすぎないキッチンカーです。
最低限のシンク、換気扇、冷蔵庫など、付属・設置されているものだけにして、価格を抑えて販売する。これがいちばん売れやすい条件だと思います。あれもこれもと積み込んで価格が上がるより、シンプルで手頃なほうが、買い手はつきやすいのです。
写真の見栄えで、売れ行きが変わる
意外と差が出るのが、写真です。
営業中の写真をそのまま送ってくる方がいますが、中がぐちゃぐちゃだったりします。これはもったいない。きれいに掃除して、見栄えのいい写真を撮る。これだけで、買い手の印象はまったく変わります。
買う側の気持ちになればわかります。汚れた厨房の写真と、ピカピカに磨かれた厨房の写真、どちらの車を買いたいか。答えは明らかですよね。
売却に必要な情報
縁結びで売却の相談をする際は、おおむね次のような情報を送っていただいています。
- お名前・ご連絡先
- ベース車両の車種・年式・走行距離
- 車検期限
- 燃料(ガソリン/ディーゼル/LPGなど)・ミッション(AT/MT)
- 取得方法・製作会社
- 扱っていた商材
- 移動販売車として使用した年数
- 売却希望価格(税込)
- 売却希望時期(1か月以内/3か月以内/半年以内/未定)
- 保管場所・引き渡し場所
- 売却理由(任意)・注意事項(不具合等)・PRポイント(任意)
- 車両写真・車検証
写真は、必ず最低10枚程度は添えていただいています。枚数があるほど、相場の判断がしやすくなりますし、買い手も安心して検討できます。
なぜ縁結びは成約率が高いのか
手前味噌になりますが、キッチンカー縁結びは成約率が非常に高いマーケットプレイスです。
理由は2つあります。
ひとつは、キッチンカー専門であること。中古車サイト全般ではなく、キッチンカーを探している人だけが集まっているので、ミスマッチが起きにくい。
もうひとつは、価格です。
製作会社も中古車を扱っているケースがありますが、そうした中古車は高くなりがちです。製作会社の販売手数料が上乗せされているからです。しかも、製作会社が買い取る際の価格は、縁結びで売れる価格よりも安く買い叩かれていることが多い。つまり売り手は安く手放し、買い手は高く買わされる——その差が、まるごと手数料になっているわけです。
縁結びは、ここが違います。余計な手数料がかからない直接取引だからこそ、製作会社の中古価格のおよそ6〜7割の金額で売買が成立しています。売り手はより高く売れ、買い手はより安く買える。中間マージンがない分、その差が両者に還元されるのです。
実際の数字でお話しすると、これまで約250台を掲載し、そのおよそ半数が成約しています。現在、LINE登録者は3,400人を超えました。「売りたい」という車と、「買いたい」という人が、ここで出会っています。
売却を考えているなら、まずは縁結びのホームページを見てみてください。
引退:車を譲って、商売を引き継ぐ
3つめの形が、引退です。
これは「うまくいかなくてやめる」のとは違い、役割を次の人に引き継ぐかたちのやめ方です。
サニーズクレープでは、2台目・3台目として使っていた車両を、新しい加盟店オーナーが引き継ぐパターンが、過去に何台もありました。中には、1台30万円ほどでスタートした方もいます。新車で揃えれば数百万円かかるところを、引き継ぎなら大幅に抑えられる。これは引退する側にとっても、始める側にとっても、いい形です。
譲るかたちでの引退というのは、撤退とはまったく意味が違います。やり方も、車も、お客様とのつながりも、そのまま次の人へ渡す。 商売そのものが続いていくわけです。自分が育てた場所を、誰かが引き継いでくれる。これほど納得のいくやめ方はないと思います。
やめる前に、これだけはやっておく
やめると決めたら、最後にやっておくべきことがあります。難しいことではありません。人として当たり前のことです。
- 関係各所への連絡:出店先、イベント主催者、取引先。お世話になった場所には、きちんと連絡を入れる。
- 同業者への挨拶:狭い業界です。仲間への一言を忘れない。
- お世話になった方への挨拶:支えてくれた人に、感謝を伝える。
これを省いて静かに消えてしまうと、もし「またやりたい」と思ったとき、戻る場所がなくなってしまいます。逆に、きちんと挨拶をして去った人は、いつでも温かく迎えられます。
営業許可と廃業の手続き
手続き面では、よく「営業許可はどうなるの?」と聞かれます。
営業許可そのものは、そのままで構いません。一般的な流れとしては、営業停止の届出を出して、税務署へ廃業届を出す——これが基本です。難しく考える必要はありませんが、忘れずに行いましょう。
私が18年前、34歳で自分の店を閉めたときの話
最後に、私自身の話をさせてください。
実は18年前、34歳のとき、私は自分が経営していた飲食店を閉店しています。
私は東京で飲食店に勤務したあと、2003年、生まれ育った長野県諏訪市に「ブックカフェ セレーノ」をオープンしました。パスタなどのイタリアンを中心にした多国籍料理の店で、店内には本がずらりと並び、夜はゆっくりお酒が楽しめ、イベントも定期的にやる——なんだかごちゃまぜの、よくわからない店でした。
閉店した理由は、一言で言えば「経営がうまくいかなかった」。それに尽きます。理由はいくつもありましたが、当時の自分には、はっきりとはわかっていませんでした。
お店は、自分だけのものじゃない
自分の店をやりたい、と誰もが思います。そして始めます。でも、お客様が来店された瞬間から、その店は単なる自分の店ではなくなります。お客様にとっても、思いの入った場所になるんです。
何年も通っているあの店の、あの一品が食べたい。誕生日には必ず行きつけの店で祝う。仕事で失敗したとき、スタッフがかけてくれた一言。そういう、かけがえのないものになっていく。
だから、店を始めるのは簡単だけど、閉店してはいけない。とても悲しいことだから。
もちろん、閉店に追い込まれるということは、お客様に求められていないということでもあります。ダメな店は淘汰されるべき、という考え方もあるでしょう。でも一方で、経営者は「お客様のために店を続ける努力と気持ち」を忘れていないか——そこが問われるのだと思います。当たり前のことなのに、当時の自分には、その気持ちが足りなかった。知識も、経験も、ものの考え方も、すべてが足りませんでした。
閉店して、何も残らなかった
閉店の日から2週間、ずっと片付けをしました。テーブルや椅子は常連さんに買ってもらい、お皿はあげて使ってもらい、冷蔵庫や厨房機器は中古買取に出しました。でも、原状回復や撤去費用を考えたら、むしろマイナスでした。
オープン時に500万円ほど融資を受け、設計工事費用なども含めると、開業資金は1,000万円ほど。それなのに、終わってみたら何も残りませんでした。
だからこそ思うのです。キッチンカーは、ある程度「移動販売車」という資産が残る。売却すれば、多少はいい。店舗とは、ここが決定的に違うのだと。
閉店が、今につながっている
ここからが大事な話です。
私はこの閉店した店「セレーノ」の名を、閉店の半年後に法人化した会社の名前にしました。
なぜか。この閉店を通じて、経営がうまくいかなかったことで、本当に多くの学びと気づきを得たからです。本気で考えました。どうしたらお客さんが来てくれるのか。なぜお客さんが来ないのか。どうして利益が出ないのか。24時間、ずっと考えていました。
人は、困ったときに能力を発揮するんですね。成長するんです。
あの閉店の教訓があったから、私は今もキッチンカーの仕事を続けていられます。閉店は、終わりではありませんでした。始まりだったのです。
やめることは、失敗じゃない
やめること自体は、失敗でもなんでもありません。仕方のないことです。
うまくいかなくて、その過程でいろんな修正や改善をしてきたと思います。それは決して無駄ではありません。 今後いろんな場面で生きてくる経験になります。
いつか、「あの時は大変だったな、苦しかったな」と思い出すでしょう。でも、それを生かすも殺すも、楽しくするのも、これからのあなた自身です。
考えてみてください。宣伝も、事務作業も、商品開発も、接客も——これだけ幅広い業務を一人で経験できるのは、まさにキッチンカーならではです。そして、自分の作った商品を、これだけ近い距離でお客様に提供できるのも、キッチンカーならではの喜びです。
またいつか、「キッチンカーをやってみたい」と思うことがあるかもしれません。そのときは、また始めればいい。
みんな、待っていると思いますよ。
車両の売却を考えている方へ
キッチンカー縁結びでは、キッチンカー専門のマーケットプレイスとして、これまで約250台を掲載し、その半数が成約しています。余計な手数料のかからない直接取引で、適正な価格で次のオーナーへ引き継ぐお手伝いをしています。まずはホームページをご覧ください。
キッチンカーの開業から運営まで全体像を知りたい方は、キッチンカー開業の基礎知識もあわせてどうぞ。
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